goo blog サービス終了のお知らせ 

北の心の開拓記  [小松正明ブログ]

 日々の暮らしの中には、きらりと輝く希望の物語があるはず。生涯学習的生き方の実践のつもりです。

人口減少でも幸せな町にするために

2014-05-20 22:13:04 | Weblog

 昨日、京都大学経営管理大学院小林潔司教授による「人口減少下の地域政策」というタイトルの講演会に参加しました。人口減少に悩む北海道に住む者として興味があった点をお伝えしようと思います。


【以下小林先生の講演要旨】 
 スイスやスウェーデンなどに行ってみると分かるのですが、(よくこんなところに住んでいられるな)と思うようなところに住み続けるスピリッツが彼等にはあります。

 欧州とわが国が違うのは、欧州は極めて流動性が低いことで、ほとんどの子供たちは親の仕事を継ぐということをあたりまえに使命のように思っています。

 ところが日本では親の職業と子供の職業の相関が極めて低いのが特徴です。今日も「人口減少」というタイトルを使っていますが、人口の流動性を横に置いた言い方だというイメージがあります。ただやはり人口が減ることは問題なので、この問題とどう付き合うかということは重要なことでしょう。


     ◆     

 私もかつて鳥取市という地方都市に住んでいましたが、人口は減っても世帯数は減っていません。つまり家族として一緒に住んでいた余剰の人口が東京など大都市へ出て行ったということで、大阪などでは人口は減っても世帯数は増えています。

 これは結婚しない人が単身生活をしていることが大きな理由ですが、新しい世帯を作れば一通りの電化製品や車などが売れるというので、世帯数の増加とともに経済規模が膨らんだというのが日本の高度成長時代の姿だったと言えるでしょう。しかし子供が減ってきて、そういう力もいよいよ減りつつあります。 

 「限界集落」という言い方があって、ある高校入試で「何が限界なのか?」という設問に対して正答は「住むことが限界」とされたそうです。しかしこれは誤り。

 限界集落は英語では"marginal village"と言いますが、これは「役割を見いだせていない集落」という意味。将来はまた見いだすかも知れません。

 
     ◆    


 さて、地域の経済が成立して持続可能にするためには次の6つの視点を避けては通れません。それは

視点1 住民生活を直接支えている産業とは何か
視点2 域外市場産業として域外マネーを獲得している産業は何か

視点3 各産業で生み出された付加価値は域内に落ちているか
視点4 域外市場産業は持続的・安定的か → 不安定なら地域は暗い

視点5 消費は域内で行われているか
視点6 再投資は域内で行われているか

 という六つの視点です。総務省では自治体の健全度を公債比率や財政力指数などの指数で図っていますが、これでは将来的な持続力を表すものとは言えず、上記のような考え方の方が良いでしょう。

 
 私は鳥取県日南町というところとずっとお付き合いがあって、そこで「30年後のために今何をすべきか」というテーマでワークショップを開催しました。

 そこで『か・き・く・け・こ』ビジネスというところにまとめられました。

 か=かんこう
 き=きょういく
 く=くらし
 け=けんこう
 こ=こうつう

 まあ語呂合わせみたいなものですが、しかしビジネスとコミュニティにはお互いに依存するところがあって、健全なビジネスは健全なコミュニティがなくてはやれないし、健全なコミュニティは仕事を与え地元の剤を購入し税を支払う健全なビジネスに依存するんです。

 これらは、コミュニティに社会的便益を提供し、地域住民が自分たちや他の人々の手助けをするための機会を提供してくれるはずですが、そのためにはビジネスとして健全な収益性をあげることがなんとしても必要です。


 <阻害要因>

 ところがこれらを阻害する要因があって、社会的無理解、社会的貢献の姿が見えない、支援体制が一体化されない、金銭調達が難しい、ものが出来ても販路が確保できない、話が複雑になると調和がとれなくなる…などなど、出来ない理由も多々あります。これらもなんとかしなくてはいけません。

