映画 ご(誤)鑑賞日記

映画は楽し♪ 何をどう見ようと見る人の自由だ! 愛あるご鑑賞日記です。

私の20世紀(1989年)

2019-04-22 | 【わ】

作品情報⇒https://movie.walkerplus.com/mv15549/

 

以下、公式HPよりストーリーのコピペです。

=====ここから。

 1880年、アメリカ・メンローパークのエジソン研究所では、エジソンが発明した白熱電球のお披露目に沸き立っていた。時を同じくして、ハンガリー・ブダペストでは双子の姉妹が誕生した。リリ、ドーラと名付けられた双子は孤児となり路上でマッチ売りをしていた。クリスマスイブの夜、彼女たちは通りかかった二人の紳士に別々にもらわれていった。

 やがて時は流れ、1900年の大晦日、気弱な革命家となったリリと華麗な詐欺師となったドーラは偶然オリエント急行に乗り合わせた。リリは同志から渡された伝書鳩を大事に抱えながら、満員の車両で不安に過ごし、ドーラは食堂車で豪華な食事を楽しみ男達を弄んでいた。

 ブダペストで降りた双子は、世界中を飛び回る謎めいた男性Zと出会う。男性慣れしていないリリは図書館で目が合ったZに惹かれ、帰り道を共に歩き、動物園にデートへ出かける。一方、ドーラは豪華客船で一夜の遊び相手としてZに目をつける。Zは彼女たちを同一人物と思い込み二人に恋をするのだが…。

=====ここまで。

 昨年公開された『心と体と』(2017)の監督の長編デビュー作が4Kレストア版として公開。

 

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 『心と体と』は結構面白かったので、その監督の長編デビュー作というのなら、ちょっと見てみたいかも、、、と思い、予告編にも興味を引かれたので劇場まで行ってまいりました。

 

◆こちらは“同床異夢”の物語。

 これは、いろいろと博識の人が見れば面白いのかも知れないが、私のような無知蒙昧な人間が見ても、監督の意図するところの100分の1も理解できていない可能性が高い。それくらい、本作はメタファーに満ちている。何のメタファーなのかはハッキリ分からなくても、メタファーなんだろうことくらいはさすがに分かる。 

 何と言っても、主役の美人双子姉妹。孤児だった二人は別々に成長し、方や詐欺師、方や活動家と、同じ顔して同じDNAを持っている人間でありながら、対極のキャラ設定となっている。オリエント急行内で、詐欺師のドーラは一等車に、活動家のリリは三等車に乗っている。また、この姉妹が一人の男Zを共有し(という言い方もイヤな感じだが)、Zは二人を双子とは知らず同一人物と認識している。つまり、対極のキャラでありながら、融合してしまう。

 最終的に、Zは双子の姉妹と認識したかのように思えるが、その辺も曖昧な描写だから、本当のところは分からない。Zは奔放なドーラのつもりで、ウブなリリをレイプまがいに抱くのだが、これが別人だったと分かった(かも知れない)ところで、Zは何とも言えない戸惑いの表情を浮かべている。まあ、そらそーだよなぁ、、、。この、双子が1人の人間を共有するってのは、クローネンバーグの『戦慄の絆』や、オゾンの『2重螺旋の恋人』でもあった。本作はこの2作とは全然テイストは違うが、共有された人間の戸惑いや嫌悪感は、やはりZからも見て取れる。

 タイトルに“20世紀”とあるように、本作では、これから来る20世紀を迎える人々・社会を描いていて、それは一応、夢も希望もあるように描かれている。しかし、このZの戸惑いがある意味象徴的なんだと思うが、漠然とした不安も当然そこには潜んでいるはず。

 そしてこの姉妹が成長した後の話は、幼いリリとドーラがそれぞれに見た夢物語とも受け取れ、『心と体と』では、別々の所で眠る男女が同じ夢を見るという“異床同夢”の話だったが、本作はまさしく“同床異夢”の話とも言える。

 正直なところ、『心と体と』の方が、ストーリー的には何倍も分かりやすい。……というか、描写がストレートなので見ていて悩ますに済む。

 

◆動物がいっぱい

 この監督は、作品に動物を登場させるのがお好きなよう。『心と体と』では鹿が重要な役割を担っていたが、本作では動物が色々と出てくる。ロバ、犬、猿、豚、伝書鳩、、、。

 中でも、猿(というかオランウータン)は人間の言葉を喋る。しかも、結構そのシーンは唐突なので、ビックリする。何で自分がこんな檻に入れられるハメになったのかを、自分で説明し始めるのね。正直なところ、前後の脈絡は意味不明。

