くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「ウズタマ」額賀澪

2018-01-09 05:50:24 | 文芸・エンターテイメント
 予想通りすぐ読んだんです。額賀澪「ウズタマ」(小学館)。
 塩ラーメン食べたい!
 と思ったけど、家にはサッポロ一番みそラーメンしかなかったので、そちらを食べました。でも、うずらの卵はなかったわー。
 そう、「ウズタマ」ってのはうずらの卵のことなんです。
 でもって、衝撃だったのは、冒頭の事件が起きたのが1月8日であること。ええ、読んだのは1月8日ですとも。
 ラストシーンも2018年の正月明けですから、ちょうど今頃ってことですよね。なんだか、不思議な感じがします。

 ミステリっぽい作品です。
 松宮将彦の目前で妻が血を流して倒れ、息子が泣きわめく声が聞こえます。その場に立っているもう一人の男性が、固い声で松宮を呼び……。
 1993年と2017年を行ったり来たりしながら物語は進行します。
 2017年、松宮将彦は脳梗塞で入院しており、息子の周作はそのために結婚の予定を延期。
 でも、段々自信がなくなってきます。相手の紫織は学生時代の先輩で、前夫との間に幼い娘の真結がおり、二人を幸せにすることができるかどうか。
 父親が倒れる前に託された貯金通帳は、誰からのお金なのか。
 父が亡くなると天涯孤独になってしまう。
 そんななかで、母親が傷害致死の被害者であること、犯人は自分の家で家事手伝いのアルバイトをしていた未成年の大学生であることを知ります。
 家事手伝いの大学生? しかも、男なの? え? 「君はレフティ」みたいに男性同士の関係?
 と、深読みしそうになりましたが、そうでもなかった。
 未成年だから、犯人の名前は公表されていませんが、知り合った記者から「皆瀬悟」という名前を教えてもらいます。
 か細い手がかりから皆瀬の足取りを追いますが……。
 なんだか、すごいいい人なんですよ、皆瀬。
恩師や前のアパートの大家さんからも、消息を心配されているし、周作の頼みでラーメン作ってくれるし。
 昔住んでいたところの飲み屋の店主が、周作にうずら串をサービスしてくれるエピソードもいい。
 額賀さん、まだ二十代ですよね?
 物語の機微が本当に細やかで、紫織と真結との関わりやラストの出来事が染み入ります。