やっぱりよかった。まはら三桃さんの本を見つけて借りてきました。「鉄のしぶきがはねる」(講談社)。工業高校機械科に在籍する唯一の女子三郷心(みさと しん)が、ものづくりコンテストを目指して奮闘する物語です。
実際に工業高校を見学に行ったとき、一般的に学科の内容がよくわからないまま進路を選ぶことはできないと感じました。例えば、電気科と電子科では学ぶことが違うのだそうです。機械科に入ってから、どういう興味をもっているのか聞かれて、「自動車を作りたい」という生徒がいて唖然としたという話も聞いたことがあります。
機械科は旋盤を使ってねじや工業部品を作ります。職人としての基礎を学んでいくのですね。
心の家はかつて町工場を営んでおり、幼い頃は毎日のように通って、祖父たちの仕事ぶりを眺めていました。けれど、ある裏切りがおきて、祖父は倒れ工場は倒産したのです。そのことから、プログラミングの方が信頼できると思った心は、コンピューターの研究部に入部します。
けれど、切削実習での心の作業の様子に目をとめた<ものづくり研究部>の中原先生から手伝いを頼まれ、なりゆきで参加することに。
もともと断るつもりだったのですが、講師役の小松さんの技に引かれてしまったのです。旋盤の音に祖父を思い出し、言われるままに作業をするうちに、心は<ものづくり>に魅了されていくのでした。
もう冒頭から涙腺が緩みそうで。
祖父の工場への思い入れの様子に揺さぶられます。そして、旋盤の鬼のような顔をした原口の、「ものづくりは、楽しいからだ!」というまっすぐな言葉。
次第に仲間たちとの活動に夢中になり、自分もものづくりコンテストに出たいと考えはじめた心ですが、集中力を欠き、思わぬけがをしてしまいます。職人にとって手は命。祖父も口癖のように「大事なものは体の中に詰めておけ」と言っていた。(この前に小松さんの「測定器もセンサーも自分の体の中に入れろ」という言葉があります。この対をなしたせりふ、二人が旧知の仲と知ったあとだと印象深いです)
さらに女子であることから傷つくような一言を受けて落ち込みます。
仲間たちも着々と力をつけ、とくに亀井くんの技術の確かさに羨望することもありますが、心はひたむきに目標に向けて歩んでいくのです。
「何かに一生懸命になっとる時、それが本物かどうか、人は時々試されるんよ。本物になりたかったら、そこで踏ん張れ」
大山先生の言葉も胸にしみます。
揃ってコンテストの代表に選ばれた心と原口ですが、なんと別れた彼女から原口にメールがきます。友人吉田の話によると「めっちゃかわいい」らしい。医大生と付き合うことにしたので、原口は振られ、そのショックで昨年のコンテストを棒に振ったという噂。
またもや揺れている様子の原口を見て、心は自分の気持ちに気づくのですが……。
はじめは無愛想に思えた原口ですが、どんどん恰好よく見えてきます。彼の選択もちょっと意外でした。
魅力的な物語です。まはらさん、旋盤まわしたことがあるんですかと尋ねたくなるほど機械と「近い」。
<ものづくり>に関わる皆さんにエールを送ります。
実際に工業高校を見学に行ったとき、一般的に学科の内容がよくわからないまま進路を選ぶことはできないと感じました。例えば、電気科と電子科では学ぶことが違うのだそうです。機械科に入ってから、どういう興味をもっているのか聞かれて、「自動車を作りたい」という生徒がいて唖然としたという話も聞いたことがあります。
機械科は旋盤を使ってねじや工業部品を作ります。職人としての基礎を学んでいくのですね。
心の家はかつて町工場を営んでおり、幼い頃は毎日のように通って、祖父たちの仕事ぶりを眺めていました。けれど、ある裏切りがおきて、祖父は倒れ工場は倒産したのです。そのことから、プログラミングの方が信頼できると思った心は、コンピューターの研究部に入部します。
けれど、切削実習での心の作業の様子に目をとめた<ものづくり研究部>の中原先生から手伝いを頼まれ、なりゆきで参加することに。
もともと断るつもりだったのですが、講師役の小松さんの技に引かれてしまったのです。旋盤の音に祖父を思い出し、言われるままに作業をするうちに、心は<ものづくり>に魅了されていくのでした。
もう冒頭から涙腺が緩みそうで。
祖父の工場への思い入れの様子に揺さぶられます。そして、旋盤の鬼のような顔をした原口の、「ものづくりは、楽しいからだ!」というまっすぐな言葉。
次第に仲間たちとの活動に夢中になり、自分もものづくりコンテストに出たいと考えはじめた心ですが、集中力を欠き、思わぬけがをしてしまいます。職人にとって手は命。祖父も口癖のように「大事なものは体の中に詰めておけ」と言っていた。(この前に小松さんの「測定器もセンサーも自分の体の中に入れろ」という言葉があります。この対をなしたせりふ、二人が旧知の仲と知ったあとだと印象深いです)
さらに女子であることから傷つくような一言を受けて落ち込みます。
仲間たちも着々と力をつけ、とくに亀井くんの技術の確かさに羨望することもありますが、心はひたむきに目標に向けて歩んでいくのです。
「何かに一生懸命になっとる時、それが本物かどうか、人は時々試されるんよ。本物になりたかったら、そこで踏ん張れ」
大山先生の言葉も胸にしみます。
揃ってコンテストの代表に選ばれた心と原口ですが、なんと別れた彼女から原口にメールがきます。友人吉田の話によると「めっちゃかわいい」らしい。医大生と付き合うことにしたので、原口は振られ、そのショックで昨年のコンテストを棒に振ったという噂。
またもや揺れている様子の原口を見て、心は自分の気持ちに気づくのですが……。
はじめは無愛想に思えた原口ですが、どんどん恰好よく見えてきます。彼の選択もちょっと意外でした。
魅力的な物語です。まはらさん、旋盤まわしたことがあるんですかと尋ねたくなるほど機械と「近い」。
<ものづくり>に関わる皆さんにエールを送ります。