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「江戸繁昌記 ニ篇」 45 箆頭舗3

(庭のキンモクセイの花)

「江戸繁昌記 二編」の解読を続ける。

二十八銭、客の好みに従う。貴客と雖(いえど)も、加うるに四銭を以ってするのみ。混堂(湯屋)五節銭を収むる外、菖蒲、忍冬、桃湯など、別に為すが、銭を貪(むさぼ)る工風如きもの無し。
※ 五節銭(れい)- 人日(1月7日)、上巳(3月3日)、端午(5月5日)、七夕(7月7日)、重陽(9月9日)の5つを五節句といい、「節句銭」は五節句に借家人から家主に届ける金品のことをいう。湯屋にも同様の習慣があったのであろうか。
※ 忍冬(すいかずら)- スイカズラ科のつる性半常緑木本。山野に自生。葉・茎・蕾つぼみは解毒・利尿作用があり薬用とする。


ひとり年頭剃り、客皆、賀銭を投ず。これを初剃(ハツズリ)と謂うに、貧者と雖も一、二を投ずるより、(居士の頭、一、二緡の列に在り)豪客、数銀を、擲(なげう)つに至る。劇舗、銀銭積みて、親方の身に等し。
※ 緡(さし)- 銭の穴に通す細い縄。普通、九六文を一差しとし、百文として扱った。
※ 劇舗(げきほ)- 忙しい店。流行っている店。


好みに従う件々も麻結(まげ)は、並みに、庶人の頭髪に係る。士大夫に至るは、咸(み)な多髪大束、世、これを目して、糞船束藁(クソブネノタワシ)と曰う。乃ち、黔(くろ)首にして、多髪生(はえ)る者有らば、人戯れ呼んで、春画世子(マクラゾウシノワカトノ)と為す。
※ 件々(けんけん)- あのことこのこと。条々。
※ 士大夫(したいふ)- 中国で、士と大夫。のち、知識階級や科挙に合格して官職にある者をさした。ここでは、富裕層くらいの意。身分的な呼び方ではない。


大束は則ち、家にその人有り。この舗のよる所に非ざるなり。聞く、篦舗、今、額内に在る、九百六十四戸中、社を分つこと四十八、額外なる者は、無慮二千余ると。則ち、内外を通して、その数、凡そ三千戸、舗、業に繁きを以って、殿最、差を為す。その値、率(おおむ)ね、二、三百金より、階して一千金に上ると云う。且つ、毎舗、別に一、二人を遣わして、戸を追い、業を售(う)る。これを循篦(マワリ)と謂う。
※ 家にその人有り - 髪結い床には来ないで、家にいて髪結いが出張する。
※ 額内(がくない)、額外 - 二十八銭の額を取る者とそれ以下の者。
※ 無慮(むりょ)- おおよそ。ざっと。
※ 殿最(でんさい)- しんがりと先頭。
※ 階して(かいして)- 段階的に。
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