日本青年館、2012年1月17日マチネ。
武士の世が終焉を迎えようとしていた頃、薩摩藩出身の武士・前田正名(音月桂)は討幕運動に奔走する坂本龍馬(緒月遠麻)と親交を深めていた。龍馬は近年著しく発展を遂げているフランスへの洋行の夢を正名に語り、愛刀を預ける。やがて非業の死を遂げた龍馬の遺志を受け継ぐべく、正名はフランスに留学するが…
原作/月島総記、脚本・演出/谷正純、作曲・編曲/吉崎憲治。
手堅い、過不足なくできていた舞台だったのではないでしょうか。
ラブがもう少し欲しかったけれどねー。でもマリー(舞羽美海)とは結局は結ばれなかったんだろうから(原作を未読なのですが、彼女は架空のキャラクターなのかな? なんにせよ正名は帰国して日本人と結婚したんですよね…?)、あまりやりすぎると薮蛇感があるのかな。
あとは、どうしてもストーリーありきの物語になってしまっていて、キャラクター造形がわりに単純に見えたのが残念だったかもしれません。そのあたりも、ファンならリピートして補完してしまうのでしょうから、十分なのかもしれませんが。
でももうちょっと、お坊ちゃん育ちでまっすぐなことしか知らなかった正名を、酸いも甘いも噛み分けた豪放磊落な晴玄(早霧せいな)が変えていく感じとか、日本人を蔑視していてかたくなだったお嬢さまのマリーが変化していく感じとかを、具体的なエピソードを立ててもっと描きこめると良かったかな、とは思います。
でも役者はすべてハマっていて、キャラクターのイメージを十分に体現してくれていたと思います。
キムの安定感は本当にハンパない。きりやんほど歌・ダンス・演技の三拍子揃ったスター、みたいには言われない気がしますが、なんでもできる人ですよねホント。
明るくさわやかな若武者っぷりがぴったりでした。
ミミちゃんはさらに歌がしっかりしてきた感じで好感が持てました。レモンイエローのドレス、可愛かったなあ。
だからこそもうちょっと出番を、ラブストーリー場面を作ってあげてほしかったけれどなあ。
チギも生き生きと楽しそうにやっているのがなんとも言えずイイですね。ニジンスキーもバドもこれもアリなのは頼もしいことです。
そして龍馬とオーギュスト・フルーランス隊長の二役のキタさん、これまた素晴らしい。どちらもしっかり務めていました。
マリーの家の執事ノエル(奏乃はると)のニワニワがまたよかった。亀山社中での武士役からしてキラキラしていて目を引きましたが、ノエルになってからはぐっとシブく、しかしまた終盤が泣かせる泣かせる。芝居巧者だなあ。
敵役のレオン・ガスタルディ少佐(大湖せしる)もよかったわー。久々に「売国奴」という言葉が正しく当てはまるキャラクターで、憎々しい役回りをあの白皙の美貌でやられたんじゃたまりませんよ観客は!
