河童メソッド。極度の美化は滅亡をまねく。心にばい菌を。

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OCNから2014/12引越。タイトルや本文が途中で切れているものがあります。

2193- ジークフリート、カミタソ、オニール、リンドストローム、インキネン、日フィル、2016.9.27

2016-09-27 23:00:10 | コンサート

2016年9月27日(火) 7:00-9:30pm サントリー

ワーグナー ジークフリート、excerpts 第3幕 7+46′

Int

ワーグナー 神々の黄昏、excerpts プロローグ+第3幕 4+20+5+7+7+17′

キャスト(in order of voice’s appearance)
ジークフリート、サイモン・オニール (T)
ブリュンヒルデ、リーゼ・リンドストローム (S)

ピエタリ・インキネン 指揮 日本フィルハーモニー交響楽団


昨日今日とエポックメイキングな連続ナイト堪能です。
今日はインキネンの日フィル、首席指揮者就任披露演奏会。豪華キャストロール2名を招いての一発公演。
このての公演で昔からありがちな復活公演ではなく、指揮者が自らをうらなうビッグな演目。前任者をないがしろにしたような復活公演などというものは特に日フィルさんの場合は、あたりまえのように、そんなことできませんですよね。偉大な前任者でしたから。就任で復活公演はおこがましい話ではある。
ちなみに、記憶によると、新日フィルと日フィル、分裂前の日フィル最終公演が小澤による復活であったと記憶する。最後から始まる、そのような節目でこそふさわしいプログラムだったと記憶します。

ラインゴールドで突然、劇が中断したかのように出現するエルダ、あのフレーズを強烈フォルテシモに置き換えた嵐のようなジークフリート第3幕の冒頭ミュージック。それを目印にしてそのあとのヴォータンとのやりとりは割愛、第3場を全て魅せる。作曲の経緯もあるとは思いますが、そんな経緯のことを殊更知る前から、もう、何度か書いていますが、ジークフリート全幕をみてまず感じることは、第3幕はカミタソに突き出ているという印象のことです。特にブリュンヒルデの目覚めのあたりからは1幕2幕とは別のおもむきで、カミタソに突き出ているというか、そこだけもう一個の独立楽劇としてもいいのではないかといった皮膚フィーリング、それをピックアップしたインキネン。
鉄火場1幕、憧憬と終幕への見事なブリッジ2幕、3幕3場は美しさと劇性が際立ったリングのアルプス、エベレストか。
90度越えの鋭角でさえ登り切りそうな勢いの昇り竜ヘルデン・テノールとドラマチック・ソプラノの掛け合い、堪能しました。彼ら二人とも劇への入れ込みがまず見事。まるでそこにシーン3があるかのように速攻集中。すごいですねこのアトモスフィアは!歌う前からこれだけテンション感じる演奏会なんて!

オニールは何度か聴いています。美しき音色の声質で揺れない声ですね。絶好調テノールは余裕ありまくりなんだが、ここでのジークフリートの不安をうまく表現できていました。声質が美しすぎてオーケストラに埋もれてしまうように時折感じるのはピッチが合いすぎているからかな。
イタオペ3人衆でいったらパヴァロッティの一点光源型の発声に似ていますね。豆電球のような小さい音源からストレートに伸びてくる感じ。ですので、オニールの場合も彼の正面席に陣取れば一番いいと思います。あとは今日みたいにデカいサウンドのオーケストラはバックではなく、通常のオケピットでもなく、バイロイトみたいに下に潜り込んでしまえば、オニールのテノール満喫できそうです。光るビロードのような声。
歌う前から劇の中で炎に包まれて眠るリンドストロームのコンセントレーション。抜けるような声というより、キーンな声で前に前に前進。目覚めからファイナルシーンの圧倒的歌唱までドラマチックな振幅が大きい、ハイテンションすぎて、素晴らし、過ぎて。
お二方の出来栄え素晴らしすぎて、満喫堪能。

日フィルさんはオペラ伴奏はあまりやりませんし、ワーグナーは新首席指揮者に手綱を引いてもらえばいいのだと思いますよ。オーケストラは縮こまらずまずは出来ることを全てだす。そこを始点にしてこれから色々とやっていけばいいと思います。インキネンもそんなことは百も承知していると思います。まぁ、派手な伴奏、なにはともあれ、拍手喝采。

カミタソはプロローグの頭をまずちょこっと出し。ジークフリート3幕3場の目覚めモチーフの空虚系のハーモニー。まぁ、前半プロとのつながりを感じさせます。
あとは、これでもう終わったんじゃないかと思えるような割と能天気なホルンの信号から始まる3幕からの厳選抜粋。あたまの信号のシーンは、もちろん、ありません。あすこやってしまうと、2幕ファイナルシーンでの悪だくみ三重唱がすぐに尾をひいて出てきますしね。
ワーグナー名曲集みたいな感じで進んでいきます。ここらへんはオケがアクセル全開できるので、いくら鳴らしても、過ぎることはない、という感じで思いっきり。フルオーケストラのサウンドを聴く醍醐味、快感。
演奏後の印象としては指揮者インキネンは全く目立つことなく、音楽に溶け込んでいた。この派手なあたりでも思い起こすにそのような印象です。
ここでのジークフリートは弱点の背骨のあたりをやられるので、劇的には弱々しくなってしまう。ので、聴き所はそのようなシーンでの清唱、そして力強くもはかないブリュンヒルデの絶唱ですね。結末、リンドストロームの角度を持った鋭角でストレート、見事な歌唱、自己犠牲で火照った音楽はライン川のうねりとなり、気づく間もなく、全ては炎上、そしてまた始まる。それは来年2017年5月26,27日を待たなければいけない。
素晴らしい演奏会でした。
ありがとうございました。

入場者に記念品が配られました。首席指揮者就任記念グッズ。これもありがとうございました。
大満足の一夜でした。
おわり