河童メソッド。極度の美化は滅亡をまねく。心にばい菌を。

PC版に一覧等リンクあり。
OCNから2014/12引越。タイトルや本文が途中で切れているものがあります。

964- 果てしもなく素晴らしかったヤナーチェク、マルティヌー、チャイコフスキー、アルミンク指揮新日

2010-01-31 00:10:00 | インポート

100128_184901

Scan10020

2009-2010シーズン、聴いた演奏会観たオペラより。

.

2010128()7:15pm

サントリー・ホール

.

ヤナーチェク ブラニークのバラード

.

マルティヌー チェロ協奏曲第1

  チェロ、セルゲイ・アントノフ

.

チャイコフスキー 交響曲第3番 ポーランド

.

クリスティアン・アルミンク 指揮 新日フィル

.

「プログラムの良さに惹かれこころした演奏会であったが、一回はまったらなかなか抜け出せないポーリッシュ・トラップに、前代未聞のおそさで始まった序奏は激しくも見事に完結した第1楽章の造形感はさらにその先を期待させるに十分なものとなり、プログラム前半の実はこれと決めていた第1番のチェロコン第2楽章における圧倒的な余韻さえ吹き飛ばすに足る素晴らしい解釈を聴き、こちらも一気に吹き飛ばされた。」

.

ポーリッシュの第5楽章はこの副題の由来となっているポロネーズの音楽。ロンド形式で冒頭の主題と3個の挿入パッセージからなる。

ポロネーズ、4分の3拍子、比較的勇壮な踊りから始まるが、魅惑的な挿入曲を含みながら、加速。チャイコフスキーしかなしえないしつこくも気持がよすぎるシンコペーションの終結部を果てしもなく続け、速度はほぼ8分の3拍子の状態でプレストに突入してもシンコペーションをやめることなく、というよりもここぞとばかり全楽器で思いっきりシンコペーションしまくり、チャイコフスキーはさらに加速し、果ては限界点で1拍子モードになり強拍1拍目だけの打撃音を全奏で13回繰り返し、ようやく全音符だけの3小節でフェルマータ・エンディングとなる。このしつこくも気持のいい、ほとんど快感とさえいえる音の戯れ。13回叩かなければ音楽の状態が調和完成しないという脳内フィーリング。

極みは多い。リズム主題をブリッジするのがリズムだったり、二つ目の挿入のウィンド・コラールの清らかで淀みないとうとうと流れるメロディー、でもこれよく聴くと2拍目にアクセントが入っている節。プレストのシンコペーションを予聴させるものとなっているのは明らか。チャイコフスキーはシンフォニー作曲家だった。あらためて。

.

プレストではさすがに少し音が濁ってしまったが、突進あるのみ、前に進むしかないのが音楽、全員一致で突進モードさせたアルミンクは、これはこれでよかったというものだ。

そもそも、この曲の解釈としてアルミンクの力の入れようは第1楽章の序奏からして尋常ではなかった。というかほぼ異常。ありえないようなテンポで始めた。

モデラート・アッサイ葬送行進曲の速度で、と指定されたテンポがどれほどのものなのか、愁いを含んだ、ひきずるような、むしろ深刻過ぎる音の響きからはじまる。アルミンクのこの音楽へ込めた気持ちは並々ならぬものがあるのはこの冒頭を聴いただけで明白。微にいり細にいった演奏、細部に光を当てる演奏は昨今の若い指揮者のひとつの特徴、はやりだと思うのだが、そのようなものを越えたこの曲に対する愛着、共感を見て取れる。これが79小節続きアレグロ・ブリリアントとなる。第1楽章は序奏付の典型的なソナタ形式でなぞっていくのは比較的簡単だ。

細部に光をあてすぎると、よく全体の造形が見えなくなるなどといわれたりするが、異常なテンポでこまかいところを全部見せる割にはドライというか、情に流されないというか、純粋器楽のアンサンブル・バランスを強調しているようにも聴こえ、むしろ幾何学的で立体的な深彫りの演奏がジャングルジムのように構造に光を照らして非常に整った造形美、構造美をうまく表現していたようだ。だから、あっというまに終わる。形式音楽はその形式をわかっていればあっという間に終わる。ブルックナーも然り。よくわからないのはなぜ5楽章になったのかということぐらいか。それはそれとして、

1楽章は最後まで4分の4拍子を堅持しているが、ブラスの後拍、束になってフォルテで後拍とか、例によって気持のよくなるぐらいしつこい終結部なんか全奏による一小節レベルの大胆極まりないシンコペーションなど、リズムの快感、サウンドの爽快感、果てしない終結、あの深刻な序奏からこのようにして頂点をむかえた響きの饗宴は第1ヴァイオリンにみられるようにしっかり2オクターブ半下げて終わる。つまり先があることを完全に示しながら見事に終わる。

アルミンクは序奏から既にこの楽章の終わりを最初から見据えていたのであり、余裕で見事な構造美を響かせることが可能、つまるところこの楽章をかなり大きく見せることに成功した。

-->