駒子の備忘録

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『吉﨑憲治&岡田敬二 ロマンチック・コンサート』

2019年06月05日 | 観劇記/タイトルや・ら・わ行
 梅田芸術劇場、2019年6月1日18時(初日)。

 宝塚歌劇105周年の今年、数々の名作を華麗なメロディで彩ってきた音楽家・吉﨑憲治(「よし」は下が長い字が正しいのですが、出せなくてすみません)の活動60周年、ロマンチック・レビュー始め数々のリビューを生み出し続けてきた演出家・岡田敬二の活動55周年を記念して、宝塚歌劇団の卒業生と現役生が集まり贈るスペシャルステージ。構成・演出/岡田敬二、作曲・指揮・音楽監督/吉﨑憲治。全2幕。

 宝塚歌劇80周年のときに出された二枚組のCD「吉崎憲治作品集」を愛聴していて、生には間に合っていなくてもこれで知った曲がたくさんあります。トップスターとしても、ルミさんかりんちょさんカナメさんには間に合っていない私ではありますが、もうほぼずっと乙女ポーズで聴き、どの曲も前奏が流れるたびにハッとするというのを繰り返す、至福のときとなりました。

 プロローグはオールキャストで『ザ・レビュー』より「I LOVE REVUE」。こういうときトップスターOGってたいていバリッとしたいかにもなパンツスーツで出てくるのに、カナメさんってたいていドレスで来ますよね。そういうところ、好きです。さすがつい先日まで現役だったみりおんが若々しく瑞々しいですが、このメンツだとかえった普通の美人さんに見えてしまうという恐ろしいOG沼で、まいまいの変わらぬ愛らしさとミミさんの麗しさが素晴らしかったです。
 全曲語ると大変なので割愛しますが、そんなカナメさんが役っぽい歌になるととたんに黒とか赤とかの派手なパンツ着てきて「愛の媚薬について」からの「ル・ポァゾン」とか、ホント反則。そこにミミさんインするとなっては、明日カナメさんとゲスト入れ替わりのウタコさんカモーン!ってな気持ちになりました。コムちゃんの「ナルシス・ノワール」で踊るアンサンブルのドイちゃんとあもたまがさすがでまたうるうる。私がヤンさんですら観られていない『ディーン』をコムちゃんが歌うのにもうるうる。かりんちょさんの「アランチャ」の本家本元ぶり、からの初めて歌うという「Drifter in the city」も粋でした。最近だとマギーが歌ったアレです。タニちゃんとみりおんの「夢 アモール」ってのも宙担的に痺れましたが、現役時代はふたりは重なっていないという…てかタニなんか顔が痩せて皺っぽく見えちゃって心配よ(><)。ゴージャスロング巻き髪は素敵なんだけれど。そして専科生として出演の愛ちゃんピンでの「シトラスの風」、泣くよね! からのシメさんが白い変わり燕尾で「ラ・カンタータ!」そして「熱愛のボレロ」とかホント胸が苦しい…大好き…! さらにルミさんまいまいが日本ものに早変わりしてきて『心中・恋の大和路』より「この世にただひとつ」で1幕が終了、贅沢すぎました…!
 2幕は専科生とアンサンブルによる「エイサー」でスタート。タニまりん愛ちゃんの「ザ・ダンディー」とかたまらん! みりおんの「仙女の祈り」も絶品。カナメさんが「悪魔の涙」からの「LOVER’S GREEN」という両極端っぷりを見せつけ、かりんちょさんが台詞付きの「朝日の昇る前に」でまたまた本家本元っぷりを見せつけ、からのルミさんの「魅惑のサンバ」で専科生とアンサンブルが客席降りとか楽しすぎました! シメさんが絶対定番の「青いくちづけ~ノスフェラチュ」のあと、初めてミネさんの『西海に花散れど』の「愛の祈り」を歌う、というのも泣かせました。まいまいの「愛の歌」がまた絶品で、ラストは「この愛よ永遠に」、カテコは「さよならグッバイ」でした。

 最上級生のルミさんは吉﨑先生と同郷で岡田先生とキャリア的に同期なのだとか。みなさんお元気でもちろんしっかりしていて、吉﨑先生なんか80代だろうに2時間立ちっぱで指揮なさっていて、ラインナップに呼ばれて真ん中で岡田先生と手を握り合っていても指揮はしようと腕振ってて、もうありがたいやら神々しいやら、でした。挟まれるトークも楽しく、学年順の並びも美しく組み合わせも楽しく、堪能しました。単なるノスタルジーではなく、歌い継がれるべき名曲がまた新たに命を吹き込まれ、OGも歌手としてまた新たなチャレンジをしていて、素晴らしい企画だなと感動しました。
 一方で、この先こういう企画ができる音楽家やショー作家が育っているのか? 今のスターに今後も長く歌い継がれるべき名曲が与えられているか? 持ち歌と言えるような、再演を繰り返せるような名作が恵まれているか? と思うとやや暗澹たる気持ちになりました。音楽家で私がちゃんと名前を挙げられるのは高橋城先生や青木朝子先生とか、くらい…? でも特徴が捉えられている自信はありません。演出家はハリーとかイケコならオリジナル作品限定でもある程度こういう企画に並べられるだけの作品数はあるかも、でもこんなに普遍的に響くパワーが持ててるかな?とは疑問です。
 最近生徒の休演が続き、フェアリーの働き方改革も手を打っていただきたいところですが、この日の午前に観てきた雪大劇場も芝居の脚本は「………」な出来だったので、作家にももっとケアは必要だと思います。手が足りてなさすぎるし忙しすぎます。なんか五人くらいで回している印象です。たとえば一年くらい休養を与えてNY研修に送り出すとか、ラスベガスのショーやなんなら下北の芝居でいいからもっと見せてあげてほしいし、流行りの映画や小説や漫画やドラマくらい抑えていてほしいし政治の情報もインプットしていてほしい、美味しいものを食べたり旅行に行ったりして感性を磨き常に新鮮でいてほしい、でないとクリエイターなんてすぐ駄目になるよ…と思います。チケット代金値上げがそのために活用されるのなら嬉しいです。
 いつかまたこうした企画を別のくくりで出来るようにするために。宝塚歌劇が150年でも200年でも続いていくために。今、ひとつひとつ大事に、育ててほしいです。ちゃんと通いますから、どんな駄作でもファンは行かないという選択肢はないのですから…(ToT)ホント頼みますよ……






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