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北の心の開拓記  [小松正明ブログ]

 日々の暮らしの中には、きらりと輝く希望の物語があるはず。生涯学習的生き方の実践のつもりです。

「フォッサマグナ」(ブルーバックス) ~ 日本列島の成り立ちを推理小説のように

2019-01-10 23:14:46 | Weblog

 

 最近はNHKの番組「ブラタモリ」で、タモリさんが地質や地形への該博な知識を披露しているので、隠れ「地学マニア」は陽の目を見て喜んでいるのではないでしょうか。

 さて、地学では天文だけが好きだった私ですが、基本的には理科好きなので地形や地質にも少しは興味があります。

 そんな私が最近ずっと気になっていたのが、ブルーバックスの「フォッサマグナ」(藤岡換太郎著)という本です。

 フォッサマグナというのは、明治時代のお雇い外国人だった日本の「地質学の父」と言われ、ナウマン象の発見でも知られるナウマン博士が発見した大地溝帯(大きな地質の溝)でした。

 ナウマンは、日本で初めて北海道を除く全国の地質図を完成させましたが、その調査の現地調査の一環で、八ヶ岳近くに宿泊した翌朝に、晴れ上がった南アルプスの風景に感動し、(どうしてあんなに急に屏風のような地形になるのだろう?)と考えたようです。

 その後長野県内を調査して、新潟県の糸魚川から静岡県の旧清水市に続く本州を縦に貫く地帯が、西南地域から来る地質とここで全く分断されていることから、大きな溝があるという意味でフォッサマグナと名付けて、ドイツで論文を発表しました。

 私の知識は、中学生か高校生の時の教科書に確かあったはず、という程度の記憶でしたが、その後に長野県の松本市で二年半を過ごし、北アルプスの麓に公園を作る仕事をしたり、静岡県の掛川市に勤務したことで、まさにこのフォッサマグナを挟んで仕事をしたこともあり、少しは興味がわいていました。

 しかし実は、学術的にこのフォッサマグナがどのようにできているかや、どうやってできたのかについては、学問的な定説がまだ確立していません。

 それは探るべき地質が数千メートルも地下にあって、まだ調査の手が及んでいないことが理由なのですが、この本で著者の藤岡さんは、蛮勇を奮って自説を展開し、その謎に迫っています。

 実は地質学者が、どうやってこの地形や地質に至ったか、ということを調べるその手法は推理小説に似ています。

 科学的な事実を一つ一つあてはめながら、また仮説を展開しながら、犯人の正体に迫っていくのですが、この本はまさにそんなテンポの良い展開で、ぐいぐいと著者自身の仮設を説明していってくれます。

 
 そして、どうやらこんな感じ、というのは、

①太平洋プレートがアジアプレートの下に潜り込んで、地下深くで温度の高いコアに触れて巨大なマントルの上昇流が発生した

②それが古アジア大陸の東端の陸地に湧き上がってきて、それで今の日本列島に相当する陸地が大陸からはがれて東へ移動して、日本海が誕生した。

③その際に今の東日本部分と西日本部分は別なところからはがされたもので、それが東日本は反時計回りに、西日本は時計回りに回転しながら、いまの日本列島付近で合体した。

④そのときの合体の割れ目がフォッサマグナに相当


⑤その後に、今の伊豆半島に相当する島が南方から北上してきて丁度フォッサマグナの南端部に衝突し、上部の陸地がはがれてフォッサマグナ状に乗り上げて、丹沢などの産地を形成した

 というのが、この2千万年ほどの日本列島周辺の大まかな動きではないか、というのが著者の説になっています。

 歴史も、歴史書をたどる文系の歴史もありますが、科学的なアプローチで日本列島の歴史をたどるとこんなことなのではないか、という展開にワクワクしながら読み進むことができました。

 本の中では、日本各地のジオパークが紹介されています。

 ジオパークとは、地形や地質に特徴のあるところが博物館や公園として整備されているところで、地学的な興味を掻き立てる場所です。

 ちょうど明日から週末は、箱根にいくことになっているのですが、箱根にもジオパークがあると知って、俄然行ってみたくなりました。

 ブラタモリでもフォッサマグナについて特集をしてくれないものかなあ。

 小さな地形が歴史に絡んだという話も良いけれど、日本列島がどうして今の形になったのかとか、スケールの大きな話も放送してほしいものです。

 科学の本でもそれほど難しくなく読めますし、そうそう、静岡県民なら県土の成り立ちを理解するうえで必読じゃないかな。

 お勧めです。

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