僕が予想した通りに大関貴景勝が優勝決定戦で前頭15枚目の熱海富士を破って優勝をしました。大関の貫禄を示した結果となりました。ただ、結果だけ見ればそうなのですが、優勝決定戦での貴景勝は熱海富士に対して立ち合いの変化技で勝ったために批判が殺到しています。天下の大関がまだ幕内2場所目の新鋭に対して真っ向から受け止めずに変化して勝つとはどういう了見だということです。そんな優勝なぞ認めたくないとか、来場所貴景勝が連続優勝しても横綱昇進はあり得ないなどと叩かれています。
ところが元横綱朝青龍だけは違うコメントを出しています。変化したって関係ない、勝てば良いんだという主張です。これが大相撲の難しいところです。協会もマスコミもファンも強い力士は堂々と真っ向勝負で勝つべきだと考えています。変化して勝つというのは弱者の戦法であって、横綱や大関がやるべきではないというのが共通認識です。しかし変化技は正式な相撲の技でありルールで認められています。野球で変化球を投げるなとか、サッカーでフェイントをかけるなと言っているのと同じことで、それを墨守したら駆け引きができず大きなハンデを自ら背負うことになります。朝青龍に限らず外国人にはなかなか理解しづらいでしょうし、日本人だって相撲ファン以外には理解してもらえない可能性が高いです。
貴景勝は175cm、熱海富士は185cmとサイズが違います。貴景勝としても真っ向から熱海富士の突進を受け止めるのはかなりリスキーです。しかも熱海富士が相撲社会の常識として大関が立ち合いで変化しないだろうと思っていて一気に突っ込んでくることもわかっています。だから変化技だけで決めるというよりは熱海富士の強烈な当たりをそらして横から攻めたいと貴景勝が考えたとしても一方的に責めるのは少し酷な気がします。ただ熱海富士があまりにも素直に真っ直ぐに突っ込んできてしまったので、貴景勝が横にかわしただけで勝負が決まってしまいました。結果的に貴景勝は「逃げた」ということになり叩かれまくりです。
そうまでして貴景勝が勝ちたかったのは、ここで幕内2場所目の新鋭に優勝されてしまっては大関の面目が立たないという責任感からだと思います。優勝がしたかったというよりも、天下の大関だからこそ負けるわけにはいかないという強い思いが溢れた結果が変化になってしまったのではないでしょうか。確かに逃げずに正面から熱海富士の突進を受け止めて欲しかったとは思いますが、その結果貴景勝が吹っ飛ばされて負けてしまっていたら「不甲斐ない」「大関失格」などと叩かれていたでしょう。だったら次善の策としてとにかく勝って優勝することが優先順位として上だったのだと思います。ストレートを待っているトラウトにスイーパーを投げたWBCの大谷と一緒だよと貴景勝を慰めてやりたい気分です。果たしてそれが本人にとって慰めになるのかどうかはわかりませんが。