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「壺石文」 下 1 (旧)十一月十日~

(大代川土手のスッポン)

キリギリスが鳴き始めた散歩道の大代川の土手、アスファルト道のすぐ脇の草地に、大きなスッポンを見つけた。何でこんなところにと思った。想像するに久々の大雨に流れを増した大代川から避難したつもりが、アスファルト道の手前で立ち往生といったところであろうか。流れも平常に戻ったから、早く川に戻らないと、こゝは危険だと思った。

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今日より「壺石文 下」の解読を始める。

十一月の十日ばかりの事なりけり。七十に老い舌出でて、波の皺(しわ)溺ほれる海士どもの、三、四人辺(ほとり)より来集いて、何事ならん、誼み(さえず)り、笑い覆るを聞けば、小雨降る時、茶の木のもとを、すっほうかむりして過ぎぬる心地ぞすると、わななき言いて、かたみに突きじろう
※ 老い舌(おいじた)- 老人の舌。歯の抜けた老人のしまりのない口から見える舌。
(参考)「百年(ももとせ)に 老い舌出でて よよむ(よぼよぼになる)とも
我は厭わじ 恋は益すとも」(万葉集 大伴家持)
※ 溺ほる(おぼほる)-(水に)溺れる。
※ 誼み(よしみ)- 親しい間柄から生じる情や好意。親しみ。
※ 笑い覆る(わらいくつがえる)- 笑い転げる。
※ すっほうかむり - すっぽうかぶり。三角に折った風呂敷を前に垂らしているかぶり方。
※ わななく(戦慄く)- ざわざわする。
※ かたみに(互に)- 互いに。かわるがわる。
※ 突きじろう(つきじろう)- 互いにひざや肩などをつつき合う。


頭付き容体猿楽(さるごう)めきて、かたはらめおこがましようあらんと思い巡らすに、この家刀自の、物して呑ませたる茶の煮涸らしにて、味わいの無かりけるを、淡め憎みて言うなるべし。
※ 頭付き(かしらつき)- 頭のようす。髪の形。
※ 容体(ようだい)- 姿・形。かっこう。
※ 猿楽(さるごう)- おどけ。たわむれ。じょうだん。
※ かたはらめ(傍ら目)- わきから見たところ。
※ おこがまし(痴がまし)- いかにもばかばかしい。ばかげている。
※ ようあらん - ようあらむ。何か理由があるだろう。
※ 家刀自(いえとうじ)- その家の主婦。
※ 煮涸らし(にがらし)- 出がらし。
※ 淡め憎む(あわめにくむ)- 欠点やあやまちを軽くとがめたり、非難したりする。


(なにがし)の娘らが雪を愛でて、柳の花の、風になびけるが如し、と言いけん言の葉には、劣り様なれど、塩と見しには勝れりけりと、ふと思い、よそえられて、をかしかし。こを持て思えば、形こそ荒磯(ありそ)隠れの藻くず(もくず)なれ、心は波の花にもなさばなりなんと見ゆめり。
※ 柳の花の、風になびけるが如し -(諺)「楊柳の風に吹かるるが如し」しだれ柳が風に吹かれるように、何事にも逆らわないこと。
※ 劣り様(おとりざま)- 劣っていること。また、そのさま。(ここでは、形容が当を得ていないこと。)
※ 塩と見し(しおとみし)- 雪を「波の花(塩)」と見る。
※ よそえる(比える)- 他の物にたとえる。なぞらえる。
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