 高村義晴さんという方は、コミュニティ起業を類型化して、

①地域の人材発掘型
②二地域居住者・移転者活用型
③起業の人材・資源活用型
④地域と企業の共同・連携プロジェクト型

 という四つに分類しました。現実には地域にはなかなか人はいないし、二地域居住者ということもマッチングが難しい。

 ③と④がうまく行えれば現実的で、起業に対して二地域就労のようなことでメリットを与えられるような提案を行ってマッチングできると良いし、企業であれば販路を使わせてもらうということもでき、いくつかの成功事例も見受けられます。

 
     ◆     


 さて、人々が過疎中山間地域に住み続け、幸せに生きる行動原理とは何でしょうか。

 社会を支える三つのことは「仕事」→「くらし」→「楽しみ」ということです。

 まず安定的で収入の見込める仕事が地域にあること。次に健康や福祉や教育、買い物などの暮らしを豊かにする社会装置が備わっていること。

 そしてそれらが揃ったとして、日常を幸せにするものは「楽しみ」で、それはつまり「遊ぶ」「遊べ」ということなのですが、現代日本人は実にこの遊ぶと言うことが下手くそな民族です。

 国土計画で「遊び」なんて単語が出てきたことはまずないでしょう(笑)地域でどれだけ遊べるかを考えてみてはどうでしょう。

 
 -----------【講演ここまで】------------------
 

 講演はここまでとして、ここで質疑応答の時間になったので私から「先生は『地産地消』ということをどうお考えですか」と質問をしてみました。

 すると先生からは、「最初は地域のものをよく知ろう、ということから始める手段としてはあるだろうが、そこから先は物以上のものを売ることが必要になってくるでしょう」とのこと。

 その心は、「ある人が世界の国々の国民性を調べたところ、日本人は最もコンテキスト(文脈・雰囲気)で生きる国民だ、と言う結果になったそうです。逆にコンテンツ(事実)で生きる国民の代表はドイツ人とのこと。ドイツ人は面と向かって『愛してる』と言わないと心は通じないけれど、日本人ならばそんなのは態度やあうんの呼吸で分からなくてはならない。
 でも日本人にはそういう国民性があって、それは実は東南アジアの人たちもコンテキスト重視の国民性を持ったところが多いのです。だから、日本人同士ならば物以上にその背景の物語を語ったり売るということがコツですし、アジアへの協力も、現地で共に苦労しながら創って行くということに対するニーズは高いと思います」

 私としては良い答えが引き出せる良い質問だったと思いました(笑)


    ◆     ◆     ◆


 さて、講演を聴いての感想ですが、地域の現状を冷静に分析するとしたらここで出された「六つの視点」のような視点は調べてみると良いでしょう。

 しかし調べたところでうまく行っていないことがわかるだけ、というところも多いことでしょう。

 そういうときは地域をよく知り、地域の産物をよく知り、それらを大手や都会の企業と連携をするようなビジネスに結びつけるということが活性化の道筋ではないか、というヒントが得られました。

 仲間同士で議論し合っているだけでは外に出て行かないし、かといって戦略も無しに外に出ていっても大海に飲み込まれるだけ。まずは地元の特徴や優位性を確認した上で、企業との連携を試みてみる、というアプローチが現実的なように思われます。

 そして産物というモノも、品質だけではなく背景の物語や人同士の貸し借りや恩返しのような心理もコンテキストとして生きることでしょう。

 経営コンサルタントの藤村正宏さんは「エクスマ(=エクスペリエンス・マーケット)」ということを提唱して、「モノを売るな、体験を売れ」と言っているのもこのあたりのことの表現だと思います。

 地域活性化に正解はありませんが、やはり知識と知恵を人材である人が活かすことしか王道はありませんね。

 小林先生、ありがとうございました。
 
 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする