くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「岩窟姫」近藤史恵

2015-06-15 04:12:00 | ミステリ・サスペンス・ホラー
 わたしも小学生のころ、大好きでしたよ「岩窟王」! エドモン・ダンテスですよね?(といって開いたら、一ページめに名前書いてありました……)
 近藤史恵「岩窟姫」(徳間書店)。そりゃあもう、復讐譚でしょう。
 「わたし」は、半年前まで売れていたアイドル蓮美。親友と思っていた同じ事務所の沙霧がマンションの屋上から飛び降り、ネットから彼女のものと思われる日記が発見されます。自分を操っているREMIから逃れたいことが切々と綴られており、これまでお姫様扱いをしてくれた人々から手のひらを返したようにされます。
 引きこもって出前された食事ばかりとっていたため、急激に太った蓮美は、誰が自分を陥れたのかを知ろうと立ち上がるのです。
 アイドル仲間だったチホの協力を得て、沙霧の実家に向かいますが……。
 近藤さんの初期のテイストに近いものを感じました。「いばら姫は戦う」とか「シェルター」とか。でも、考えてみれば、結構近藤さんの作品はジェンダー意識の高いものが多いですよね。
 コンビニで一目見たときに、自分を蓮美だと見抜いたらしい斎木という男。風俗店の名刺をよこしますが、周囲の誰をも信じられない蓮美が、段々彼のことを信頼していく様子がうまいなあ。
 なんだか妙な偶然性のようなものも続くので、どうかと思っていたんですが、やられました。さすがは近藤さん。そういうことでしたか!
 「Q太郎」というハンドルネーム、ちょっと意味深ですよね。要するに、世間にとっては「オバケ」だということでしょう? 「わたし」が蓮美は殺されたのだから、自分は蓮美の亡霊だ(もしくは、本名の鈴木昭子に戻った)というのとも、重なります。
 そうすると、星野さんたちが、執拗に手記を書かせよう(カムバックさせる)としたことも腑に落ちる。(星野さんの着信を「星に願いを」に設定する辺りも芸が細かいですよね)
 最後までノンストップで読みました。おもしろかった。

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