駒子の備忘録

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『エリザベート』

2015年08月07日 | 観劇記/タイトルあ行
 帝国劇場、2015年8月6日マチネ。

 1992年オーストリア初演、2000年東宝版初演。舞台美術(二村周作)や衣裳(生澤美子)も一新した新演出版。

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 直近の東宝版の感想はこちら
 HNが違う、少し前のものですが、未だに同じな私のエリザ論はたとえばこちら

 ハナちゃんシシィ、芳雄くんトート、松也ルキーニ、万里生くんフランツ、古川くんルドルフ、ウタコさんゾフィーで観ました。

 うーん、今回のバージョンでも私はやっぱり納得できませんでした。というかますます混迷を極めてきた気がしました…
 もともと東宝版より宝塚版の方が好みということもあります。あと、外部のいろいろな俳優さんがやるとそれだけで歌唱や演技の方向性がバラバラになる気がして、今の私はそれを楽しむ方に感覚が行っていないんだと思います。均質で統制の取れた美しい宝塚歌劇ワールドに、今が多分一番ハマっている気がするので…
 だからたとえば、リアルドールなスタイルのハナちゃんと、すらりと長身でそれは素敵なんだけどでも顔だって大きいしザッツ・男性な芳雄くんとの並びがまずカップルとして美しく思えなくて、今の私には受けつけがたいわけです。
 ただ、そもそもエリザベートとトートをカップルと考えるのがもう宝塚版に毒されすぎているということなのでしょうね? ウィーン版を観たことがないのでなんとも言えないのですが、これはエリザベートこそがザッツ・タイトルロールの作品であってトートはヒロインの影にすぎない、言うなればエリザベートⅡのような存在(この表現がすでに宝塚に毒されすぎて以下後略)なんですもんね?
 でもなー、それにしてはトートが存在感ありすぎだと思えたしなー。でも意外に出番は少ないんですよね、やっぱり。光と影みたいな対称性は感じられなかったし、なんというか対っぽい感じがなくて、このふたりをどう捉えていいのかが私にはよくわかりませんでした。お互いがお互いをどう思っていることになっているのかもよくわからなかった。私はふたりの恋愛と相克が見たい派なのですが、そうでないのだとするならばそこには何があるのかがよくわからなかった、というか…
 歌の方向性も全然違うし。芳雄くんはもちろん上手いんだけどさらにものすごくエフェクトかけられてて、それがトートっぽいというか非人間性を表現しているということなのかもしれないけれど、私には違和感がありすぎました。これでは余計にトートがエリザベートと同じフェーズにいるように見えない、接点が成立するように見えない…
 私は育三郎くんが好きなので、彼のルキーニで観られたらまた違った感想になっていたのかもしれませんが…ルキーニの立ち位置というか役割も宝塚版とはおそらく違うのでしょうが、でもとにかく私にはぴんときませんでした。
 台詞や歌詞も宝塚版で慣れ親しんだものとは細かく変更それていて、それはブラッシュアップされていたりわかりやすくなっていたりより流れが強調されているようで良かったな、とは思いました。
 でも「私が踊るとき」であんなに対立の構造をはっきりさせておいて、すぐトートになんか泣きつくような形になるのがどうもなあ…とか、「夜のボート」でものすごい他者との断絶を見せつけておいて結局トートには抱きついて終わるんだ…とか、感情の流れというか芝居の流れがよくわかりませんでした。エリザベートの孤高の人生を描いた…という形になっているとも思えなくて…うーむ。
 だったらやっぱりもっとザッツ・三角関係みたいなものの方がわかりやすくないかなー…私が観たい『エリザベート』が形になることはないのかなー。みんなこの作品の何がそんなに好きなのかなー、楽曲が素晴らしいとはそりゃ思うんだけど…
 と、不思議な感覚で観終えた舞台でした。
 一幕ラストはちょっとときめいたんですよね。舞台下手奥にトート、上手手前にフランツ、真ん中にあの白のドレスに星の髪飾りのエリザベート、三角関係の構図。そしてエリザベートは開いた扇で顔を隠す…どちらの男も拒む、というその孤高。
 それがニ幕ラストのあと、ラインナップで上手袖からセンターに出てきて、下手奥に顔を向けてちょっと斜めに後ろ姿を見せたハナちゃんの姿につながったように思えました。振り返ったらあの肖像画のポーズになる、その直前の、顔を見せない後ろ姿。
 一瞬だけれど、孤独で、悲愴で、悲しげで寂しげな後ろ姿に、私には見えました。エリザベートの心は、生き様は、まだ描かれきっていないのではないかしら…と思ったのでした。

 ハマコの鮮やかさには目を奪われました。特筆。
 でも東宝ミュージカルだからってOGばっかってのはどうなんだろうねえ…とはちょっと思ったり、しました。





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