くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「花しぐれ」梶よう子

2017-08-21 05:12:30 | 時代小説
 「御薬園同心水上草介」の完結編です。梶よう子「花しぐれ」(集英社)。
 最初からネタバレですみません。このパターンは「星へ行く船」ですよね! ラスト残り十ページくらいで、ようやく草介が思いのたけを告げ、その後は紀州に行く送別会があったけど千歳は現れない。これはきっと……と思ってたら、予想通りでした。
 今回は草介の両親がいい味出していました。
 お母さんの栗ご飯がすごくおいしそう! で、栗の葉で染め物をすることにした職人さんと奥さん。栗のいがも薬になるんですね。しかも、鳥居一派の妨害に使うとは。
 今回は園丁頭が結構活躍していて、娘さんが気に入らない若旦那と結婚するのはショックだったと思いますが、土に隠れた植物をみつけるのもうまいし、年始の挨拶でも水上家を訪ねてきてくれます。
 あとは双子の芸人の話もおもしろかった。
 わたしはこのシリーズ、かなり好きなので、終わってしまうのは残念です。新天地での二人の新婚生活も読みたいところなんですが。
 

O図書館を見に行く

2017-08-20 06:07:49 | 〈企画〉
 県図書館の蔵書検索で検索したところ、磯江毅の画集がO図書館にあると知り、見たいという気持ちを抑えられずに見学にいくことにしました。
 O図書館は、新館に移築してオープンしたばかり。
 木を基調にしたすてきなホールで、本棚も木製です。
 入ってすぐは児童書。ビジネスや料理本、それから文学(9門)が並んでいます。
 貸出が多そうなジャンルが手前という感じかな?
 図書表示は円筒形で、なんだかお洒落でした。
 新聞書評の本が中央に提示してあり、企画として「祭」本が特集されていました。
 その頭上に階段。二階はヤングアダルトで、マンガを読む中学生が結構いました。
 展示にはポスターパネルが効果的に使われており、「温泉」特集では近在のN温泉郷、「君の膵臓を食べたい」の近くに映画広告、あとは姉妹都市のイベントなども。大きいポスターと一緒だとインパクトがありますね。
 総記(0門)から言語(8門)までは奥に並んでいます。その壁面に全集や復刻版などが面陳列してあって、それが非常に格好良いんですねー。

 わたしが本のある場所で確認するジャンルは、好きな作家(似鳥さんの本は「一〇一教室」しかなかった……貸出中?)、図書館関連本、メディア、女性問題、動物、料理、デザイン、コミック、ドキュメンタリーといったところ。
 シリーズものの二冊目しかないものもあったのですが、これは? ……貸出中?

 で、あっちにいったりこっちにきたりしているうちに、ようやく美術関連(7門)まできたのです。
 「いそえ」なので、NDCの境界あたりを見ていけば、細かい番号が分からなくともなんとかなると思っていましたが、棚を三週してもみつからない。
 検索機を使ったら、723・1だというのですが、みつからない。
 一冊一冊、背表紙を丁寧に見ても、もう一回美術の全展開を見直しても、もしやあまりにもリアルで写真コーナーに入ってないかとか、大型本として別置されてないかとか、何か企画展示に出されてるとか実はヤングアダルトで二階にあるのではないかとか自分なりに可能性を探ったけれど、どう探してもないのです!
 何故? 検索機では「一般 予約可」と書いてあったのに、もしかして閉架???
 新しい図書館です。混んでいて、司書さんはいろんな人に本の所在を聞かれています。
 何より、わたしは同じ状況で、質問した本がやっぱりどうしても見つからなかったという経験もあり、この日は諦めました。
 どこに入り込んでいるのでしょう。磯江毅「DEEP DREAM」。県内でこの画集が入っているのは、ここだけなのです。函館美術館で現物は一度みているのです。
 ああー、自分で買うしかないのでしょうか? でも四千五百円するんだよなー。

「夜廻り猫」深谷かほる

2017-08-19 09:12:48 | コミック
 校長先生が本の紹介コーナーを作ってくださいました。嬉しい。
 今月紹介されているのが、深谷かほる「夜廻り猫」(角川版)。最初表紙を見て児童文学かと思ったのですよ。しかし、手に取ってみたら八コマまんがだった。
 深谷さんがネットで公開していたものだそうです。そのまま玄関先で半分くらい立ち読み。途中で切り上げる気にならないのです!
 左ページにまんが、右は美麗なイラスト。
 「泣く子はいねぇがー」と、なまはげさながらの台詞で夜廻りをする猫・遠藤平蔵。ただ、言葉の意味は反対で、苦しい思いをしている人に寄り添っていく。
 目と耳にキズがある「ニイ」や、小さな「重郎」、猫集会を開こうとする「ゼン」とガールフレンドの「メロディ」、友人の「宙さん」、わがまま猫「モネ」、そして親切な永沢夫妻と犬の「らぴ」に託された「ラミー」。まだまだ沢山の登場猫がいますよ。わたしは犬派なんですが、みんな愛嬌たっぷりで、愛しいです。
 あっ、二巻にしか出てこない子もいますよ。
 立ち読みする間に、もうこの本は買おうと決意したのです。
 ただ、書店にあったのは講談社版でした。内容はほぼ同じ。続きも二巻が出ていて、近く三巻も発売予定。
 校長先生、教えてくださりありがとうございます。
 ただ、生徒はこれがまんが、とは気づいてないような気がするなあ。もったいない。