オーギュストとレオンの確執ってなんかもっといろいろイロイロあったんじゃないですかねと妄想してしまうのは邪推ですかそうですか。ともあれ、なのでレオンはオーギュストに殺させてあげたかったかなーという気もしなくもなかったです。でもまあ、悪を成敗するのは主人公の役回りか。
市民兵チプリアニ(香綾しずる)がまた泣かせました。ホントほとんど卑怯。
アバンの新聞記者とガスパール(彩風咲奈。これも新聞記者かな? そして涼花リサ演じるブランシェの弟だからガスパールなのか…?)も、説明台詞をきちんとこなしていてよかったです。
雪組が誇るお姉さま陣は、まず前田光子訳の麻樹ゆめみ。正名の息子に嫁いだ人でタカラジェンヌ、今回の演技指導に入っている立ともみの母・須磨磯子さんと同期生、とは奇縁ですよねえ。
それはともかく、アバンで物語に観客を誘う力が素晴らしい。そして後半、パリ市民として出てきてからは、何をしているというわけでもないんだけれど、凛々しい気迫が漂ってきて、こうして戦ったパリジェンヌも多くいたのだろう、と思わせてくれました。
「酒場の女将」なんて書かれ方が残念なブランシェは涼花リサ。今回開眼させられるくらい良かった! 杏奈さまとセットで使われることが多い人で今回もそうでしたが、全然色が違っていて…台詞はすごく少ないんだけれど、みんなと同じように銃を手に踊るだけでも、いつも眉間に皺が寄っていて、ああこの人は単純に高揚したりする人じゃないんだ、戦闘の苦しさ厳しさを知っていて、それでも参加することを選択した人なんだ…なんてことを思わせてくれました。
対するモリエール座の女優レティシア役の花帆杏奈は男に貢いじゃうような女として描かれているようですが、その嫋々とした雰囲気がよく出ていて、これまたせつなくて魅せました。
最初はマリーのお嬢さま仲間でちょっと軽薄で、のちに戦闘に参加してからは弱音吐かずに戦っていそうだったジャクリーヌ役の早花まこもよかったです。
私は様式美好きなので、たとえばアバンのあと、本筋の幕開きにまず正名が上手で歌ったのに呼応するように、パリに移った場面でまず紳士役のサッキーナが上手で歌う、みたいな作りが美しいと思いました。
プロローグの祝獅子とフィナーレの黒燕尾もスター配置が揃っているようでしたし。
そういえば、歌手をひとりに一本被りにせず、いろいろな生徒を歌わせているのもよかったです。
アバンのアシリレラ(花瑛ちほ)やモン・パリ場面でのパリジャンたち、第2幕プロローグのパリジェンヌたちなどなど。歌える人が多いのはいいことです。
『ダンクレ2』のお稽古が休みなのか、コムちゃんが観に来ていました。
カーテンコールでキムが紹介し、「ポッとしちゃいました」と言っていたのが可愛かったです(^^)。
武士の世が終焉を迎えようとしていた頃、薩摩藩出身の武士・前田正名(音月桂)は討幕運動に奔走する坂本龍馬(緒月遠麻)と親交を深めていた。龍馬は近年著しく発展を遂げているフランスへの洋行の夢を正名に語り、愛刀を預ける。やがて非業の死を遂げた龍馬の遺志を受け継ぐべく、正名はフランスに留学するが…
原作/月島総記、脚本・演出/谷正純、作曲・編曲/吉崎憲治。
手堅い、過不足なくできていた舞台だったのではないでしょうか。
ラブがもう少し欲しかったけれどねー。でもマリー(舞羽美海)とは結局は結ばれなかったんだろうから(原作を未読なのですが、彼女は架空のキャラクターなのかな? なんにせよ正名は帰国して日本人と結婚したんですよね…?)、あまりやりすぎると薮蛇感があるのかな。
あとは、どうしてもストーリーありきの物語になってしまっていて、キャラクター造形がわりに単純に見えたのが残念だったかもしれません。そのあたりも、ファンならリピートして補完してしまうのでしょうから、十分なのかもしれませんが。
でももうちょっと、お坊ちゃん育ちでまっすぐなことしか知らなかった正名を、酸いも甘いも噛み分けた豪放磊落な晴玄(早霧せいな)が変えていく感じとか、日本人を蔑視していてかたくなだったお嬢さまのマリーが変化していく感じとかを、具体的なエピソードを立ててもっと描きこめると良かったかな、とは思います。
でも役者はすべてハマっていて、キャラクターのイメージを十分に体現してくれていたと思います。
キムの安定感は本当にハンパない。きりやんほど歌・ダンス・演技の三拍子揃ったスター、みたいには言われない気がしますが、なんでもできる人ですよねホント。
明るくさわやかな若武者っぷりがぴったりでした。
ミミちゃんはさらに歌がしっかりしてきた感じで好感が持てました。レモンイエローのドレス、可愛かったなあ。
だからこそもうちょっと出番を、ラブストーリー場面を作ってあげてほしかったけれどなあ。
チギも生き生きと楽しそうにやっているのがなんとも言えずイイですね。ニジンスキーもバドもこれもアリなのは頼もしいことです。
そして龍馬とオーギュスト・フルーランス隊長の二役のキタさん、これまた素晴らしい。どちらもしっかり務めていました。
マリーの家の執事ノエル(奏乃はると)のニワニワがまたよかった。亀山社中での武士役からしてキラキラしていて目を引きましたが、ノエルになってからはぐっとシブく、しかしまた終盤が泣かせる泣かせる。芝居巧者だなあ。
敵役のレオン・ガスタルディ少佐(大湖せしる)もよかったわー。久々に「売国奴」という言葉が正しく当てはまるキャラクターで、憎々しい役回りをあの白皙の美貌でやられたんじゃたまりませんよ観客は!
