駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

宙梅芸『WSS』初日雑感

2018年07月26日 | 観劇記/タイトルあ行
 宝塚歌劇宙組『WEST SIDE STORY』梅田芸術劇場公演、初日から三回連続観劇して帰京しました。
 国際フォーラム公演の感想はこちら
 このときすごく感動して、かついろいろ考えさせられたこともあって、初日終演後は、国際フォーラム版の方が出来がよかったのではないか…?と思ってしまいもしたのですが、三回観たら、もちろん慣れもあるのか、どちらもいいな、もっと良くなりそうだな!と素直に思えるようになりました。
 まあ席の問題もあるのかな…二階前列上手、二階前列下手と来て一階後方ほぼどセンター、の順で観たので、やはりセンターっていいな観やすいな、全体が観られるっていいな、としみじみ思ったのです。この作品ってやっぱり海外ミュージカルで、ある程度スターだけ追っていけばいいようなところのある宝塚歌劇ナイズされていないというか、アンサンブルのフォーメーション含め全部にきちんと意味がある構成になっていると思うのです。でも遠かったり贔屓がいたりするとついオペラで観ちゃうので、狭い視界からでは得られないものが多いというか…贔屓が出演するとなるといろいろな意味で目は曇るのは、でもまあ、仕方がないことでしょうかね。良きにつけ悪しきにつけ公正、公平な判断はできなくなるものなのかもしれません。私だけだったらすみませんが(^^;)。
 あと初日は音響というかチューニングがあまり良くありませんでしたよね? 音量のバランスとかも…このあたりも三回目にはぐっと修正してきて聴きやすく、歌詞も台詞も流れなくなってクリアになっていたと思いました。
 リフは、観たいと思っていたしできると思っていました。意外にファン歴がきちんとあるこの人にとって、これが再演されてほしい作品のひとつだったことを知っていましたし、だから出演もさせてあげたかったし、国際フォーラム版では逆チームだったけれど梅芸版には振り分けられて、でもチノとかじゃなくてリフがいいの!って思っていたら早くに「主な配役」として発表されて、本当に嬉しかったのです。
 役を引きずらないタイプなのでお稽古待ちなんかでも特に変化はなかろうとは思ってはいましたが、金髪にしてパーマかけて不良めいていく姿にはときめいていました。
 そして公演の幕開きがまた、リフからなんですよねー。いやぁこれにはもうもうときめきまくりでした!
 ただ、そこへひとりでふらっと現れる感じのベルナルドが、キキちゃんのときはそれはもうものすごいオーラと存在感を感じたんですよ。でも今回は、私が愛ちゃんベルナルドに対するあっきーリフの反応を見るのに集中しすぎていた、というのももちろんありますが、そこまで圧倒されるものを感じなかったんですよ。で、まずここであれ?となりました。そしてベルナルドって実はソロの歌も大きなダンスナンバーも全然ない、その中で存在感を出すのが本当に難しい役だと思うのですが、当時のキキちゃんには確実に物珍しさがあったし、あと台詞の声がやはり格段にいいんですよね。愛ちゃんのこもった声は『不滅の棘』のときにかなり改善されたと感じたのだけれど、やはり今回は損に出ていた気がしてしまったのでした。
 そして前回、ずんちゃんリフの「Jet Song」の歌の上手さに「わあぁミュージカルが始まった!」って高揚感が高まった記憶があるのですが、あっきーリフの歌には残念ながらそこまでのパンチや破壊力がなかったように感じてしまい、今度はここであれれ?となってしまいました…てかこの歌、難しいよね(><)。でも「Cool」はすごくよかったです。ニンに合っていた気がしました。 
 続いて現れるずんちゃんアニータが、私にはまたずいぶんとおばちゃんに見えたのにも驚きました。大評判だったそらアニータは本当に素晴らしかったし、トランジスタ・グラマーっぷりも歌も芝居もダンスもそれはそれは絶品でしたし、キキナルドともまどかにゃんマリアともバランスがとてもよかったのです。でもずんちゃんは、宙男としては小柄ですが、娘役をやるにはもう学年が進みすぎているのではあるまいか…まどか相手でも愛ちゃん相手でも意外にデカいし(膝から下が驚異的に長くて美しい脛の持ち主で、なのに低いヒールでせっかくの美脚をもったいない!と残念でした)、今さら愛ちゃんにデレられないだろう、とか感じちゃったんですよね。
 なのでさらに歌がうまくなったまどかマリアのバルコニー・シーンの歌が始まるまで、私は今回は「ミュージカル来たコレ!」感を感じられませんでした。あ、でも、第1場のダンスは全体に重心が下がってかつリズミカルに、ダンサブルに、そしていい意味で土臭いというかネイティブ感が出てきているように見えて、おおぉ進化してる!と奮えたんだけれどなあ…
 アクションももえこの方がよかった。あのもえこが! このテの役を! という新鮮さもあったし、かつ大健闘していたと思ったのです。あーちゃんだと、ちょっとあたりまえすぎる。あとかけるディーゼルとキャラというか見た目が被る。
 そしてエイラブはりりこのベスト・アクト、代表作だったのではと私は思っているので、まりなにはそこまでの強い印象はなかったかな…とか、ちいちゃいエビちゃんヴェルマと対でいつもいる大柄なゆいちゃんグラツィエーラのすらりとしたスタイルと美しいダンスが大好きだったんだけれど、シャークスの女から替わったまりーあだと都会的な空気が足りない…とか、どうしても比べてしまうんですよね。
