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「丸尾文六報恩碑」を読み解く その2

(丸尾原水神宮の丸尾文六報恩碑)

朝から、一日、掛川図書館文学講座の文学散歩で浜松の家康関連の旧跡を訪ねた。

「丸尾文六報恩碑」の解読の続き。
後、益々鋭意督励、その徒、与(くみ)し、寝食を同じうし、東奔西走、拮据(う)まず。特に宇治、狭山の茶園に就き、視察研究、数万金を投資す。同族、文七、文吉二翁、また能くこれを助く。未だ数年、曠野一帯茶園と化さず。
※ 拮据(きっきょ)- 忙しく働くこと。仕事に励むこと。
※ 曠野(あらの)- 荒野。雑草が生い茂って荒れた野。


丸尾開墾の名を天下に聞くや、(明治)十一年、聖駕西巡岩倉右府賞詞を伝えしめ、曰く、窮民を助け、茶園を開き、道路を修(なお)し、物産を興し、邦国殷富を謀(はか)る。洵(まこと)に奇特なり。
※ 聖駕(せいが)- 天子の乗り物。天皇の巡幸をいう。
※ 西巡(さいじゅん)- 明治11年、明治天皇、北陸東海道地方巡幸を指している。
※ 岩倉右府(いわくらうふ)- 岩倉具視。明治維新十傑の一人。公家。政治家。当時右大臣(右府は中国の表現)
※ 賞詞(しょうし)- ほめる言葉。賞辞。賛辞。
※ 邦国(ほうこく)- くに。国家。
※ 殷富(いんぷ)- 栄えて豊かなこと。


明年十月、始めて製茶共進会を横浜において開くなり。一等賞銀百ドルを得、即ち、分与の墾民、和歌を詠む。曰く、
※ 墾民(こんみん)- 農民。

    富士の根の 高きほまれを 布引の 原の木の芽に 受け得つるかも

十四年、内国勘行博覧会に一等有功賞を受く。十六年、製茶共進会に一等賞、金盃を得る。十七年、藍綬褒章を賜う。二十三年、勧行博覧会に名誉賞金牌を受く。二十六年、閣龍博覧会に金牌を得る。
※ 藍綬褒章(らんじゅほうしょう)- 公衆の利益、公共の事業で事績著明な人に 授与される褒章。綬(リボン)は藍色。
※ 閣龍(コロンブス)博覧会 - コロンブスのアメリカ大陸発見400周年を記念して催されたため、シカゴ・コロンブス万国博覧会とも呼ばれる。


先是、本邦製茶、外人の壟断する所と為る。大人これを歎き、中央会議所を起し、その議長に為り挙がり、且つ再製所を興し、海外に直輸す。販茶舗を米国の桑港(サンフランシスコ)に尋設し、これを富士商会の祖と為す。
※ 先是 - 最初は。初めは。もとは。
※ 壟断(ろうだん)- 利益や権利を独り占めにすること。


二十九年五月一日、病を以って歿(ぼつ)す。享年六十有五。池新田青谷先、塋(墓)域に葬る。仏謚(いみな)、日光徳院文翁賢章居士。
※ 仏謚(ぶついみな)- 戒名。
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