くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「九杯目では遅すぎる」碧井上鷹

2011-02-16 05:38:59 | ミステリ・サスペンス・ホラー
やっと買いました。碧井上鷹「九杯目では遅すぎる」(双葉文庫)。
またもや「4ページミステリー」の再録があり(表題作も)、ちょっと残念な気がしないでもないですが、このギミックの鋭さはさすがです。
いちばんおもしろかったのは「キリングタイム」(意味は「暇つぶし」)。彼女との待ち合わせのはずが、部長に声をかけられて飲みに行くことに。断りたいところだけど、ある理由があって……。
わたしだって「パパ」と同じことを叫びたくなるよー。やられました。
でも、それだけでは終わらない、主人公の佐伯を、部下の御子柴と呼び間違うくせが、実は伏線になっているというものすごい技に、うならされてしまいます。まさに「キリングタイム」です。
あとは「私はこうしてデビューした」もいい味出していました。ラストでひっくり返る構成の妙が味わえます。合作って、難しいよねぇ。
「タン・バタン!」は、頭の中に実際にあるわけでもないそのメロディが聞こえるような不思議な短編です。
不幸な串本さんが、どんどん負のスパイラルにはまっていくのが気の毒です。こういう脳内変換の方は、「デビュー」の狛江も同じですね。
で、前回「4ページ」で読んだときも思ったのですが、「清潔で明るい食卓」のギネスには毒が入っているのですよね?
これを浸したパンを食べた愛猫は、妻に隠されますがもだえ苦しんで死んだ模様。主人公が亡くなると全財産は新婚の妻(元看護師)が受け継ぐ手続きがされている。
でも、こんなにあからさまな毒殺ではすぐばれてしまうのでは。もうしばらくじーっと我慢すれば間違いないと思うんだけど。
全編これだまし絵のような碧井上鷹作品、非常におもしろいです。次はどれを読めばいいのでしょうか。なんとなく短編の方が好みっぽい感じなんですが。