「ゲイカップルに萌えたら迷惑ですか?」牧村朝子

2017-08-18 05:28:02 | 社会科学・教育
 図書館の社会科学コーナーで面陳されていました。牧村朝子「ゲイカップルに萌えたら迷惑ですか?」(イースト新書Q)。
 このタイトルからわかるように、LGBT(この本ではLGBTs)について語られています。
 牧村さん自身がフランス人女性と同性婚されているのですが、Q&A方式で様々な質問に答えていきます。
 それは何もLGBTsにかかわること限定ではなくて、誰かと人間関係を結ぶには当たり前で大切なこと。
 
 わたし個人としては、後半のLGBTsの歴史が非常に興味深いものでした。
 ニューヨークの政治家マレイ・ホールが死去し、男性として活動していた彼が、実は女性だったと判明。死因は乳癌で、病院に行けば女性であることが分かってしまうからと恐れたためだとか。
 FtM(女として生まれたけど、心の性は男)の殺人事件があったとか。
 わたしは結構LGBTs関連の本は読んできたと思います。そういう本も図書室に入れたいと思っているので、この本はオススメできると感じました。
 ところで、ネタバレしてしまうので敢えてここに書きますが……。
 篠田真由美「閉ざされて」(角川書店)を読みました。函館が舞台、閉ざされた一族の破滅の物語です。
 ただ、冒頭で主人公がMtFだというのは推測できてしまったので、世間的にはそこまで悲観したり破滅を選んだりするように見られているのかなあと悲しくなりました……。
 独白、手紙、手記で構成されています。主人公の汀は、全寮制の学校を中退して函館に戻ってきています。
 函館山の裏側にある雪鼻荘は、亡くなった母が持参金で建てたもので、汀はそこで車椅子の父、お手伝いの杉浦など若干の使用人と暮らしています。
 父は再婚した彩子と、二人の娘(早苗と緑)がいるのですが、市街地(五稜郭近辺)でマンション暮らし。
 また、兄は東京の大学に在籍しており、ほとんど帰ってきません。
 汀は、自分の願いを兄に理解してもらい、味方になってほしいのですが。
 父の財産を巡り、様々な思惑が行き交います。結婚式で身につけていたティアラがどこに隠されているのかを気にする彩子や、母が結婚に乗り気でなかったことを知って憂鬱を募らせる汀、財産を手に入れるには手術を諦める必要があると語る弁護士など、どんどん不穏な雰囲気に。
 ペンダントトップのジルコニアが重大な役割を果たしますが、えーと、保育器に入っていたから本当は4月生まれって、どういうこと? 学校で生年月日使われるでしょう。緑も、本当は「7ヶ月年長」ではないわけ? と、ちょっと釈然としないのでした。
 それから、このラストだとLGBTsは遺伝みたいな印象を残すので、それもどうかと思うのでした。

「大奥」とかいろいろ

2017-08-17 05:05:03 | コミック
 月曜日やっている図書館を発見!
 嬉しくて結構行ってます。なにしろ代休は月曜になることが多いですからね。しかも、よく行く図書館の系列なので相互返却ができる。職場から三十分ほどです。
 まんがを置いているので、立て続けに借りてみました。
 まずは、よしながふみ「大奥」(白泉社)。11巻まで読みました。最初の四冊(吉宗が家光の時代の事情を知るまで)がすごくよくて、次の四冊(綱吉編)もおもしろい。古本屋で買っちゃおうかとも思いましたが、結局順調に借りているのでいいことにしました。

 それから「少年ノート」。一気に全巻借りて読みました。ボーイソプラノにかかわる少年の成長ものです。
 作品の中心だった女の子が、コンクールのテレビ中継でミスをしてしまい、合唱をやめてしまうのは残念でした。
 あとは、雲田はるこ「昭和元禄落語心中」。ネットで読もうと思ったときは、なんだか読み切れなかった。今回はスムーズに読めたのですが、なぜか、図書館には最後の一冊がなくて!
 古本屋で立ち読みしました……。

