いま名古屋市美術館で開催されている『ガウディとサグラダ・ファミリア展』を見に行ってきました。さすがの人気企画だけに平日にしてはかなりの人出で、改めてガウディの魅力を再確認させられました。展示内容は知っていることも多かったのですが、実際に模型や彫刻を見られるのはやはり企画展ならではの良さで堪能してきました。1800円という映画一本分の入場料なりの価値はありました。
僕がサグラダ・ファミリアを見に行ったのは今から38年前、1986年10月のことです。新婚旅行で行きましたが、そもそもの発端がバルセロナにサグラダ・ファミリアを見に行きたくて、そのための旅費と休暇を確保するための手段として新婚旅行を企画したというのが本音です。そうでもしないとバルセロナなんて行けそうもありませんでした。もちろんそんなことは親にも周りにも言いませんでしたが。
なので旅行はバルセロナを含む格安ツアーを探して決めました。当時の新婚旅行は沖縄かグアムあたりが定番で、少し贅沢するとハワイ、オーストラリアかアメリカ西海岸。ヨーロッパはまだ少数派でしたが、行くならパリかローマでした。僕が選んだのはブリュッセルとバルセロナとミラノという、ヨーロッパ4回目くらいの旅行好きが行くような通好みのツアーでしたから、新婚カップルよりも普通の旅好きのツアー客の方が多かったです。
サグラダ・ファミリアは前年に世界遺産に登録されていましたが、まだ日本での知名度は今に比べればかなり低く、ガウディもサントリーのCMで取り上げられたので名前だけは知っているという人が大半でした。バルセロナという都市も今のようにサッカー好きが多いわけではないので知っている人も少なかったし、全てが今よりマイナーでした。サグラダ・ファミリアに外尾悦郎が彫刻家として関わっていることなんて全く知られていませんでしたが、僕が見に行った時はちょうど彼の真新しい彫刻が取り付けられた頃で、「日本人が作った」と聞いて感動したのを今でも鮮明に覚えています。
1986年の段階ではサグラダ・ファミリアはもちろん今ほど完成はしておらず、あと200年はかかると言われている頃でした。内部も工事中だらけでしたが教会内に入って尖塔を上ることができました。安全対策もかなりいい加減で、塔の階段を上りながら「落ちたら死ぬね」とツアー客同士で言い合いながら上がったのもよく覚えています。全然未完成で雑然としていたサグラダ・ファミリアよりはグエル公園の方がずっとフォトジェニックで、写真もたくさん撮ったし、はしゃいでいたものです。
あれから38年。完成まで200年かかるはずだったサグラダ・ファミリアはあと2年程度で完成するとも言われています。完成したら見に行ってみたいとは思いますが、この円安で年金生活予定者に海外旅行など贅沢過ぎて無理ですし、どうせヨーロッパに行くならまだ行っていないところを訪れてみたいですから、多分もうバルセロナに行くことはないでしょう。今日の展示で堪能してきたのでよしとします。