くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「ベンハムの独楽」小島達也

2012-12-16 20:09:05 | 文芸・エンターテイメント
 「夏休みの拡大図」という本を買ったのですよ。でも、一話しか読んでないんです。もう冬休みになってしまうー。巻末に、デビュー作が多彩なテイストで評判になったと紹介されていたので、まずそっちを読んでみることにしました。「ベンハムの独楽」(新潮社)。
 巻頭の「アニュージャル・ジェミニ」がすごくおもしろかった。というよりも、こういうモチーフが好みなんだと思います。双子の姉妹、真紀と早紀。まばたきで意識が振り替わる二人。早紀は明るい人気者で、真紀は孤立しています。
 真紀を消し去らねばならないと決意した彼女は……。
 読み終えて◆と◇の意味に気づいたときにはぞくっとしました。これはすごい。視点の問題って結構処理が大変だと思うんですよ。
 その後も、早紀は仲良しの絵実、美央、律子とともに登場します。エンディングでは彼女のダークな行く末も提示されて、なかなかスペクタクル。しかも、それぞれの短編が相互に関わりながらも、タッチは結構違います。サスペンスフルなもの、ほのぼの系、SF、ミステリーって感じですかね。
 「スモール・プレシェンス」は五分先の未来が見えるようになった長谷川が、学生時代の友人兵頭に相談を持ちかけます。カウンセラーの兵頭は、なかなか彼の言うことを信じようとしませんが……。
 ここに登場する鳩羽さんがメインなのが「ザ・マリッジ・オヴ・ピエロット」。刑事の久保さんが携帯の呼び出し音に使っているのが「涙のカノン」で、絵実の彼氏の住むアパートの隣人も同じ曲です。(同一人物?)
 こういうしりとりのような構成、いいですよね。
 「まばたき」って、意識していないだけで実はかなり頻繁にしているものだから、ちょっとこの入れ替わりはどうかと思わないでもないですが。
 「夏休みの拡大図」を読むモチベーションが高まってきました。楽しみです。