 モンチからりおくんに替わったビッグディールがさすが洗練されてシャープで素敵だったのは、好印象だったかな。あと声が本当に良くて、ちょっとまゆたんに似て聞こえたときもありました。ラスト、彼だけがトニーの葬列に加わらなかったのは、彼には思うところがあったのでしょうかね…でも彼がいたからエビちゃんヴェルマがすがりつけたんですよね…泣けました。
 あきもベイビージョンとか夢白ちゃんのエニボディーズとかの続投組がちゃんと上手くなっているのには感心しました。きゃのんロザリアの安定感とかもね。
 あ、さよちゃんコンスエーロはとてもよかった! せとぅーもイメージよりは下級生だと頭ではわかっていても、やはりもっと下級生にやらせたい役だったかもと思っていたのでちょうどよかったし、最近本当に上手くはっちゃけるようになってきていますよね。そしてサムウェアのカゲソロは今回も絶品でした!
 サムウェアのスケルツォのメンバーは続投でしたが、サムウェアの男女は変わって、ゆいちぃの代わりにナベさん、ゆいちゃんのところにまりーあが入ってまりーあのところにさらちゃん。さらちゃんは「アメリカ」のダンスもとてもよかったし、ここでもとても柔らかで素敵でした。
 シャークスのメンバーはジェッツに比べるとちょっと割を食っているところがあるかなと思います。でもりくもさおも変わらずちゃんとしていましたね。てかラストは本当にりくチノの表情の変化に泣かされますよね…
 あ、クラプキ巡査はやはりまっぷーにちょうどよくて、りんきらにはやはりちょっと役不足で残念だったかなー。グラッドハンドは朝比奈くんになっていました。
 主役のふたりは、本公演を挟んでよりブラッシュアップされていたと思いました。ゆりかちゃんトニーはヘンな若作り感がなくなって若者っぷりが板に付いてきたと思いましたし、まどかにゃんマリアはいっとき真っ黒すぎたお化粧が本当に綺麗になっていました。歌も本当に上手くて、頼れます。ふたりのラブラブ度が増した方が物語の悲劇度も上がるので、この点もよかったですね。
 あとよかったのは、まかあきのバディ感かなあ。一期違いなだけなのにこれまで役でもプライベートでもあまり絡みのネタがなくてずっと残念に思っていたのですが、今回はとてもよかった! ずんちゃんリフだとやはりどうしてもトニーの弟分、後輩に見えたし、あえてそう作っていた部分もあるかと思うんですけれど、あっきーリフは普通にトニーとタメに見えました。ああ、このふたりがジェッツを立ち上げたんだなって容易に想像できました。対等な親友、兄弟同然の関係、血のつながった家族より濃い関係、に見えました。だからこそリフは、トニーが離れていっちゃうように感じられることにとまどい、いらつき、怯えていたんだろうなと感じました。このあたりの関係性もおもしろく見えました。
 トニーはジェッツのみんなより少しだけ先に大人になっていて、社会に出て働き始めたし、少年ギャングの路地の縄張り争いみたいなことからは抜けていました。でも恋に恋する少年みたいな、甘い、幼いところがあった。
 一方でリフはちゃんとヴェルマという恋人を持っていて、これがまたあきエビの身長差も萌えたしガンガン踊り合うときの息の合い方にも震えたしエビちゃんのイカした強さにも本当にシビれたんですけれど、私にとって実は何が最高に良かったかって、ふたりがやることやってるカップルにちゃんと見えたってことだったんですよね。
 いや、別に性体験があるから大人だ、なんとことは言いませんよ? でも他人とそこまで真剣に向き合うことで大人にならざるをえない部分って絶対にあるじゃないですか。彼らはそれなりに長い時間を共にしてきた恋人同士に見えましたもん、パッとやってダメだったら別れる、みたいな軽いカップルではなかったもん。だからその点ではリフはトニーより大人なんですよ。リフにはトニーよりそういう、進んでいる部分もちゃんとあって、でもトニーの方が大人な確かに部分もあって、そういう意味でふたりは本当に対等な親友で、単なる先輩後輩みたいなものではなかった…ということが表せていたのが本当によかったと思いましたし、作品としても効いていると思って感動したのでした。ドラッグストアの看板前、脚立の場面のやりとりとか、本当に本当によかった!
 そういう意味では、新しいリフ像が観られて嬉しかったし、それをやってのけて見せたのが贔屓だったってのも嬉しかったし、それはたまたま主役のトップスターの生徒と学年が近かったから、とかいうことだけではなくてちゃんと役を構築し演技をしてのことだと思っているので、私は誇らしくてたまらなかったのでした。だってふたりとも本当はこんな人間じゃない、ってことは1ファンにすぎませんが知ってますもん。その上でゆりかちゃんもあっきーもちゃんと役を作り役として生きていたんだもん。それが舞台に出ていたもん、それが素晴らしいんだもん。
 そんなリフが刺されたとき、初日に私の近くの席から「ああっ」っていう小さな声が漏れたんです。ああ筋を知らない人がいるんだな、真剣に観ていて新鮮に驚いて、そして思わず声が出ちゃったんだなと思うと、感動しました。そして我がことのように誇らしかったです。

