釧路公立大学地域経済セミナーに出席しました。
今日のテーマは、「地域のブランディングに求められること」と題して、株式会社コボ代表取締役社長の山村真一さんの公演です。
山村さんは、かつて三菱自動車のデザイナーとして働いていた時期があり、その頃にランサー電灯器のテストのために道東を走り回った記憶があるとのことでした。
さて、今日、地域そのものをブランド化するという動きが盛んになってきました。特に低成長期になってからその動きが加速していますが、それはモノづくりが中心だった社会が、文化を背景にしたブランド化を進めている減少としてとらえられると言います。
山村さんご自身が関わっている対象は幅が広く、企画、サービス、野菜、電気製品など多様で、モノだけでなく、サービス、コンテンツ、文化へとどんどんその幅が広がっています。
ブランディングとは、価値を再認識してさらに価値を付加して行くことなのです。
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いくつかの地域ブランディングの成功例も紹介されました。
九谷焼は床の間の置物が中心でしたが、日本の家屋から床の間、飾り棚、畳の部屋が少なくなっています。
そのため、そうしたスペースに飾るのにちょうどよかった置物類が売れなくなり、九谷焼もかつては200億円産業だったのが、あっという間に100億円を下るようになりました。
そこで焼き物でワイングラスを作ってみましたが、単なる焼き物では細い足が難しく、そこで新潟県が洋食器の産地であることに気付きます。
新潟の金属加工やメッキなどで接着剤のメーカーも(東亞合成アロンアルファ)金属とセラミックが見事に融合しました。
ワインをペアで本のような綺麗なパッケージに入れて売り出したのは、本棚に収容することも可能かな、という思惑。ネーミングも九谷物語として本棚にぴったりです。
この延長で、いろいろな絵付けも出てくるし、値段は1万円程度としましたが、モノによっては金製の足をつけて、ペアで60万円という高額なものもあり、60億円ほどは売れているといいます。
モノ自体は簡単なモノですが、流通、価格、思惑などがあって、産地同士が力を合わせるというのは案外難しいものです。こうしたことを乗り越えられれば、面白いことができあがるかもしれません。
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さて、地域ブランドの考察です。
「地域をブランディングする」ということは、地域の価値を幅広く知ってもらって利用してもらうと言うこと。
ブランドクラスターという考え方がありますが、一般の人に買ってもらえる商品イメージは、パブリックブランドのところ。
そのうえのプロダクトブランドは、手に入る最高級品、ハイエンド商品のイメージ。「ここまでできるのですよ」という理想の最上級です。
しかしさらにその上にあるのがイメージブランド。これは、その会社がこれからどこに向かって行くだろう、と、未来に向かって発信するイメージをブランド化したものです。
およそこれによって会社に対する憧れや共感が増すことでしょう。
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さて、これから注目されるブランドファクターは、「自然、歴史・未来、環境、文化、食」といったものだろう、と山村先生は言います。
企業もモノづくりから、企業の持つ文化的背景をきっちりと発信して行くパワーが必要になるでしょう。
日本の企業が上位から消えたのはなぜか。モノづくりの時代が終わって、企業文化のステージに入った時に、小さくてもしっかりした文化的背景を持ちきれていなかったのではないか。
商品としては、軽薄短小の機能中心主義的なところから、知的で創造的、美しい、優しいというような感性・ライフスタイルが中心になってくるのではないか。
価値観の軸を変えて行かなくてはならない時代が近づいている。
…とまあ、大体このようなお話でした。
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質問の時間があったので、私から、「地元にいるといくら良いものでも、どうしても馴れてしまって刺激にならず、価値を再認識しにくい。外への売り物だけでよいのか、地元が楽しむための工夫は何かあるでしょうか」と尋ねてみました。
その答えは、「渦中にはいると見にくいですが、歴史に遡るとか、いろいろな方法があると思う。『温故知新】と言いますが、古いモノをもう一度引っ張り出してみるとか、近世だけではなく、ルーツやライフスタイルを振り返って研究、勉強してみてはどうでしょうか」
「そして、あたらしいそのものずばりではなく、何かの新しさを付け加えるようにして発信できるモノがないか。今は皆が振り返り始めているので、そのときに置いて行かれないようにした方がよいでしょう」とのこと。
また、「一度出た人を出戻りは歓迎しない風もあるが、まちづくりのパワーになっている例も増えている。自分たちが幸せにならないと人が幸せにもならないでしょう。自分たちも楽しんで、時に離れて、遠くの人と話をするのも良いのではないでしょうか」
さて、釧路も阿寒ももっと地域をブランディングしたいものです。
地域の価値を再発見です。