 思った以上におもしろかったのは、「和算に恋した少女」(小学館)。
 江戸の算術をテーマに、小娘ながら算法家として一人立ちしようとする女の子と、同心、関派の塾頭などが競うまんがです。
 ちょうど課題図書の「円周率の謎を追う」を読んでいたのですが、そっちよりずっとわかりやすかった。
 ただ、和算というよりは数学パズルが題材になっているそうですので、史実とは差異があるみたい。

 自分で買ったところでは、「あかぼし俳句帖」が終わってしまい残念。
 「ブスに花束を」が、一巻に続きマイペースでおもしろかった。

ポップ講習会

2017-08-16 05:20:32 | 〈企画〉
 夏休み初日、図書館研修にいきました。
 ポップの作成(実技含む)なんですが、わたしはマーカーサインペンしか持ってきていなくて、ちょっと苦戦しています……。
 持ち物にマッキー等と書いてあったのですが、ポップだったら太すぎるかなと思って細字のものだけ持ってきてしまいました。
 ポップの基本は角ゴシック体。縦横同じ太さで書くのがポイントだそうです。遠くからでも目を引く力がある。
 基本的なことを話していただいて三十分くらいで実作となったのですが、A4の大きさに書くと結構時間いっぱいでした。
 
 午後はデザインの基本技術。字が多すぎると見づらいので、装飾するなどして視覚化するというのは納得です。
 白抜きや罫線の効果、図版率を増やすこと、重なりを怖がらずに書くなど、これまで余り意識してこなかったことに目を向けることができました。
 でも、できればもっと実作をしたかったなあ。わたしは基本的に「授業」をイメージしているからでしょうか。なんとなく、書いたものを相互評価するような、アクティブラーニングのようなものをイメージしていたので、少し物足りないような気持ちは残ります。

「これは経費で落ちません!」2

2017-08-15 06:03:25 | YA・児童書
 翌日早速本屋に走って、「これは経費で落ちません!」の続編を買いました!
 少しずつ進展していく森若さんと太陽の関わりや、女子社員の人間関係、ちょっと信頼できない人がフォローしてくれたりこれまで会議室で仕事をしていたために存在感が薄かった勇太郎にスポットが当たったりして、楽しめます。
 中でも、営業部のエース山崎さんがすばらしい。
 成績は常にトップ。でも、本当は研究職に就きたい。他の人には見えないポイントが自然に目に入るので、プライベートで出かけても契約を取ってしまう!
 これは三巻も楽しみです。

 おそらく、これも読みたくなるに違いないと思ったため、先行の姉妹編「風呂ソムリエ 天天コーポレーション入浴剤開発室」も買っておきました。
 こちらのメインは、森若さんの同期美月。一巻では創業一族の御曹司格真と付き合っていることや、受付のゆいみのお風呂マニアぶりが語られましたが、きっかけとか研究室の様子とかが描かれていて多角的に読めました。
 なんだか入浴剤が気になってきますよね。うちは今コラーゲンの湯に入っています。
 そうそう、フルーツシリーズを手がけていた美月が、一巻では温泉シリーズを成功させていることわかるのも、連作の醍醐味ですね。

「逃北」能町みね子

2017-08-14 06:07:35 | エッセイ・ルポルタージュ
 実は発売したときから気になった一冊だったのです。
 能町みね子「逃北 つかれたときは北へ逃げます」(文春文庫)。
 これ、「とうほく」って読むんですね。でも、東北よりも北海道の話題が多かったし、海外にも行っています。
 わたしも函館に行くことだし! と思って買ったのですが、能町さん函館には行ってないんだよねぇ……。
 夕張とか稚内とか。やっぱり雪深い感じがします。 
 さらに、買ったその日に結局半分以上読んでしまい、さすがに旅行に持っていくのはためらいました。
 あ、東北では青森と三陸と、そして角田が取り上げられています。
 今月買ったCHINTAIで、この作品の舞台は角田と知り、非常に衝撃を受けたのでした。
 同じ県内でありながら、角田にはほとんど行ったことがない。でも、児童文学作家の堀米薫さんが住んでいるし、友人の出身地でもあるので親近感があります。
 能町さんは、この町におばあさんの生家を訪ねてきたのでした。
 ただ、おばあさんの出生は「伊具郡館矢間」なんです。
 わたしの記憶では、角田ではなくて丸森の地名だと思うのです……。(中学時代の担任の先生の出身地でした)

 巻末に入っている千葉雄大くんとの対談もおもしろかったし(彼は多賀城出身のため、地域色豊かな話題でした)、同時期に読んだ「身体のいいなり」にも登場していて、これは能町さん要チェックかな! 相撲中継やラジオのゲストとしても注目はしていたんですよー。(清原の事件直後、彼の文章のおもしろさについて語っていた記憶があります)

