ポポロ通信舎

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ネット帝国主義考

2011年02月26日 | IT関連

『ネット帝国主義と日本の敗北』
インターネットの世界で、米国企業だけが莫大な利益を上げていることに、日本の国益の視点から問い直しているおもしろい本でした。

私たちが日常使うパソコンは、セット組み立て(メーカー)は仮に韓国や台湾からのものであっても、電源を入れまず起動するBIOS、そして立ち上がるOSを始め、箱の中で駆動しているCPUはintelなどすべて米国製。ネット閲覧ソフトのブラウザはIE、最初に訪れるポータルサイトがGoogle、フリーのメールはHotmailやGmail、そしてお買い物はamazon。。
こうしてみると確かにどれもがアメリカ一色の寡占状態。日本のネットサービス市場の90%以上が米国製と数字の上でも明白に示されている。

「悪く言えば日本のネットは米国の植民地になっている事実に対して竹中大臣(当時)を米国原理主義者と非難していた人たちでさえも日本のプラットフォームレイヤーが米国に支配されていることになぜか怒らない」と著者、岸博幸氏は冷笑する。

著者は、竹中平蔵蔵相(=当時)の補佐官で政府秘書官として同大臣の側近だった人。
その経歴からしても本書のテーマには意外性があって興味深かった。

また著者は、ネットの世界に国境がないということは虚構でコンテンツレイヤーは国境だらけという。たとえば米国ネットワーク局の最新ドラマを日本からアクセスしようとしても拒否される。それはIPアドレスでしっかり防御されているからだ。

9.11事件後に米国では「米国愛国者法」が施行された。同法は当局が電子メール、CATV通信なども捜査令状により傍受できるようになった。治安対策上、ネット収集の権限が大幅に強化されている。国防上無理からぬことではあるものの、それによる“水面下”の情報活動まで存在することを、私たち日本のユーザーは承知しておかなければならないでしょう。

もともとインターネットはアメリカ生まれのもの。創業者利益は、十分有って当然と思います。本来「情報は金」であるのに、多くの貴重なソースが「無料」の大盤振る舞いに見えるネットの世界。その対価としてユーザーは、それによるリスクへの警戒心は怠ってはならないでしょう。俗に「タダ(無料)ほど怖いものはない」といいますからその覚悟は必要です。

それでも私は、フリーの百科事典「ウィキペディア」にみられるような善意のユーザーの結集による献身的な“共生創作マインド”を信じたい。さすれば本書の「日本の敗北」を返上できる、と。それには「敗北」を挽回するような政府レベルでのネット新法をタイムリーに打ち出すことで、それが可能ならば日本の未来は決して暗くはないと思われるからです。

【写真】岸 博幸氏

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ネット帝国主義と日本の敗北―搾取されるカネと文化 (幻冬舎新書)
岸 博幸
幻冬舎
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