河童メソッド。極度の美化は滅亡をまねく。心にばい菌を。

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2177- 柴田南雄、コンソート、シュトラウス、4LS、清水華澄、エルガー1番、ヤマカズ、日フィル、2016.9.2

2016-09-02 23:34:42 | コンサート

2016年9月2日(金) 7:00pm サントリー

柴田南雄  コンソート・オブ・オーケストラ 16′

シュトラウス  4つの最後の歌  3′5′6′7′
  ソプラノ、清水華澄

Int

エルガー  交響曲第1番変イ長調 19′7+13+12′

山田和樹 指揮 日本フィルハーモニー交響楽団


シーズン開幕、日フィルのプログラムは絶品です。これ以上ない素晴らしいもの。
日フィルは今年、創立60周年の節目。その最初に生誕100年、没後20年、やはり今年節目の柴田南雄の曲をもってきた。いいビルディングで意味のあるものです。
柴田の曲は昔の録音の掘り起し記念碑的なものもいいが、オーケストラの腕が飛躍的に向上し、さらに録音技術もよくなった今この時代に鳴っている音の方が昔のそれよりよっぽどわかりやすい。
柴田の曲は合唱や歌曲はとりあえず横に置き、室内楽的なコンパクト編成のもので鳴りの鋭い曲が峻烈で面白い。今日のコンソートはそのタイトルからして、室内楽的な響きをオーケストラ規模まで広げた作品だと思います。柴田の室内楽は楽器の組み合わせが作品により色々とあって、それらを集め合わせた集合体の合奏という感じ。個々の楽器を集めても合奏となるのでしょうが、室内楽アンサンブルの単位の楽器群を集めた、つまりアンサンブルから合奏へというイメージ。曲は単一の楽器で奏されることはほとんどなくて(フルートなどに少しある)、アンサンブルの束で動く。特にブラスの鋭さは金管六重奏「エッセイ」を思い出させるものがありますね。ブラスアンサンブルの迫力はエッセイの上をいきます。
そして作曲のもう一つのポイントとして、未知の語り口を開拓する冒険は避け、これまでに定着していると思われる奏法、語法の枠内で作った、とある。確かに全ヨーロッパの響き満載ながら、それでも1973年当時は斬新なものであったと思う。今聴けば当時流行の素材の活用という気はするがそれでもやっぱりフレッシュですね。
ブラス、パーカスのアンサンブルとしての活躍が耳をひく、輝く響き。そして弦を中心にした多彩な手法による響きのバリエーション。整理された混沌。難解というものではなくて素材の活用が見事といったところか。指でのバー指示が3回あり(たしか)、最後のところはかなり長め、16型の弦60人全プレイヤー違うことしていて、さらに他楽器も加わって混沌としていき、音圧がどんどん上がっていく。指図が通常の指揮に戻ったところで静寂が訪れ、あっけなく終わる。切れ味の鋭い柴田語法を楽しめました。柴田の節目イヤー、もっとたくさんやってほしいですね。

次のシュトラウス。
この前(2016.8.23)、ヘーバー読響ヴァイグレを聴いたばかり。今日は清水華澄さんの絶唱を。
シュトラウスのオーケストラ伴奏付きの歌ではやっぱりこの曲が何度聴いてもマーベラスで絶品。ヤマカズも清水さんのあとコンマス立たせ、ホルンのプリンシパル立たせてましたから、曲のツボはどこかなんていう言葉もおこがましい、といったところなんでしょうね。
今日の席は横だったので今一つ聴こえてくるものが断片的でしたけれども、オーケストラへの溶け込み具合が進行するにつれて徐々に良くなっていった。高音はオーケストラの音にブレンドさせるかそれともかい離させていくのか。ハイ音は少し気張り気味で歌いこむほどに溶け込み始めた。土曜日、正面席で聴きますので楽しみですね。

後半のエルガー。
パルジファル風な序奏に続き提示部、第1,2主題とも序奏の節が入り込む。結局この曲は序奏の節で出来ているとあとで思うわけですが、それはそれとして、序奏から提示部へのモード切替はすっきりしている。柔らかい日フィルのサウンドが角を立たせることなく滑らかに推移。展開部は提示部と異なりかなり激しいものでスピード感もある。主題間のコントラストよりはむしろソナタ形式の中での動きのメリハリコントラスト感が印象深い。
エル1はイギリス・ブラバンみたいなブラスセクションの咆哮が魅力的で、展開部からさらに過激さを増す。オーケストラの全咆哮はオケサウンド大好きにとってはこれ以上ない醍醐味なわけです。結構ラフな鳴りで、詰めるところはもっと詰めなければならない。
第2楽章は激しい音楽ですけれども、1楽章の余韻を押しとどめるような具合ではなく、すでに次の緩徐楽章のムードがたれこめている。ヤマカズのエル1真骨頂はこの3楽章緩徐楽章でした。
切れ目なく静かに歌う。2楽章最後の急激なリタルダンドはこの緩徐楽章を既に食っている。それは余韻というにはあまりに美しい音楽の開始です。味わい深い楽章です。
ヤマカズ棒はよく歌う。ストリングセクションまで息を吸い込むときの吸いぎわ、みたいなものが出ていて、呼吸にパースペクティヴを感じるという稀な極美ニュアンス。音楽が呼吸している。いやぁ、お見事というしかない。オケにあすこまでさせるヤマカズ棒はたいしたもんだ。素晴らしい楽章でした。
第2,3楽章はもともと切れ目ないが終楽章へもそのまま突入。暗雲漂うような序奏から始まる。でも提示部以降、あとで考えるとあれは何だったのかしらというぐらい暗雲の無い明るい音楽が快走。パルジファル動機が華々しく回帰する。ヤマカズ棒はもはや抑えることをせず一気に3連符刻みが交錯するブラスセクションを押しとどめることもなく開放フィニッシュ。クライマックスでのパースペクティヴ感もマックス。
静かさから派手な爽快感まで盛りだくさん、味わい尽くしました。
ありがとうございました。
おわり