駒子の備忘録

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宝塚歌劇星組『うたかたの恋/Bouquet de TAKARAZUKA』

2018年02月12日 | 観劇記/タイトルあ行
 中日劇場、2018年2月11日16時。

 1889年1月26日、ウィーンにあるドイツ大使館では、皇帝一家臨席のもと舞踏会が催されていた。大勢の貴族が一堂に会する中、皇太子ルドルフ(紅ゆずる)が男爵令嬢マリー・ヴェッツェラ(綺咲愛里)の手を取り、踊り出す。人々の視線を一身に集め、幸せそのもののように踊るふたりは、しかしうたかたの恋に終止符を打つ時の訪れを悟り、ある覚悟を固めていたのだった…
 原作/クロード・アネ、脚本/柴田侑宏、演出/中村暁。1983年の初演以来、再演を重ねる名作。中日劇場での宝塚歌劇ラスト公演。

 私はベニーが苦手なので、まずプロローグの主題歌に鼻白みました…なんでああいう発声になっちゃうんだろうなあ…いいときの歌はいいのになあ…
 でもプロローグのこのターンのラスト、銃声が響く直前の、ふたりが背を反らせて死を匂わせるポーズして暗転、のタイミングが最高に素晴らしかったです。
 で、ウィンナ・ワルツの場面になって、かいちゃんが出てきて踊ると「ああ、ここまぁ様が踊っていた」と思い出し、カチャが出てくると「ああ、ここキタさんが踊っていた」となって忙しかったのですが…お芝居が始まると、あーちゃんの素晴らしいマリーっぽさに一気に引き込まれ、その後はけっこう楽しく観てしまいました。
 ただ、やはり脚本がかなりレトロで行間が多い印象で、それを芝居で埋めきれていない感じがしましたし、全ツであちこち回るにはいいけど別箱とはいえある程度の期間の長さで公演するのはもはやしんどい演目ではないかな…とも思いました。いや、簡単に古い、とは言いたくはないのですが…
 ベニーのルドルフは、ハムレットとか(オフィーリアが水乃ゆりちゃん! 美しい!)その後のロビーの場面、ブラッドフィッシュ(如月蓮)やゼップス(大輝真琴)とのやりとりなんかは私はあまり感心しなかったのですけれど、マリーを私室に招いてからの芝居やその後の公演でのジャン(七海ひろき)とのやりとりがすごくよかったです。ウェットさがうまくハマるといいんですよね。ああ、なんかもっとこれぞという似合いの当て書きの役を、代表作をそろそろ観たいなあ…
 マリーは、要するにごくごく平凡な少女であるところがいい、というようなキャラクターなのではないでしょうか。美人ではあったかもしれないけれど、ものすごく純真だとかものすごくけなげだとかものすごく素直とかではなくて、普通程度に、純真で素直。でもその普通さがルドルフの周りにはなかったのだろうし、その何物にも沿ってしなしなと形を変えるような、若い柔らかさ温かさがルドルフを捕らえたのかな、と思いました。そしてふたりが出会って、ルドルフがマリーを手折って、こういうことになった、というような…そんな、ごくシンプルな、普通の美しさ、可愛らしさ、小さな青い花感をあーちゃんはとても上手く体現しているように私には見えて、そしてそれはもちろんとても難しいことだと思っているし技が必要なことだと思っているので、彼女の娘役芸にうならされました。そこにベニーのルドルフは上手く乗っかっているんだと思うんですよね。ベニーがあーちゃんをすごく可愛いと思っていることが表れている、というような。すごくいいことだと思います。そら誓いも破るよな!ってなもんです。
 そしてジャンも、ルドルフの心情を親身に案じ、また政治的立場も慮り、安易に甘えたり利用したりしない。自分たちの政治的な行動とはきちんと一線を引く、その誠実さは、かいちゃんの温かさならではのものかなとも思いました。そういうのがみんな、いい方に出ています。それに応えるベニーのルドルフの苦悩や寂しさも際立ってきます。
 組長のエリザベート(万里柚美)やれなちゃんのヨゼフ皇帝(十碧れいや)もよかったなー。マリンカ(夢妃杏瑠)やツェヴェッカ伯爵夫人(華鳥礼良)は定番だけれど、ラリッシュ伯爵夫人の七星美妃なんて初めて認識できました。こういうのも別箱公演のいいところですね。あとグレタの水乃ゆりちゃん! 多分こういう美人っぽい、大人っぽい役の方がいいんじゃないかなあ、メイクとかも。
 はっ、しかし娘役の話をするならなんと言っても俺たちのはるこですね! ルドルフの夢の場面での前髪の愛らしさ、殺人的です! あとボヘミアの女のバイトの鮮やかさが素晴らしすぎました! 下町の娘とはいえミ、ミリー!?ってなりましたよ(笑)。
 あと、私の大好きなステファニー(星蘭ひとみ)! 正直、芝居はちょっと直情的すぎてニュアンスに乏しかったかなと思いました。むしろ台詞がない、舞踏会でジャンと踊りながらマリーを睨みつけるくだりがとてもよかったです。美女の怒りは美しく、悲しい…
 カチャのフリードリヒ公爵(凪七瑠海)は、ちょっと違うけどなんかこの間もこんなような悪役やっていたような…という印象で、損だったかな。あと、特に何もしていないんだけど(オイ)フェルディナント大公の極美慎がやはり美貌やスタイルで目を惹きました。
 そういえば隣のマダムが基本ずっと寝ていたんですけれど、ロシェック(ひろ香祐)が出てくると起きて笑うんですよね…不思議でした…
 あ、ラストのカゲソロも素敵でした。ちゃんとプログラムに記載してほしいなと思いました。

 ショルダータイトルが「タカラヅカレビュー」ってのもすごいな、と改めて思う『ブケタカ』ですが、こちらも楽しく観ました! 本公演もたくさん通ったわけではないけれど記憶に新しいし、それを違う配役で観る楽しみがありました。
 私が識別し慣れているせいもあるけれど、組替えしたりらたんがどの場面でもすぐわかってすごく可愛くてすごくがんばっているのがよくわかってデレデレでしたし(あとやっぱちいちゃくて可愛かった! 宙娘だから小さいと言ってもよそに行ったらでかかった、とかはなかった)、れなちゃんが大活躍でもうホント嬉しかったです。あれはファンも嬉しかったろうなあ。あと漣レイラも目を惹きました。れんたは客席降りで手をぎゅって握ってくれたのギャー! アパシュの女のもうひとりが男役になった分、余計にはるこのしなやかさが堪能できましたし、「サ・セ・ラムール」はさすがにしどりゅーに一日の長の華やかさがあるなシンキワミはスペックはいいんだけどなーとか思っていたら暗転直前にウィンク飛ばしてきて撃沈しました。かいちゃんのすみれの歌が思いの外(オイ)良くて、スパニッシュもベニーのライバルがカチャになって背格好が似たふたりが争う構図がより美しくなった気がしました。そしてフィナーレの歌う淑女の星蘭ひとみ・水乃ゆりという美の暴力に打ち倒されました。じゅりちゃんのカデンツァが素晴らしかったエトワールはカトリーヌ、これも鈴のような高音で素敵でした。
 これくらいのサイズだと下級生までちゃんと観られて楽しいんですよね。たっぷりした美しいまろやかな澄夫ちゃんレビューを堪能しました。楽しかったです!







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