くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「The MANZAI」⑤ あさのあつこ

2010-09-08 04:51:47 | YA・児童書
んー、歩ってこんなにしゃべってばっかりの子だっけ?
前作で、仲間っていいな、というテーマが色濃く表れていましたが、これはちょっとだらだらしすぎのような。大晦日から元日にかけてずーっと書いてあるのですよ。で、何か事件があるかというと、初詣で歩が酒樽にぶつかって酔っ払う、くらいです。あとは蓮田が進学について困っているという噂。とにかく仲間たちとずっとしゃべっている感じ。
でも、ファンはそこがいいのでしょうね。物語そのものよりキャラクターで読ませるシリーズだと思います。まんがみたいだし。ただ、ほかのあさの作品と比較すると、どうも物足りない。
あ、わたし、どちらかというとあさの作品に漂うカラーは苦手です。毒のようなものがある。でも、それがオブラートで包まれたようなこの作品、どうも疑問を感じるのです……。
あさのあつこ「The MANZAI」⑤(ピュアフル文庫)。④までは図書室にあるので、今回⑥が出て完結ということを聞いたので買いました。寄贈。
でも、中学生はこういう雰囲気の小説は好きでしょうね。「バッテリー」も「晩夏の甲子園」も人気があります。ひょっとしてあさのさん、BL好きの女の子に同人活動してほしいのかしら、と深読みしたくなるほど、森口が歩と秋本にからんできます。歩自身も、秋本に「だから、おまえのこと、めっちゃ好きやねん」といわれて、それって「I love You」という意味か、と自問自答したり。
ところで、わたしはあんまりテレビを見ないので疑問なのですが、この二人の漫才って、おもしろいのでしょうか……。正直いって、わたしにはそれほどのものとは思えないのですが。
森口たちは「チーム・ロミジュリ」を立ち上げると息巻いているし、秋本のお母さんは「歩くんをあゆちゃんと呼んで応援しよう会」の仲間を増やしているし、看護師の多々良さんは患者さんに「まだ中学生やからアマなんやけど、直にプロデビューするから。応援したってな」と二人を紹介するのです。
わたしも普段から中学生に接する身、彼らの感覚でいえば充分におもしろいだろうとは思います。さすがにエンターテイナーあさのあつこプロデュースですからね。ただ、それはやっぱり文化祭というステージの上だから、だよね。なんのゆかりもないおばちゃんとしては、引き続き「漫才コンビ」として応援、となると首をひねります。
それに、わたしが多々良さんだったら、こういう言い方での励ましはしないように思うのですが。
直にプロデビュー。安易に口に出していいことではないと思うのです。歩は自分に漫才をする気がないから否定していますが、実際に例えばバンドを組んでいたり、プロ野球選手を目指している子に、「すぐにプロ」なんていうのは、やっぱり無責任な発言ではないかと。
そうですね、言う人は言うでしょうね。でも、そういう人の比率が高い。二人の漫才は、そういうレベルなんでしょうか。
地の文が全くなくて、台詞でつなぐページも多かったのですが、まあ、漫才のスピード感を出すにはいいでしょう。
で、時々地の文で歩がいいことを言う。言葉についてとか、笑いについてとか。そこは、よかった。
さて、公立の商業高校でトップになって奨学金をもらう予定の蓮田くん。育英会って、トップじゃないと駄目なんだっけ? 確かに学力の基準はあるけど。
今回、あさのさんは年越しに焦点を当てて、普通の一日をじっくり書きたかったのかな、という感じです。実験的、なのかしら。
まあ、⑥の着地に期待したいと思いつつ、読了しました。