くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「いい加減な夜食」「メシマズ狂想曲」

2017-08-25 05:20:44 | 文芸・エンターテイメント
 秋川滝美さんの二連続です。
 まずデビュー作「いい加減な夜食」(アルファポリス)。
 びっくりしました。なんか、ハーレクインっぽかったから。
 いや、すごくおもしろいんですよ。苦学生の女の子・佳乃が若社長の俊紀に見初められて、秘書から恋人になっていく。彼女は書道の家元のたった一人の孫娘で、家を継ぐように言われており、すんでのところで策略をめぐらして奪回。社長はものすごく魅力的で、かつては派手に遊んでいたため、彼女は自分も半年で捨てられると思い込んでいて。
 普通の大学生かと思っていたら、パーティーマナーやダンス、英語やドイツ語もペラペラと、育ちのよさを感じさせる佳乃。
 秋川さんといえば、おいしい手料理がメインかと思いきや、結構違う面を見た感じです。
 佳乃が図書室を整理するくだりは、本もお好きなのだろうと感じました。

 「メシマズ狂想曲」は、三十過ぎて自炊したこともない和紗と、ライバルの村越が競い合って料理を作り、失敗しながらも思いを高めていく物語です。
 後輩の山埜や風花ちゃんも一緒に料理教室をするところがおもしろかった。  
 豆腐ハンバーグを作ろうと準備してきた風花ちゃん。実はみじん切りくらいならできる山埜くん。
 山埜くんは風花ちゃん狙いですが、彼女は村越を慕っていて、すごい積極的にアプローチします。
 和紗は喧嘩ばかりしていても、自分は村越が好きなんだと自覚しますが、なかなか自信が持てない。
 読者には、村越の気持ちはもうはっきりしているのですが、和紗の鈍感ぶりがなんともいえません。

 料理シリーズでもう一冊、原宏一「踊れぬ天使」(祥伝社)。
 「佳代のキッチン」の三冊めです。
 相変わらずキッチンカーで全国をさまよっている佳代。今回は釜山に始まり、金沢、静岡(藤枝市)、佐渡、群馬(大泉)、山形、稚内。
 ラーメンに心ひかれる場面が多かったなあ。
 一冊めを読んだときには設定に違和感があったのですが、なんだかんだで続きを読み続けています。
 すぐ人との絆を作るのは、佳代の才能かもしれません。
 この本を読んでいるとき、実は地方局の取材を受けざるを得なくなり、テレビに映りたくない思いがこうじてすごい引き気味に答えてしまいました。(屋台ラーメンの目撃情報を聞かれました……)
 わたしにはこういう旅はできないなーと思いました。
 佳代はいつも湧き水を調理のために汲みにいきますが、こちらも山麓部にはおいしい湧き水があるんですよ。
 ただ、調理屋を開くには人出のある場所が必要ですよね。海からは遠いし。