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「壺石文」 下 12 (旧)一月十七日(つづき)、十八日、十九日~

(畑のあだ生えのニラ)

裏の畑の柿の木の下に、あだ生えのニラの群落がある。何時植えたのか、今では記憶にないが、食べることもなく、放置してあった。最近、思い付いて葉を切ってきて、野菜炒めに入れて食べてみた。お遍路で高知あたりだったか、ニラを栽培している農家があった。そこの立派なニラには足元にも及ばないが、しっかりニラの香りがした。

畑で栽培している以外に、このようにちょいとつまんで料理に加えられるものが、畑にはいくつかある。青紫蘇、ミョウガ、ノビル、小ネギ、サンショウ、アスパラガス、新たに、タラの木など。これからも色々種類を増やして、料理に使ってみたい。

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「壺石文 下」の解読を続ける。

三つ葉、四つ葉言うも更なり。罷り申して、利付を経て青麻を指してく。何とかや云いけん山里に至りけるに、寒さの耐え難かりければ、湯あみして時を移しぬ。日、暮れ果てゝ、たど/\しかる山路の雪を踏み分けて来るに、岩ヶ根に躓(つまづ)き、谷にまろび(たふ)れて、危うき事限りなし。辛うじて、神主対馬が家に至りて宿りける頃は、ばかりなりけり。
※ 三つ葉、四つ葉(みつばよつば)-〔催馬楽(さいばら・雅楽の種目)の歌詞。「三葉四葉の殿造り」〕立派な建物が何棟も建ち並んでいる都の様子を表現した句。
※ 言うも更なり(いうもさらなり)- わざわざ新たに言う必要もないほどだ。もちろんである。
※ 利府(りふ)- 現、宮城県宮城郡利府町。
※ 青麻(あおそ)- 現、宮城県仙台市宮城野区岩切字青麻沢。青麻神社がある。
※ まろぶ(転ぶ)- ころぶ。
※ 戌(いぬ)- 戌の刻は午後八時を中心とする約2時間。


十八日、搔き暗し雪降りけるに、こゝの御社に詣でて、仙台にぞ至りける。もと宿りたる能登ノ守が家にぞ物しける。
※ 搔き暗す(かきくらす)- あたり一面を暗くする。

十九日、拾い得て持たりける、さざれ石を伊勢子がり遣るとて、包み帋(紙)に書き付ける歌、
※ さざれ石(さざれいし、細石)- 小さな石。

   光ある 君が言の葉 掛けて見よ
        黄金花咲く 山苞
(やまづと)ぞこれ
※ 山苞(やまづと)- 山里からのみやげ。

かの家に至りて、春の始めの寿(ことほ)ぎ申し、盃のついでに、

   冬枯れの その色もなく 武蔵野の
        一本薄 春めきにけり

※ 一本薄(ひともとすすき)- カヤツリグサ科の多年草。葉は厚くて堅く、別名シシキリガヤ(猪切茅)ともいう。葉が厚く堅くざらついて、イノシシの肉でも切れるという意味である。

去年訪(とぶら)えりける時は、まだこの里にようも住み慣れざりけるげにや、あいなう故郷恋しげに見えて、心苦しげなりつるを、今はよう/\慣れ/\て、終(つひ)の泊りと、こゝに心落ち居ぬなめり。腹をふくらか(ふくよか)になりて、いと嬉しげなり。
※ あいなう - わけもなく。
※ 心苦しげなり(こころぐるしげなり)- 気の毒そうだ。痛々しい。
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