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「江戸繁昌記 ニ篇」 38 神明6

(アメリカセンダングサの花に止るツマグロヒョウモン)

散歩道で見つけた。アメリカセンダングサは、晩秋、その種が服にくっ付いて難儀な雑草である。ツマグロヒョウモンはタテハチョウの一種、その名前に特徴が表されている。

「江戸繁昌記 二編」の解読を続ける。

夜、已(すで)に闌(たけなわ)なり。翠帳深く下して、錦衾一たび暖かなり。酒滄(さ)め、香燼(もえのこ)す。微音愴哀、歌いて曰う、
※ 翠帳(すいちょう)- 緑色のとばり。
※ 錦衾(きんきん)- 錦で作ったりっぱな夜着。
※ 愴哀(そうあい)- 悲しみに打ちひしがれる。


  爝火愈熾影愈昏  爝火愈々(いよいよ)(おこ)して、影愈々昏(くら)し。
  始覺烟波湧月痕  始めて覚う、烟波月痕を湧かすを。
  自哀鵜舟火已暗  自(おのずから)哀れむ、鵜舟(うぶね)火、已(すで)に暗きを。
  胸中暗夜迷乾坤  胸中の暗夜乾坤に迷う。
  離別誰知多少恨  離別誰か知る、多少の恨。
  夜江頭欲断魂   夜江頭、魂を断んと欲す。
※ 爝火(しゃっか)- かがり火。たいまつの火。
※ 烟波(えんぱ)- もやの立ちこめた水面。また、水面が煙るように波立っているようす。
※ 月痕(げっこん)- 明け方、ほの明りの中に残っている月の痕跡。夜明けの月影。
※ 暗夜(あんや)- 暗い夜。やみよ。
※ 乾坤(けんこん)- 天と地。天地。


歌い畢(おわ)りて、一酌、盃を仰ぎて、愁腸に澆(そそ)ぎ送り、涙して攬(と)りて、に謂いて曰く、且(あした)の盟、寒し。嗣(つ)ぎて兄弟なることを得ず。これを何の如からんや。
※ 愁腸(しゅうちょう)- うれえ悲しむ心。愁心。
※ 郎(ろう)- おとこ。夫、または、情夫。


僕、将に遠く帰らんとす。鯉書雁信、数字を惜むこと莫れ。仮令(たとい)とも、旧府(クニモト)に、硝子(ビイドロ)を倒(さかさま)にするの女有るも、弓矢八幡(邦俗の誓言)、(自分)が色に易(か)わらじ。明年瓜時、僕復た果して来たらん。布帛を装せんや。楮墨を齎(もた)らさんや。
※ 鯉書雁信(りしょがんしん)-「鯉書」も「雁信」も手紙、書状のこと。「鯉書」は、鯉の中から白絹製の素に書かれた手紙が出たという故事による。「雁信」は、漢の蘇武が匈奴に捕えられたとき、雁の足に手紙を結び付けて飛ばせ、天子に届けさせた故事による。
※ 弓矢八幡(ゆみやはちまん)- 弓矢の神である八幡大菩薩。(武士が誓約するときの語)神かけて。誓って。
※ 弟(てい)- 自分自身を指す謙称。
※ 瓜時(かじ)- 夏の異称。
※ 布帛(ふはく)- 織物の総称。きれ 地。
※ 楮墨(ちょぼく)- 紙と墨。転じて、文字や詩文。
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