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ザンデルリンクはほぼ一世紀近い年月(としつき)の天寿を本年全うした。2002年に引退しているのでポーディアムでの活躍は70年ぐらいか。
彼のことは詳しくないけれど、マーラーの10番全曲版の演奏では必ず名前が出てくるし、またショスタコーヴィッチ15番でも同じ。このフリークともいえるような執拗なプログラミング、なんだかよくわかる。ここらあたり自分とザンデルリンクの気性のようなものが妙にオーバーラップする。
これらの演奏は重くなく妙にさらさらしていて皮膚を音が滑っていくようでもある。最初から本質を理解していたのだろうとも思う。多様な演奏解釈の向かう先のような表現である。
流行りはじめのころは演奏すること自体が先端を行く行為であり、オーソリティとして、どうだ、という意気込みで振っていたと思う。そして時代は彼を追い越してしまい、それでもなお10番と15番を振り続けていたように思う。鋭い感性は変わらずとも時代が変遷すれば、それは取り残されたという奇妙な感覚の言葉で表現されてしまうのかもしれない。こんなことはザンデルリンクには無用なことではあっただろう。だからオーバーラップというのは私自身の自意識過剰以外のなにものでもない。
ザンデルリンクのショスタコーヴィッチの第15番第4楽章の演奏時間は20分前後、録音データでは昔からほとんど変わらない。しなやかさと静けさ、そしてパーカッションの謎めいたピアニシモによるシンポジオンでエンディングをむかえる。圧倒的な清らかさで終息をむかえるショスタコーヴィッチの人生のエンディング・シンポジオン。これ以上の演奏表現はないでしょう。ザンデルリンクは最初から最後までお見通し。
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【河童ライブラリー】
ショスタコーヴィッチ 交響曲第15番
クルト・ザンデルリンク 指揮
河童ライブラリーです。ほかにもあるかもしれませんが、自分でもっているものだけ書いておきます。
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1. ベルリン放送交響楽団
ベルリン、イエス・キリスト教会
・ドイツ・シャルプラッテン LP ET5061
録音1978/5/26-/6/2
・AVEX SACD AVCL-25286
録音 1978/5/26,31、6/1,2
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2. BBC交響楽団
マンチェスター
・Eyewitness
録音1984
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3. シカゴ交響楽団
オーケストラホール(おそらく)
・RARE MOTH 539-S
録音1985.11
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4. ベルリン・フィルハーモニカー
フィルハーモニーザール
・NHK-FM DAT-102(河童蔵通番)
録音 1988/9/17
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5. クリーヴランド管弦楽団
セヴェランス・ホール
・ERATO 2292-45815-2
録音 1991/3/17-18
・ERATO SHMCD WPCS12233/4
録音1991/3/17-18
****最高音質****
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6. シュトゥットガルト放送交響楽団
ベートーヴェンザール
・NHK-FM DAT-1097(河童蔵通番)
録音 1996/2/29
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7. ベルリン・フィルハーモニカー
フィルハーモニーザール(おそらく)
・自主制作盤 BPH0611
録音 1997/6/9または1999/3/16
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8. バイエルン放送交響楽団
場所不明
・RE!DISCOVER RED101
録音 1990年代
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以上が河童蔵にあるものです。
これだけでも執拗な数だと思うのですが、コンサート・プログラムとしては当然これの何倍も演奏しているはずです。同一プログラミングの定期公演も単数カウントすると、もう、とんでもない数かと。
海賊盤が3個ありますがそれはそれとして、最高音質はエラートのSHMCDフォーマット。非常に済んだ清らかなサウンドで聴くことが出来ます。(5番の二つ目のCDです)
7番の自主制作盤も清らかな演奏ですが、自主制作盤なら録音データをきっちり載せて欲しいですね。例によってカップリングとの日付が不明確。昔からの慣習で、日付データは古い方から並べるやりかたをいまだ踏襲している。CDの収録順と録音データの順番は一致しているわけではない。画竜点睛を欠くCDです。指揮者の演奏には影響する話ではありませんけれど。
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ほかにザンデルリンクのショスタコーヴィッチの15番ご存知の方おりましたら教えてください。
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