2016年9月3日(土) 2:00pm サントリー
柴田南雄 コンソート・オブ・オーケストラ 15′
シュトラウス 4つの最後の歌 3′5′6′7′
ソプラノ、清水華澄
Int
エルガー 交響曲第1番変イ長調 19′8+12+12′
山田和樹 指揮 日本フィルハーモニー交響楽団
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前日(2016.9.2)に続いて今日も。金土公演のうち二日目のほうの定期席もってますので今日が自分的にはいつも席。
シーズン開幕のこのプログラム・ビルディングの良さや演奏の事は前日かいつまんで書きました。
が、やっぱり、二日続けて聴くと理解が深まる。
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最初の柴田南雄のコンソート・オブ・オーケストラは、二日続けて聴くと目から鱗が20枚ぐらいはがれ落ちる。作曲のスタンスは昨日書いた通りだと思う。
流れは、
Interlude1―混沌1(8バー)―i2―混沌2(10バー)―i3―混沌3(17バー)―i4
Interludeと勝手に書いてしまったですが、混沌1の前から間奏曲の雰囲気が濃厚。最後も間奏曲で終わる感じ。
混沌と書いてしまったのは、整理された混沌とでも言うべきもので、ヤマカズの指の指示はバー数だと思いますが、3回あり。1回目が8バー、2回目が10バー、3回目が17バーと見ました。数字は特に意味なく増加していると思います。ヤマカズの指揮も長さが全く一定していませんので、若干アドリブ的なところがある。
この「整理された混沌」、混沌と言っているのはプレイヤー個々人がトーンクラスター風味に別々のプレイをしているという話です。バラバラな世界を遠くから見るとなにかまとまって見えてくる、そんな感じ。
Interlude1はブラスの絶叫からスタート。混沌1の直前はウィンド・アンサンブルによる模索から混沌が始まる。そしてブラスに広がっていく、比較的穏やかな混沌。ヤマカズ左指は8つで終わり通常の振りに戻る。
混沌2への入りは今度は弦によるもの。混沌1でウィンドから弦のほうに広がりをみせたその弦の雰囲気で混沌2となる。ヤマカズの左手は握りこぶしの10バーまで。混沌1,2は出のインストゥルメントこそ異なれ同じようなアトモスフィアですね。
クライマックスと呼んでいいのかどうかわかりませんが混沌3への入りは、フルートソロからすぐにウィンド全般に広がりをみせるのはシェーンベルクの無調のあの灰色のサウンド。ウィンド全般からホルンへ。鬱な響きがたまらない。そして全楽器が灰色に。クレシェンドされた音圧はさらに増し、17バーを数えたところで引き伸ばし長めの頂点。そして最後のi4の通常棒となり、音楽はあっけにとられるうちにすぅっと弱音終止。
柴田の切れ味鋭い音楽、極みですね。
昨晩も書きましたが、曲と内容が一致した納得のタイトルでコンソートのオーケストラへの拡大系が見事過ぎる。
日フィル、ヤマカズの演奏は圧倒的で、とにかくわかりやすい。ブラスセクションは鋭利と柔軟、両方を備えたもので美ニュアンスに溢れている。精緻な弦は細やかにしてナイーヴ、神経細胞でも見ているような具合だ。鮮烈強烈なパーカス。最後の混沌3の大音響のバスドラにはぶっ飛びました。
オケ全体に、しっかりした室内楽アンサンブルからの広がっていく腕の確かさを感じました。曲にふさわしいものです。お見事な演奏。
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昨晩、横の席で聴いたのでよくわからなかった4つの最後の歌、清水さん。
ギネス・ジョーンズとまではいきませんがちょっとぶらさがり傾向がある。正しいピッチに持っていくまでに少し時間がかかる。このような歌い具合は他の方でもたまに見かけます、男でも。
よくわからないのですが、フラットなあたりから少しずつずらしていって正しいピッチにもっていったほうが歌いやすいのでしょうか。
あまり大げさなフラット感はありませんが、正常ピッチ戻った後のフレーズ最初の音にスラーがかかって角が無い丸みをおびたニュアンスになる。個人的に少し気になるところです。
弱音のデリカシーは素晴らしい、ぶらさがるところもなくて美声がオーケストラとブレンドして美酒に酔っているようなえもいわれぬような目まい。あと、清水さんは場の空気を変えることが出来るというか支配するというか、独特の雰囲気を作り上げてくれますね。オペラモードの凄さ感じました。
この雰囲気づくり。オーケストラの完全伴奏越えのスーパー・ビューティフル・パフォーマンスが歌に完ぺきに寄り添う。
第3曲、床につくまえに。ヴァイオリンのソロの美しさ。そして静寂が支配するシュトラウスの筆舌に尽くし難い美しい音楽、それを見事に表現するオーケストラ。圧倒的でしたね。歌い手はただ茫然と立っているだけで絵になる。最高の瞬間でした。
昨晩同様、おしまいの高音のところでホルンが少し転がってしまいましたけれども、2曲目のソロは立派でしたし、まぁ、もはや、何も言うことは無い。
このシュトラウス4曲、日フィルさん、出色の演奏でした。!!
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後半のエルガー1番は昨晩と概ね同じ感想です。
ブラスは前日より締まっていて隙間が無い吹奏でした。第3楽章の瞑想は増して静かで美しい演奏となっておりました。
ヴィオラの1プルト内側の髭のちょっといかついさんなどが、このエルガーから一番後方のプルトに移動していたのは第1楽章のコーダあたりからある弦による別アンサンブルのためと思われます。ヤマカズさんがあとで立たせていたのはヴィオラ2人、チェロ2人だと見受けましたが、ほかの弦もこの別アンサンブルに加わっていると思います。メイン主題の別演奏というか分離したアンサンブル、全体の音がでかいのでよくわかりませんでした。
以上3曲、二日にわたり心ゆくまで楽しめました。
ありがとうございました。
おわり