オーギュストとレオンの確執ってなんかもっといろいろイロイロあったんじゃないですかねと妄想してしまうのは邪推ですかそうですか。ともあれ、なのでレオンはオーギュストに殺させてあげたかったかなーという気もしなくもなかったです。でもまあ、悪を成敗するのは主人公の役回りか。
市民兵チプリアニ(香綾しずる)がまた泣かせました。ホントほとんど卑怯。
アバンの新聞記者とガスパール(彩風咲奈。これも新聞記者かな? そして涼花リサ演じるブランシェの弟だからガスパールなのか…?)も、説明台詞をきちんとこなしていてよかったです。
雪組が誇るお姉さま陣は、まず前田光子訳の麻樹ゆめみ。正名の息子に嫁いだ人でタカラジェンヌ、今回の演技指導に入っている立ともみの母・須磨磯子さんと同期生、とは奇縁ですよねえ。
それはともかく、アバンで物語に観客を誘う力が素晴らしい。そして後半、パリ市民として出てきてからは、何をしているというわけでもないんだけれど、凛々しい気迫が漂ってきて、こうして戦ったパリジェンヌも多くいたのだろう、と思わせてくれました。
「酒場の女将」なんて書かれ方が残念なブランシェは涼花リサ。今回開眼させられるくらい良かった! 杏奈さまとセットで使われることが多い人で今回もそうでしたが、全然色が違っていて…台詞はすごく少ないんだけれど、みんなと同じように銃を手に踊るだけでも、いつも眉間に皺が寄っていて、ああこの人は単純に高揚したりする人じゃないんだ、戦闘の苦しさ厳しさを知っていて、それでも参加することを選択した人なんだ…なんてことを思わせてくれました。
対するモリエール座の女優レティシア役の花帆杏奈は男に貢いじゃうような女として描かれているようですが、その嫋々とした雰囲気がよく出ていて、これまたせつなくて魅せました。
最初はマリーのお嬢さま仲間でちょっと軽薄で、のちに戦闘に参加してからは弱音吐かずに戦っていそうだったジャクリーヌ役の早花まこもよかったです。
私は様式美好きなので、たとえばアバンのあと、本筋の幕開きにまず正名が上手で歌ったのに呼応するように、パリに移った場面でまず紳士役のサッキーナが上手で歌う、みたいな作りが美しいと思いました。
プロローグの祝獅子とフィナーレの黒燕尾もスター配置が揃っているようでしたし。
そういえば、歌手をひとりに一本被りにせず、いろいろな生徒を歌わせているのもよかったです。
アバンのアシリレラ(花瑛ちほ)やモン・パリ場面でのパリジャンたち、第2幕プロローグのパリジェンヌたちなどなど。歌える人が多いのはいいことです。
『ダンクレ2』のお稽古が休みなのか、コムちゃんが観に来ていました。
カーテンコールでキムが紹介し、「ポッとしちゃいました」と言っていたのが可愛かったです(^^)。
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