駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

紡木たく『ホットロード』

2010年02月17日 | 愛蔵コミック・コラム/著者名た行
 集英社文庫、全2巻。

 14歳の和希は母の誕生日に万引きをした。それが父と愛のない結婚をし、父の死後も変わらず学生時代の恋人と会い続けている母へのバースデー・プレゼントだ。転校生で「不良」の絵里に誘われて、暴走族の集会に顔を出すようになった和希は、特効隊長を務めるハルヤマと出会う…あまたの亜流を産み出した青春漫画の傑作。

 スカートが長い時代の作品ですが、時を超えた名作です。読むとしばらくは「……」の多くて話し言葉に近い台詞回しが移ってしまうくらいです。
 私がこれくらいの頃は、田舎でもあったし、暴走族ブームはもう下火になっていました。でも、あの光とスリルとスピードに火のつくような思いをした人も実際にいるのでしょうね。

 結局のところ、テーマは最後の十数ページに語られている訳です。こういう作品を読むと、うちの親なんて無学で平凡この上ない人間なんですが、子供に
「世の中にあたしを必要としてくれてる人間が…いるでしょーか……」
 という思いだけはさせなかったということだけで誉められてしかるべきなんでしょうね。自分たちもそうありたいものです。
 だからフェミニズム的な観点から叩かれることもあったという
「いつかハルヤマの赤ちゃんのお母さんになりたい」
 というのも、正しいことだと私は思います。親の愛情を十分に受けずに育った子供は成長しきれなくて、でも誰か大事な相手に奇跡のように巡り会えたときに変われて、そして今度は親になっていく。
 今度は間違えないでいけるかもしれない。希望って、人生って、そういうことじゃないでしょうか。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 木原敏江『アンジェリク』 | トップ | 紡木たく『瞬きもせず』 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

愛蔵コミック・コラム/著者名た行」カテゴリの最新記事