2014年7月13日(日)2:00pm サントリー
ベートーヴェン エグモント序曲 8
ベルント・アロイス・ツィンマーマン
トランペット協奏曲「誰も知らない私の悩み」 14
トランペット、ホーカン・ハーデンベルガー
(encore)
リチャード・ロジャース マイ・ファニー・バレンタイン 2
ベートーヴェン 交響曲第3番エロイカ 17-14-5-10
インゴ・メッツマッハー 指揮 新日本フィルハーモニー交響楽団
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メッツマッハーは前回来日時の不評をぶっとばす最高の演奏を魅せてくれました。
冒頭のエグモントからオーケストラサウンドは明らかにスキニーに引き締まっている。トレーナーとしての耳の良さが歴然としているとしかいいようがない。乗せられたメンバーもメッツは情(じょう)でドライブをかけてくる指揮者ではなく、飽くまでも音楽ありきでそれに向かって具体的に何をどう表現すればいいのか、その一点で練習からやっているんだね、というあたり理解できたのではないだろうか。前回はそこらへん、ハーディングスタイルと勘違いしていたのかもしれない。彼とはまるっきり違うタイプの指揮者であり、トレーナーとしてはメッツが上です。
このように重くならず音場が上方に芯ありで漂う演奏、最高でした。このスタイルでウエリントンの勝利とかやったら素晴らしかったに違いない。
でも、メッツらしく2曲目はシリーズもの、ツィンマーマンに流れていきます。シリーズお初から、これです。誰も知らない私の悩み。ディープで高音多湿、特に冒頭ミュートでのプレイはかなりのきつさのような気がしますが。作曲家独特の糸弾き音のような響き。ジャジーな雰囲気も。
これで60年前の曲というあたり、半分の30年前の同質な作曲家連中のずっと先を行っていたわけだ。
ハーデンベルガ―のラッパは、ツィンマーマンの意を汲んだような悩み多きサウンドをよく表現できていた。都会風な洗練されたところがありますね。つまり全部の動きやら演奏表現やら意識されたもののように思えます。
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後半のエロイカ。この日のプログラムはベートーヴェンとツィンマーマンですから、最初のエグモントを聴いた段階で解が出ていたようにも思います。
全般的に意識されたアクセントの多用、ズブズブと耽溺せず、それでいて一つ一つの音は深い塊となって響いてくる。オーケストラにエネルギーが満ち溢れ、インストゥルメントの奥行き感が素晴らしい。水平な立体感ですね。活き活きしています。
アンサンブル単位でのずれはむしろそのような面での練習がなされたということを逆にわからせてくれるという、証拠の形跡を感じないではいられない。
第4楽章の激しい序奏のあとの変奏曲ではいきなり4重奏でのバリエーションをちらつかせてくれる。変幻自在。余裕の演奏。ものすごい引締め。
いつものこのオケとは思えない、まさに豹変。
鋭さと奥行き感がうまくコンビネーションしていて聴きごたえのあるエロイカでした。
ありがとうございました。