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「丸尾文六報恩碑」を読み解く その1

(賑やかな夕景)

午後、掛川古文書講座に出席した。ついでにそばの掛川城公園で漢文の石碑二基の写真を撮ってきた。

さて漢文石碑の解読であるが、続いて、もう一基、「仲田源蔵報恩碑」と同じ、丸尾原水神宮境内にあって、内容的にも重なる部分もある「丸尾文六報恩碑」を読み解こうと思う。

報恩碑 
丸尾大人報恩碑          貴族院議員従三位勲四等前田正名題額
※ 大人(れい)- 学者や師匠を敬っていう語。先生。
※ 前田正名(まえだまさな)- 明治・大正期の官吏、政治家。鹿児島県生。生涯を在来産業の育成に捧げ、〈布袋の農相〉と呼ばれた。元老院議官・貴族院議員等を歴任する。
※ 題額(だいがく)- 額に漢詩などを書くこと。


大人姓源(もと)は丸尾氏、名は清謙、通称文六、号松斎。遠江国小笠郡池新田村の人。家世素封として、考え清く、君の夙志を孚(はぐく)み、殖産を諭(さと)して曰く、我が辺の地、沃饒にして、茶に適し、宜しきを以って、斯業、則ち国利民福なり。
※ 家世(かせい)- 代々続いてきた家柄。
※ 素封(そほう)- 大金持ち。財産家。素封家。
※ 夙志(しゅくし)- 幼少・若年のころからの志。
※ 殖産(しょくさん)- その国や地方の生産物をふやすこと。産業を盛んにすること。
※ 沃饒(よくじょう)- 地味が肥えていて作物がよくできること。肥沃。
※ 斯業(しぎょう)- この事業。この分野の事業。
※ 国利民福(こくりみんぷく)- 国家の利益と国民の幸福。


大人能くその志を紹(つ)ぎて、遂に大成す。その業、人称して曰く、茶業王。、布引原有志者来りて曰く、原の上、数十戸民。烟(けむり)漸く稠(しげ)く、この実、大人の仁恵に頼る。因って、建碑を欲す。以って高恩に報ず。撰文を余に請う。
※ 頃(ころ)- この頃。最近。
※ 仁恵(じんけい)- 思いやりの心と、恵み。
※ 撰文(せんぶん)- 碑文などの文章を作ること。


大奨賛(称賛)の叙、その梗概曰く、王政復古の三年、官始めて大井河渡船を許す。両岸、人を渉(わた)すを以って業となす者、百余戸、皆活路を失う。官これを憐れみ、東遠原野二百町、金一千円を給う。以って生業に就く。然るに民氓離散、留り居る者僅か三十三戸、大人(文六)独り、百余町十七戸民を監督し、家屋と農具を給う。
※ 梗概(こうがい)- あらまし。大略。
※ 民氓(みんぼう)- 人民。


始めて開拓に就くは、実に明治四年六月八日なり。既而、茶園数十町を開き、毎戸に、宅地五畝、白田二反を給う。以ってその堵を安ず。静岡藩、大いにこれを賞し、時服一領を賜る。
※ 既而(すでにして)- やがて。間もなく。
※ 白田(しろた)- 畠。(畠の文字を二字に分ける)
※ 堵(と)を安ず - 安堵する。垣根の内の土地で安心して生活する。
※ 時服一領(じふくいちりょう)- 時候にあった衣服を一そろい。

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