くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「緑瑠璃の鞠」久保田香里

2010-09-14 05:29:37 | YA・児童書
すごく表紙が印象的で、読んでみたかったのです。平安もの好きだし、なんというか、たたずまいが。挿絵は十々夜さん。いいですー。
久保田香里「緑瑠璃の鞠」(岩崎書店)。結構好みでした。始めの方で「とんでもございません」という台詞が出てきて、これ、平安ものなのにもう日本語に乱れがあるよ……と思ったんですが、全体としては楽しかった。そうですね、「ラブパック」(大和和紀)が好きな方ならこの感じを分かってもらえるのではないかと思うのですよ。だって、都を騒がす夜盗「闇の疾風(はやて)」が登場するんですよー。

もとは由緒正しい血筋のお姫様なのに、父親の死後にすたれた屋敷に住む夏姫。乳母子のわかぎは今はほとんど使用人もいないなか、女房の鈴菜と家作を行う茂じいとともに奮闘します。幼なじみで検非遺使に仕える加也が、疾風を追ってやってきた次の日、大江藤高と名乗る男が現れます。亡き殿様に恩を受けたという藤高は、屋敷の修繕に手を尽くし、夏姫もその訪れを待つようになるのですが。
ふとしたことから藤高が語る経歴が嘘だったことを知ったわかぎは、思わず彼のあとを尾いていきます。そして、その正体が疾風であること、どうも先日忍びこんだときに大切なものを落としていったらしいことに気づくのです。
大切なもの。わかぎは、人の心を忘れさせる緑瑠璃の鞠のことかと思います。それは鬼の宝とも言われるもので、細かなガラスでできていて暗闇でもぼんやり光るのです。
冒頭の緑瑠璃の鞠を小鬼が女童に渡すエピソードが、そんな具合につながってくるとは思いませんでした。
鞠を狙うあやかしの常葉、藤高の心とはどんなものなのか、姫の思いも愛おしくて、しっとりと胸にしみてきます。
久保田さんて、「氷石」の作者の方なんですね。今度読んでみようと思います。