「身体のいいなり」

2017-08-13 05:33:04 | エッセイ・ルポルタージュ
 函館美術館「ニッポンの写実 そっくりの魔力」の図録をなくしたことから立ち直れずにいます……。
 とりあえず検索しまくって、気になった二人の作者は分かりました。象牙彫刻の安藤緑山と、洋画家磯江毅です。わたしはリアリズムが好きなのかも。

 さて、この美術館は五稜郭タワーの近くにあります。最寄りの市電停電所は「五稜郭公園前」。10分くらい歩きますが。
 その停電所近くにシエスタ函館というお店がありました。3フロアすべて無印良品!
 わたしはどこへ行っても本屋を探すのですが、このビルは雑貨や洋服に混じって本が並んでいます。
 ただ、一般的な本屋さんのラインナップとは違っていて、入ってすぐに農業や土、健康をテーマにした本。あとはキッチンウェアあたりに料理とか、二階に旅とかデザインとか……。
 そこで。
 内沢旬子の「身体のいいなり」(朝日文庫)を売っているではないですかあ!
 わたしはこの本がずっと読みたくて、図書館や書店で探していたのです。他の著書はそれなりにあるのに、どうしてもこれは見つからなかった。小躍りしました。が、引き抜いてびっくり。表紙が女性の裸体(イラストは内沢さん)なんです。気恥ずかしくて持って歩けないよ! でも、無印はカバーないみたいだったので、仕方なく表紙カバーひっくり返しました。

 三十代後半で乳癌と診断された内沢さん。
 検査では体をもの扱いされるように感じ、結構苦しいでしょうに重病とは感じず、「盲腸」並だと入院と手術の様子を語ります。
 直後は切り絵をしようとすると利き手が痛み、これからのことを心配したり配偶者との齟齬を感じたり。
 これ、「飼い喰い」の活動をしているときに千葉で執筆していたんだそうですよ。すごいバイタリティ。
 細やかなイラストを描く方なので、自分自身も客観視している感じがしますね。
 腰痛やアトピー体質で、運動も好きではなかったとおっしゃいますが、ヨガにのめりこみます。そのときに、心と身体について考える。
 また、お祈りを求めるレッスンには拒否感をもつのもおもしろいと思いました。
 乳腺を全摘出して、乳房を再建することにする部分も、左右が調和しなくて不信感を覚えます。
 医療分野は日々進化しているので、今後治療法は変わっていくだろうとの前提で描かれているのもフェアですよね。
 リップペンシルやスリップを無印良品で購入したとの記載もあり、なんだかクロスオーバーしている感じがおもしろい。

 さて、このビルの地下は食品店です。チーズのお店ロッコで食べたソフトクリーム、おいしかった! 

「ちどり亭へようこそ」ほか

2017-08-12 06:16:41 | YA・児童書
 7月後半から全く更新しないまま半月くらい経ってしまいました……。
 とりあえずいつものペースで本は読んでいたのですが、なんだかぱたぱたしていてこのままでは内容を忘れそうです。
 読んだものをピックアップしてみますね。
 十三湊「ちどり亭へようこそ」(メディアワークス文庫)。二冊読みました。
 大学生の彗太は、縁あってお弁当仕出しのちどり亭で働くことになります。店主は超お嬢様の花柚さん。お見合いが趣味なのか、毎週違う人と会ってそのくせ他の人を紹介したり人脈作りみたいな感じになっています。
 居候同然の院生美津彦。元婚約者永谷。主人公が思いを寄せる同級生菜月。
 お弁当が非常においしそうで!
 卵に酢を入れて焼くのはさっそく真似しましたよ。
 それから、花柚さんが永谷への思いを断ち切れず、それでもお祝いにと仕出しを作る場面が切なくて。
 ラストはぼろぼろ泣いてしまいました。
 花柚さんも永谷さんも京都のいいお家の跡取りで、上流階級の生活に圧倒されてしまいました。
 こういうお弁当屋さんが近くにあったら、通ってしまいたいですよねー。

 白川紺子「契約結婚はじめました。 椿屋敷の偽夫婦」(集英社オレンジ文庫)。
 これ、語り手が「家」という珍しい趣向(しかも少女小説で)の作品なんです。
 椿屋敷と呼ばれる古い家で御隠居のように暮らす男性のもとに、ある日突然十九歳の女の子がやってきて奥さんになります。
 どうやら事情がありそうてすが、入籍までした二人。生活するうちにどんどん関係が柔らかくなっていくのです。
 そこにやってきたある男性。許婚だったと語り始めて……。
 隣のアパートを管理しているおじ(ニューハーフ)が、個人的には気に入りました。わたしと同じ歳か……。

 なんだか最近「許婚」という語をやけに使っているような??