日本経済新聞の一番後ろのページは文化面。
ここに『私の履歴書』という、各界の有名人がその振り返って語るコーナーがあります。
五月に入って今はプロゴルファーのトム・ワトソン選手が思い出を語っています。
一人は30話で完結しますが、トム・ワトソン選手は今日現在でまだ四話目。これからが楽しみです。
さて、昨日の第三話と今日の第四話に印象的なシーンがありました。
一つは昨日の第三話で、15歳の時に憧れだったアーノルド・パーマーとエキシビジョンマッチを行った時の話。
最終スコアはパーマーが68でワトソンが74。プレー後に、ロッカールームでシャワーを浴びていたパーマーに、ワトソンの父レイが声をかけました。
『アーニー(アーノルド・パーマーのこと)、息子のトミーがもっと良い選手になるために、一つだけやることがあるとしたら、それは何だろうか』
パーマーは即座に『できる限り、彼を競わせることだ』と答えました。
彼が言いたかったのは、より競争の激しいところでプレーを重ねれば、それだけプレッシャーに打ち勝つ方法を身につけられるということで、ワトソン自身、その言葉を『パーマーの言葉は今振り返ってみても、とても価値ある金言だったと思う』と回想しています。
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そして、もう一つ印象的だったのは今日の第四話目のエピソード。
スタンフォード大学に進学し、ゴルフ部に入った彼は四年生になって一人で真っ暗になるまで練習していた時にふと、『自分の職業はゴルフ場の中にある』という思いに強くかられます。
そして11月末に自宅のカンザスに戻った時、彼は父に『父さん僕は決めたよ』と切り出しました。
『何を』
『プロになるよ』
すると彼の父はこう言いました。
『それはいい決断だ。なぜなら、今、それを決断しなければ、この先ずっとお前は自分がそれ(ゴルフ)をできたかどうかを悔やむことになるだろうからな』
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この両方のエピソードに共通しているのは、訊かれたことにすぐに答えが用意できているという心構えです。
多少の脚色はあるかもしれませんが、訊かれる前からそのことを考えている心の準備があるからこそすぐに答えが出てきている。
人にアドバイスをするためには、それだけ深く相手のことを考えていることが必要なのだなと感心したのです。
"普段から深く物事を考えている"
そういう生き方をしたいなあと思います。