2022年の紅白歌合戦はその番組名とは裏腹にほとんど「合戦」であることを無視した演出進行でした。登場するアーティストが紅白どちらなのか、もしくは特別枠なのかの紹介もないし、司会者から「白組」「紅組」という発言もなければ、かつてあった南極昭和基地から白組への応援メッセージ、みたいな演出もありません。辛うじて終了間際にいきなり紅白の得票数が発表されて白組の勝利となりましたが、それもそこそこに番組は終了してしまいました。
すでに以前から男性と女性に組み分けをすることに対する違和感は指摘されてきましたし、そもそも一流のプロのアーティストのパフォーマンスに勝敗をつけるということ自体も無理があります。戦後すぐに考案されたフォーマットが70年以上経って時代遅れになるのも当然なので、もはや「紅白歌合戦」がタイトルとは違う内容になるのは致し方ありませんが、だったらそろそろタイトルを変えた方が良いと思います。
さらに難しいのは世代ごとに聞きたい音楽が違うということで、今回はかなり細分化して対応したなと思いました。10~20代にAimerやSaucy Dog、Vaundyなど、30~40代にTHE LAST ROCKSTARS、篠原涼子、有吉弘行、50~60代にユーミン、安全地帯、桑田佳祐、70代以上に加山雄三と、それぞれの世代に刺さるアーティストをふんだんに用意していました。当然ターゲットではない世代にとっては「?」となったことでしょう。知らない奴ばかり出ていてつまらないと脱落していった視聴者も多いと思いますが、制作側も覚悟の上だろうと思います。
ただ個人的には幅広く音楽を聴きたい方なので、これだけ全方位的に網羅してくれて面白かったです。ランダムに良かったと思ったアーティストを挙げれば、SEKAI NO OWARI、milet×Aimer×幾田りら×Vaundy、安全地帯、あいみょんあたりでしょうか。セカオワはレコード大賞に相応しい楽曲ですし、あいみょんは10代から70代まで広く受けるだろうなと改めて感じました。歌詞もメロディも普遍性があって、彼女は令和の「国民的歌手」になれるもっとも近い存在だと思います。あと、やっぱり「ユーミンは荒井に限る」。昔から言っていますが再確認しました。