ポポロ通信舎

(旧・ポポロの広場)姿勢は低く、理想は高く。真理は常に少数から・・

荻上チキの「出会い喫茶」精力取材

2016年06月12日 | 研究・書籍

TBSラジオSession22でおなじみの若い評論家、荻上チキの本『彼女たちの売春(ワリキリ)』(扶桑社、2012年)を読んでみました。副題は「社会からの斥力、出会い系の引力」

現代の売買春事情を、荻上チキと助手役のナナとで収集した実録データに基づきその社会的背景、原因に迫る。さまざまな売買春の形がありますが、その一つ「出会い系喫茶」に着目した。そのルーツを求め、はるばる発祥の地、大阪に出向き、同喫茶の考案者を直接取材を試みた。「アングラな世界に生きてきた僕なりに社会にどのように貢献したら良いかという気持ちで始めた」と売春女性からの搾取を減らすため雇用関係をなくした喫茶方式を考え着いた動機を考案者は語る。驚くことばりですが、たしかにそれも一理ある。いやそれ以上の意味を感じてしまう。

データから見ても今も昔も「経済的」理由が一番だ。貧困型売春、格差型売春・・享楽的な時代とはいえ本質はそう変わらないことを知る。「知る→わかる→動かす」まさに荻上チキの世界なのか。

3.11以降の取材で福島に住み昼間は工場勤務、夜はワリキリの女性の言葉が切なかった。放射線量は気にならないとし「はい、病気になったらどうせ死ぬのだし。それよりお金のほうが心配」 これって彼女に限らず、いま3.11以降を生きるこの国の多くの人たちの心情に共通しているように思えてならない。

荻上チキの取材力、問題認識力に敬意を表したい。荻上チキはまとめた「n個の社会問題の数だけn個の処方箋、n個の排除の数だけn個の包摂を買春男に彼女たちを抱かせることをやめたいなら、社会で彼女を抱きしめてやれ。そうすれば事態は幾分マシになる彼女たちの売春、それは僕たちの問題でもあるのだ

いいぞ! 荻上チキ!!

 

彼女たちの売春(ワリキリ) (SPA!BOOKS)
荻上チキ 
扶桑社

 

港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ

コメント
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