 また、重要なシーンではロバが出てくるのだが、ロバが出てくると姉妹は必ずいずこかへ導かれるようになっている。夢の世界であったり、不思議な鏡の世界であったり。ロバはハンガリーでは愚かの象徴らしいが、本作での扱いを見ると、決して愚かを表わしているようには思えない、、、。むしろ、未来を暗示する存在のように思ったのだけど。ロバを見ていて、そういえば、クストリッツァの映画でもロバが象徴的に出てくることがよくあったよなぁ、、、などと思い出していた。出番は多くないが、肝心なときに、なぜかそこにいるのがロバ。そして、本作と同じように、誰かを導いていくのだよね。

 個人的には、ロバは、“愚か”ではなくて、“哀しい”という印象。馬ほど力はなく、身体も大きくなく、なのにその小さな身体に見合わぬ荷物を背負わされて人間にこき使われている、、、、みたいなイメージ。童話に思いっきり影響を受けていますな、多分。本作では、“無垢”の象徴かという気もする。

 犬も、実験用の犬(パブロフの犬)だし、本作に出てくる動物はみな、人間に“利用されている”ものばかり。20世紀=人間のエゴ全開の時代の犠牲者たち、とでも言いたいのだろうか。少なくとも、あまりハッピーな感じはない。

 

◆ババア発言の先輩が出てくるゾ!

 あと、本作の特徴的なのは、ジェンダーについてフォーカスしていること。それも、かなりストレートな描写で、ちょっと驚いた。

 フェミニストの集会のシーンがあるんだけど、それに参加しているのは活動家のリリ。で、そこでオットー・ヴァイニンガーという実在の哲学者による講義がされるんだが、その内容が、もうまさしく女性蔑視・女性嫌悪全開なんである。このオットー・ヴァイニンガーはユダヤ人で、23歳の若さで拳銃自殺しているということだが、「性と性格」という本を著しており、今日では批判に対象となっているんだとか。彼の主張は、つまるところ、女なんてのは所詮“産む”ぐらいしか能がないんだ、ってこと。母親か娼婦か。だから、産まない女は娼婦やってろ、“産めない売れない”になった女はお役御免だ、、、ってこれ、大分前に、石原〇太郎がほざいていたことと同じだわね。

 Zがリリとドーラを同一人物と認識してキャラが融合してしまったように、女性像もそんな単純なものじゃないんだということを言いたいのは、非常に強く伝わってくる。リリがヴァイニンガーの講義を受けた後、工場の高い煙突(ペニスの象徴でしょ、多分)に上って行き、アジビラをまき散らすのとかね。

 まあ、マチズモってのは、21世紀の今も根強く残っていて、恐らく、22世紀にも残っているんじゃないかね、、、と私は思っている。最近では、だいぶ性の境界そのものが揺らいでいるので、案外早く解消できるのかも知れないが、グローバリゼーションと同じで、境界が曖昧になればなるほどアイデンティティがフォーカスされるという逆進が起きるものでもあり、マチズモに執着する男は少なくないだろうと見ている。女自身がそれを良しとしてしまっている部分もあるしね。今世紀残り80年くらいで変革できるとは、ちょっと思えない。

 ……とまあ、ほかにもあれこれ色んなことが盛りだくさんな内容の本作なんだけど、それをどれだけ理解できるかは、あなたの知識量に懸かっています。私にはこれくらいが精一杯でござんした、、、ごーん。

 

 

 

リリとドーラ(とその母親)を演じたドロタ・セグダが可愛い!

 

 

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2 コメント

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知らなかった・・ (フキン)
2019-04-27 14:51:40
こんにちは!!
この作品、「心と体と」の監督作品だったんですね!!すねこすりさんの記事で知りました!!

なので、ノーマークでした!!
「心と体と」がなかなか私好みだったので
是非,観たい!!

主演女優、結構な年齢ですね。
写真が奇麗で、若い女優かと思ってました。

いよいよ始まったGW!!!

すねこすりさん、どこかお出かけされる??
京都は本日、朝から何気に風が強く工事現場のおっさんは看板を押さえてます・・笑
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これが長編デビュー作とは! (すねこすり)
2019-04-28 01:18:22
フキンさん、こんばんは!
そーなんですよ、あの監督なのです。私もチラシでたまたま見掛けて、慌てて見に行った感じです。
『心と体と』よりも、もっと暗示的で、ちょっと??な部分が多いですけど、星のささやきとか、若干少女趣味的な感じもあります。
是非ご覧くださいまし!
10連休は、ほぼ引きこもりです~。フキンさんはどうお過ごしなのでしょう?
京都は大変な人混みでしょうね、、、。おっさんはいつまで看板を押さえていたのかしら?
東京は、連休初日は冬を思わせる寒さでしたが、明日(もう今日ですね)は、晴れて暖かくなるらしいです。
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