駒子の備忘録

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『歌舞伎町大歌舞伎』

2024年06月01日 | 観劇記/タイトルか行
 THEATER MILANO-Za、2024年5月26日12時(前楽)。

 一幕は舞踊『正札附根元草摺』と『流星』。『正札~』は1814年初演の長唄舞踊で、幸若舞「和田酒盛」での曽我五郎と小林朝比奈の力競べを題材にしたもの。曽我五郎時致/中村虎之介、小林妹舞鶴/中村鶴松。『流星』は1859年初演、本名題は『日月星昼夜織分』。流星/中村勘九郎、牽牛/中村勘太郎、織女/中村長三郎。
 二幕は上方落語『貧乏神』を原作とした新作歌舞伎『福叶神恋噺』で、脚本/小佐田定雄、演出/今井豊茂。男神「びんちゃん」が女神「おびんちゃん」になって、晴れての主役。貧乏神おびん/中村七之助、大工辰五郎/中村虎之介、辰五郎妹おみつ/中村鶴丸、貧乏神すかんぴん/中村勘九郎。
 戦後復興事業の一環として、歌舞伎を上演できる劇場の誘致に先だって命名されたという「歌舞伎町」で上演される「大歌舞伎」。

 歌舞伎町で歌舞伎、というのがいいよねというのと、素人にもわかりやすそうな演目かな?と思えたので、ちょいとお安いチケットも出ていたので出かけてみました。
 でも、私には舞踊はやっぱりわからなかった…幕開き、歌舞伎座とは違う色の定式幕が引かれて、でもくらいままで、「あっ、もしやチョンパ!」とワクテカしたらそのとおりで、それはテンション上がりました。あとは、ネタバレにならないようプログラムの触りだけ読んでいたので、鎧を引っ張り合いっこする話(?)だとはわかって観ましたしそれはわかりましたが、結局長唄の歌詞が聞き取れないので、何を踊っているのかがよくわからなかったんですね。あとでプログラムを読んで、中盤以降の舞鶴は色仕掛けをしていたんだったのか…とやっと気づく体たらく。そういえば片肌脱いでいましたね…イヤなんていうの?上の着物の袖引き脱いで下の着物を見せるヤツ、あれです。着物の柄が変わって見えていいよねー、としか思わなかった…歓声鈍くてすみません。しかもキマって終わるのがいかにもで、つまり話はオチていないんですよね。私向きではないのであった…(^^;)
『流星』も、雷が端唄の師匠の家に落ちて云々というのは全然聞き取れませんでした。ただ夫婦喧嘩の再現と、それに止めに入る子供や老人の再現をやっているのはわかったし、その上手さとおもしろさはわかりました。あとは実の兄弟が夫婦役をやっているむず痒くも微笑ましいおもしろさとかね…織り姫さまがはにかむのに客席がほのぼのした笑いにさざめいちゃうのは、やはりちょっと子供がそんな仕草をするのがおもしろいからで、いじらしいな可愛らしいなというのもあるのだけれど、踊りの芸に対する賞賛のどよめきみたいなものではないので失礼は失礼なんだと思います。でも女性からしたら嘘、演技のはにかみなんてケッてなものでもあるので、私もやっぱちょっとおもしろくなっちゃいましたよね…すまん、歌舞伎の子役はこうした経験も積んで成長していくものなのでしょう。
 二幕の芝居も話は単純で、吉本新喜劇みたいでしたが、でも楽しく観ました。てか『ヤマトタケル』で「ドリフみたい」と思ったり、今回の「吉本新喜劇みたい」とかも、本当は逆なんですよね。近年の日本の娯楽演芸というか舞台芸術のすべての大元には歌舞伎があって、ドリフターズのコントも吉本新喜劇もそのバリエーションをやっていたのです。歌舞伎なんて観たこともなかった子供の私は、テレビ番組のドリフを通してそれを観ていたのです。そのことを大人になってやっと歌舞伎を観て理解した、となったのでした。
 もともとの落語から少し改変されて、歌舞伎町仕様というか、ちょいダメな男にほだされて貢いじゃう女みたいになっているおびんちゃんは、七之助さんの好演もあっていじらしくてラブリーです。でも、マジで売春してホストに貢ぐ若い女であふれているような歌舞伎町で観るには、むしろふさわしくないというか、うそ寒くて笑えないところもあると思うのですが、それは女性の視点なんだろうなあ…むしろ辰五郎を女性の役にしたら、現代的な何か新しい視点の物語になったのかもしれない、とも思います。
 ま、富籤の話が出てきた瞬間にオチがわかるような世界観のお話ですし、辰五郎に入れ揚げている近所のお嬢(というほどのものでもないのかな?)おきゃぴ(中村かなめ)のシャンパンタワーならぬ味噌汁タワーなんかの見せ場(?)もあって、楽しかったので、いいです。イヤこうして流すのが良くないのかもしれないけれど…
 ところでホストクラブふうアドトラックは実によかったと思います。これも結局は売買春をエンタメ化し問題を矮小化しているのだ、と言われればそのとおりなのですが…うぅーむ難しいなあぁ。このあとそっくり「信州松本大歌舞伎」として松本公演があるようですが、空気の綺麗なところで観たらまた感想も違うのでしょうか…昔大空さんを観に行ったけど、いい街いいハコでした。どうぞ大楽までご安全に…








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