駒子の備忘録

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宝塚歌劇花組『エリザベート』

2014年11月17日 | 観劇記/タイトルあ行
 宝塚大劇場、2014年8月25日マチネ、9月6日マチネ。
 東京宝塚劇場、11月6日ソワレ、11日ソワレ、13日ソワレ。

 オーストリー=ハンガリー帝国の皇妃エリザベート(蘭乃はな)暗殺事件から100年あまり、煉獄の裁判所では今もなお実行犯ルイジ・ルキーニ(望海風斗)の裁判が続いていた。彼は死した者たちの魂を呼び起こし、エリザベートが辿った数奇な運命について証言させる。深い闇の中から黄泉の帝王トート(明日海りお)が現われ、エリザベートへの「偉大なる愛」について語り出す…
 脚本・歌詞/ミヒャエル・クンツェ、音楽/シルヴェスター・リーヴァイ、潤色・演出/小池修一郎、翻訳/黒崎勇。1992年ウィーン初演、1996年日本初演の人気演目。宝塚歌劇では5年ぶり8度目の再演。明日海理緒のトップお披露目公演、蘭乃はなの退団公演。

 だいもんの雪組への組替え発表もあって大変なプレミアチケットになりましたが、なんとか観ることができました。私は今までの全バージョンを観ているわけではないのですが、たとえばこちら
 宝塚大劇場で観たマイ初日には、とにかくだいもんルキーニの圧倒的なパワーに震撼しました。
 私はこのお話はトートとシシィとフランツ(北翔海莉)の三角関係の話であり、トートとシシィの異種間恋愛の相克を描く物語だと思っていて、つまりトートのキャラクターとしての実在を疑ったことはありませんでした。死神として、黄泉の帝王として、人間界の外に生きる者として、ちゃんと実在しているものだと捕らえてきたのです。
 でも今回初めて、そもそもこの物語はルキーニの裁判であり、その証言と再現の話であり、トートとはルキーニの妄想が生み出した架空のキャラクターかもしれないんだ、と思わされました。
 そういう解釈があることは知っていましたし、トーとはシシィの死とか自由への憧れの具現化みたいなもの、という解釈があることも知っていましたが、自分ではそういうふうに思えたことが今までなかったのです。
 それくらい今回のルキーニは私にとってはコペルニクス的転回を強要するインパクトがありました。私はせつないラブストーリーが観たいのに、誇大妄想の男の話なんか聞きたくないのよどんなに色っぽくて素敵でも!みたいな動揺があった(^^;)。
 でもルキーニのすごさと同様に蘭ちゃんシシィがトートを意外とというかなんというか、ちゃんと異性として愛しているように見えて、だけど人間だから今はあなたとは行けない、みたいな形の拒絶をしているように見えて、ラブストーリーとしてちゃんと成立しているように見えました。
 そしてなんと言ってもトートが歌が上手くて美しくて観ていてストレスがない。なんなら観ていなくても大丈夫なくらい(オイ)無色透明な美しさで、これまた不思議な魅力を放っていました。そんな不思議なアンサンブルの舞台に仕上がって見えました、私には。
 東京ではルキーニがやや抑えているように見え、フランツが押し出しているようでもあり、そしてシシィの心はトートから離れてしまったようにも見えました。卒業ってこういうことなのかなとも思いましたし、シシィのあり方としては正しいのかなと思いつつも、恋愛色が薄くなったのは寂しく感じたり…結局泣くのはいつも病院場面でした。
 これはやはりシシィの話なのでしょうねえ。彼女は本当に不器用で生真面目だったのでしょうね江。私だったら旅に出たら捨ててきたもののことはさっさと忘れる、忘れる振りをする、忘れたと自分に言い聞かせる。そうでないとつらすぎるから。
 でも彼女は捨てたという罪悪感に囚われて、旅に出ても自由になれないでいる。しんどい生き方しかできない人なんですよね。それが泣かせる。
 受けて立つユキちゃんのヴィンディッシュ(仙名彩世)がまた、最後まで「かわいそうな精神病患者」にならない役作りなのがよかった。中途半端に宙ぶらりんなままのシシィとの対比が素晴らしくて、泣けました。このふたりには扇の交換は似合いませんでしたね。
 シシィは最後まで悩みながら迷いながら生きて生きて、だからルキーニに襲われたときもとっさに腕を上げて身を庇っただけで、特にトートの存在を感知したとか彼の腕に自ら飛び込んでいったとかではなかったのでしょう。本当にたまたま襲われた災難の先に、彼がいた。で、新しい世界、愛の海でやっと自由に泳げるんだなあ、そこにはそれでいいよと言ってくれる人が寄り添っていてくれるんだなあ…という暖かな思いで旅立っていけるんでしょうね。そんな昇天場面でした。

 逆に言うと、やっぱり私は、トートが何故ルキーニにナイフを渡すのかがわからないままなのでした。くわしくはこちら
 同伴したビギナー後輩たちが何人か、「すっごく良かったんだけど、結局最後ってどういうこと???」ってなるの、すごくよくわかるんですよね。
 待って待って待ったトートが刺客放つようなことするの、おかしいじゃん。シシィが死にたがっている、俺を愛しているなんて確信、彼にはないはずですもん。どういう意図での演出なんだろうなあ?

 というワケで。あとはこまごまと…
 みっちゃんのフランツは、歌は上手かったけれど萌えなかったな。私はフランツがキャラクターとして大好きなので、寂しかったな。
 ルドルフ(芹香斗亜、柚香光の役替わり)はカレーちゃんの方がニンかなと思っていましたが意外やキキにやはり一日の長がありました。技術的にちゃんとしている。でもここにまた私が萌えないんだすまん…
 きらりは可愛かった! じゅりあも素敵だった!! イチカは…エトワールさせてあげたかったねえぇ。
 あきら超絶カッコよかった! フィナーレはガン見でした!!

 …でももうちょっと、お腹いっぱいだったかな…他組で続演とかはいいです、新作オリジナル二本立てをきちんと作っていただきたいです。お願いいたします。









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