コロンブスという人はアメリカ大陸を「発見」した歴史上の偉人でした。僕が子どもの頃はコロンブスの伝記も読みましたし、「コロンブスの卵」の逸話も知っています。正直、子どもながらにコロンブスの卵は「ズルじゃね?」と思いましたが、まあそれはともかく、偉人の中でもトップクラスの有名な人物であることは間違いないでしょう。
しかし時代を経るにつれて、アメリカ大陸は「発見」されたわけではなく、元からあるし、多くの住民もいたし、そこにヨーロッパ人が「到達」して侵略をしたという歴史観が正統なものであるという認識に変わっていきました。ヨーロッパを中心にしたそれまでの歴史観が訂正されていくようになったのです。「インディアン」という言葉も「ネイティブアメリカン」と正しく表現されるようになり、もちろん「野蛮」で「凶悪」なインディアンをバンバン銃で撃ち殺す「正義」の白人騎兵隊という西部劇も作られなくなりました。
もちろん、そんなことは知らないとか興味ないという人もたくさんいるだろうし、ヨーロッパ史観で何が悪いとか、行き過ぎた平等主義だと思うのも個人の自由です。ただその考えは少なくとも現代においては主流ではなく、ビジネスとして表現に携わる人は、コロンブスのように、昔と今とでは評価が変わってきている人物を安易に扱うことがどう捉えられるかくらいの知識は持ち合わせていないとリスクが高くなります。
Mrs.GREEN APPLEの新曲「コロンブス」のMVが公開停止になった今回の事件は、「炎上上等」のケンカ殺法のつもりならともかく、真っ当なビジネスとしてはやはりチェックが甘過ぎたというしかないでしょう。特に今回はCMソングなのですから、ビジネス上のリスクは絶対に避けなければなりません。「これ面白いじゃん」というノリで作ってしまうと、途中で「危ないかも」と感じてもストップをかけにくいのはわかります。僕が現役時代もそうやってイケイケになった時もありましたし、途中でしっかり止めてくれる人がいなかったら危なかったこともありました。自分では面白いと思っているアイデアを「危ないから」という理由で止められるくらい悔しいことはないのですが、冷静にチェックして止める人は絶対に必要です。