goo blog サービス終了のお知らせ 

書籍之海 漂流記

看板に掲げているのは「書籍」だけですが、実際は人間の精神の営みすべての海を航海しています。

ジョン・カサヴェテス監督 『グロリア』(1980年)

2013年10月25日 | 映画
 シャロン・ストーン主演のリメイク(1999年)ではなくてオリジナルのほう。
 ジーナ・ローランズという女優さんは、『ナイト・オン・ザ・プラネット』(ジム・ジャームッシュ監督、1991年)でしか知らないのだが、10年以上前に撮られたこちらのほうが老けて見える。人生に疲れた中年女の演技だったということだろうか。
 宮崎駿監督が何かの対談で、この映画について触れて、主人公も連れて逃げている男の子も、本当はどちらも死んでいると言っていた。私が自分の目で観てみた感想は、男の子は解らないが、グロリアのほうはまずそうだろうというものだった。宮崎監督が言うように、最後グロリアを運んでくるリムジンにネームプレートがないのは異常である。それに、マフィアのボスの部屋からあの状況で、あのエレベーターで逃げられたとは思えない。最初に一階からそのエレベーターを使って部屋へ上がる際に、「遅い」と主人公がわざわざ文句を付けているのは、これから起こる真の結果をそれとなく示すためかと思えた。最初から映画の結末を知っているが故の我田引水の深読みかもしれないが。
 男の子――フィル――のほうも死んでいるのかもしれない(つまりその場合、ラストシーンのピッツバーグ墓地での再会はあの世での話、あるいはそうあってくれればいいなという観客にとっての夢の部分ということになる)。だがそうではないかもと思うのは、その墓地で、フィルがある墓石に向かい、その墓石をグロリアに見立てて、"Gloria, I know you are dead. I want you to know that I know you are dead. I made it to Pittsburgh..."と語りかけるシーンがあるからである。