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バー・マナー2
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「この前食べたブラームスはおいしかったね。」
「実は指揮棒で食ったんだが食いづらかったぜ。」
「エヌホの音は最低だな。」
「フモンよりはましだ。」
「下には下があるってことよ。」
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などと、バーでお酒を飲み始めて一時間もすればこんな変な会話も始まってもおかしくない。
でも、酒を飲んでもいないのに、これから酒を飲むのに、お店にくるなりいきなり馬鹿な事を言う自己中がいる。
「おれの席はどこだ。」
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ゴー・ホーム
みんな、地球は自分を中心にまわっているので、自分を他人の目で視線で見ることが出来ない。みんな救いようがないからこの地球の寿命もおのずと決まる。
それで、、おれの席はどこだ、、というのはつまり自己中のおれのための一番いい席はどの席だ。ということになるのだが、実際問題、カウンターのどの席が一番席なんだろう。
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大きいバーのカウンターだと一番手前かな、小さいところだと人の動きの少ない席かしら。
要は水まわりのないほうの席、調理用出入りから一番遠い席ということになるのだろうか。
でも、お酒は種類ごとにまとめてならべているので、端席だとウィスキーだけ、ラムだけ、などしかボトルが見えない。小さなお店だと特に問題もないだろうか、ある程度のサイズのお店だと、やはり座る席はそれなりに考えたい。
一番いい席はセンター席か。全部が見渡せる。お山の大将みたいなもんだし、極めつけの自己中おやじ席みたいなもんだが一度は座りたい。
最低3回はかよって右端、左端、センター、などと座り分ければ問題なし。初めて行ったバーが気にいったときは、もう2回はうかがいたいものだ。
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静かな悪友S君
「お河童さま、この前はカパコさんと一緒にセンター席に、デン、と座ったらしいじゃないですか。」
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河童
「なんで知ってるんだ。」
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S君
「はいはい、情報は全部漏れてます。誰も面と向かって言わないだけです。」
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河童
「君、内緒の話なんて、昔からみんなそんなものさ。そこにいあわせた全員が内緒の話をしっていることもあるしね。」
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S君
「はいはい、そうでございます。言わないだけです。それでカパコさんとセンター席に座ってガバガバ食べていたらしいパスタの味はどうでしたか。」
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河童
「ほんと、よく知ってるね。まるで見ていたみたいじゃないか。パスタはおいしかったね。」
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S君
「たしか、ハマグリパスタとキンメダイパスタだったとか。」
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河童
「君は尾行でもしたのかね。パスタはたしかにそんなところだ。ちょっと量は少なめだったけど味はいけた。」
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S君
「それで、そのバーのメインディッシュ、イベリコステーキと子羊はどんな感じだったんだい。」
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河童
「なんだか、内緒の話じゃなくて、情報公開しているような気がしてきた。おれは区役所かっ!
メインディッシュはこれまた量が少なかったけど、まぁ、イベリコも子羊もちょっとくせがもともとあるけど、それがそのままっていう感じで、いまいちっていうところかな。」
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S君
「じゃぁ、せっかくのワイン、レオナルドダヴィンチもちょっと薄く感じたんじゃないですか。」
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河童
「やっぱり、情報公開だ。。
それで、ワインも物足りないので、結局最近カパコがはまっているグラッパに走った。こっちが1杯飲む間にカパコは3杯飲むって感じ。」
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S君
「センター席から見渡すボトルの数々、あすこの店だと壮観じゃないですか。グラッパなんて酒は、僕はお河童さまがバーというものを教えてくれるまでは全く知らないものでした。だいたいラフロなんかもそうだったんです。そしてあのドクターペッパーみたいな味にはまったんですね。グラッパもそんな感じはありますね。」
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河童
「君、ちょっと雄弁すぎるぜ、だまって、カスでもトリな。」
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おわり