くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「暗い越流」若竹七海

2015-08-06 17:40:54 | ミステリ・サスペンス・ホラー
 若竹さんが推理作家協会賞をとったと聞いて気になっていたのですが、やっとその本が読めました。「暗い越流」(光文社)。
 ここのところ、新装版とかシリーズ短編集とか出ているので、若竹さんの復活が嬉しいところです。
 この本はハードカバー。葉村晶もの「蠅男」に始まり、「暗い越流」「幸せの家」「狂酔」「道楽者の金庫」が収録されています。
 ラストも葉村なんですが、この構成だと「暗い越流」のある部分を伏せるには合っているかなと思いました。
 わたしは「幸せの家」がおもしろいと思いました。突然の編集長の死。雑誌記者の主人公はライターの南とともに取材対象の家を回ります。というのも、編集長は恐喝で命を縮めたのではないかとの疑惑があり……。
 この南は、「暗い越流」にも登場します。だから、ストーリー自体は地続きなんでしょうね。多分「葉崎」での出来事なのだと思います。
 若竹さんは、ストーリーの結末のあとにさらにひねりがある人なので、「幸せの家」も「暗い越流」も、解決の向こうに一つの事件が俯瞰される。
 「狂酔」はアルコール中毒の男が、教会にたてこもる。幼い自分に降りかかった事件についてシスターたちに語るのですが、彼が本当に知りたいのは……。でも、これは途中でわかってしまうので、余り好みではないですね。
 「道楽者の金庫」は、ある金持ちの金庫の鍵がわりになるこけしをとりに東北に向かう葉村晶が登場します。こけしというと、わたしとしては鳴子や遠刈田のイメージなんですが、今回は福島の土湯温泉。
 若竹さんもこの町に来たのかもしれませんね。