駒子の備忘録

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紡木たく『瞬きもせず』

2010年02月17日 | 愛蔵コミック・コラム/著者名た行
 集英社文庫、全2巻。

 むせかえるよーな緑のにおいのする県立高校は勉強もスポーツもふつうって感じで、ほんとにのんびりしています。テニスがしたくてこの高校に入って3か月が過ぎて、やっと私も慣れてきたかなーと思っています…高校時代の初恋、友情、家族や兄弟への想い、将来への不安や悩みを描いたまぶしいばかりの名作。

 以前読んだときには、「うーん、でも私は『ホットロード』の方が好きかな」などと思ったものでしたが、今回再読して「いや、やはりこれはこれで名作だ」と結局買い揃えてしまいました。

 実際の自分の高校時代はというと茫漠として記憶の彼方で、決してこんなふうにキラキラ輝いていたものではなかったのだけれど、でも、すごくよくわかるんですね。誰かを好きになったときの、甘くて苦しくてせつない胸の痛み、自分に何ができるのか自分が何をしたいのかわからなくてもがく気持ち…

 本当は私の個人的な好みとしては、もっとしゃっきりした絵とセリフの作品の方が好きなんです。この淡くやわやわとした絵、ひらがなと間投詞を多用したいかにも思春期の若者がしゃべっていそうなセリフ(しかも方言!)は、本来ならば脱力ものなのですが、この作品では実にいい味になっています。
 当時一世を風靡したのも納得の才能だと思います。そして一過性の流行りものではなく、読み次がれる名作のひとつだと言えると思います。読み始めると本当に胸苦しくなるので、コンディションがいいときにした手を出せないかもしれないけれど…(笑)
 文庫版の装丁がまた渋くて美しくて、愛蔵にぴったりです。

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