 フィナーレの振付がバージョンアップされていたというか、拍手や手拍子が入れやすくなっていたのは素敵な宝塚ナイズだと思いました。センターで踊るリフのなんとまあ楽しそうなことよ! 観ていてニマニマしちゃいました。
 人の心を大きく動かす力を持った、骨太の、不朽の、偉大な作品です。新メンバーでさらに進化していってくれることでしょう。楽しみすぎます、見守り続けます!!


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2 コメント

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ご無沙汰しております (カロリィ)
2018-07-26 20:03:52
久しぶりに書き込みます。ブログはずっと拝見しています。

月末、一度だけ梅田に観に行けることになりました。実を言うと、私もウエストサイドストーリーを全く知りません。予習していくつもりでいましたが、そしてリフが刺されることを知ってしまいましたが(笑)、全く知らない状態で観るのも悪くないかなと思いました。

あきリフ、とっても楽しみにしています!
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失礼しました! (カロリィさんへ)
2018-07-28 07:04:47
きゃー、ネタバレ失礼しました!
『ロミジュリ』でいうところのマーキューシオなので…
と思いましたがご存じでない方もいらっしゃいますよね(>_<)。
すみませんでした!
ネタバレついでに言いますが、倒れて横たわる姿が
なんか可愛らしいのでガン見してください!(笑)

●駒子●
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