ポポロ通信舎

(旧・ポポロの広場)姿勢は低く、理想は高く。真理は常に少数から・・

戦場でバカ!と叫ぶ精神を忘れない

2015年07月16日 | 研究・書籍

イラクで凶弾に倒れた戦場カメラマン橋田信介さん。今から11年前に発行された橋田さんの書を読んでみました。『世界の戦場で、バカとさけぶ』。

2015年の現在に至るまでこの国の基本の政治・外交の流れは変わっていないことを知りました。
当時は小泉内閣。
「イラクに大量破壊兵器があるといって小泉政権は戦争に協力したにもかかわらず、それが出てこないのはなぜか?」との国会での野党質問に、小泉首相は「フセインが今イラクにいないからといって、フセインがいないということにはならない」となんともヘンテコな答弁で返す。「フセイン」を「大量破壊兵器」に置き換えてみても意味不明な発言です。本当の答えはもっと分かり易く「イヤー、大量破壊兵器はないことはハナからわかっていたんですけど、わが国はアメリカの子分ですのでしようがないんですよ。そこんとこ、ヨロシク!」と小泉調でいえばよいものを。思わず笑ってしまいました。

ごり押し瓜二つ小泉、安倍政権

当時も「イラク戦争には疑問、アメリカを説得すべき」と中曽根、橋本、細川、羽田などの歴代総理が苦言を呈していたという。それに対して小泉首相は「熟考する!」と。「熟考」とは政治用語で「不可能」という意味。なんだか、今回の安倍政権の無理押しの安保法制にもそっくりですね。

著者は、(戦場に)戦闘と非戦闘地域などの区分はない。「安全地帯とか非戦闘地域という言葉は日本の政治家がつくり出した平和ボケの幻想語だ」とも。

世界平和に逆行、公明党

「公明党さん、それはないでしょう?公明党の母体である創価学会は世界平和を信奉する宗教団体のはずなのになぜイラク戦争に反対しないのでしょうか」「イラク戦争に対しては朝日新聞は反対、読売新聞は賛成と分かれました」、今度の安保法制でもまったく同じ図式ですね。

さてその後、歴史はどう語ったでしょうか。2004年にイラクに大量破壊兵器がなかったことはアメリカのパウウェル国務長官が認め、アナン国連総長は「イラク戦争は違法だった」とまで発言。戦争の前提(大義)は根底から崩れさったのです。

小泉政権は「テロ特措法」を作ってイラク戦争には協力した。それでもまだ「特別措置法」という臨時的なものだった。しかし、今回の安倍政権では無期限の「恒久法」で戦争参加を表明しようとしています。

土下座外交はやめなさい

一方で著者は「土下座外交はやめなさい」とも。かつて村山首相がマレーシアのマハティール首相に「日本は戦争で悪いことをしました」と謝罪。それに対してマハティール首相は「いつまでそんな過去のことをグジャグジャいってるんだ。アジアの経済大国としてもっとやらなければならないことがたくさんあるだろう」と。その通りと思います。

著者橋田信介の様な国際感覚を持った人が、カメラマンといわず今、日本に一番必要な信念のある外交官になってほしいところでもあります。

奥さんの橋田幸子さんの編集による『世界の戦場で、バカとさけぶ』。今著者の精神を受け継いで私たちも勇気を持ってあらゆる不条理に対して「バカ!」と叫びたいと思います。それこそが著者に対しての弔いにもなりましょう。合掌。

 

世界の戦場で、バカとさけぶ
橋田信介著 橋田幸子編
アスコム(旧アスキーコミュニケーションズ)

 

橋田信介(戦場カメラマン)

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする