魚のぶろぐ

2006/5/28~。現在復旧作業中です。ご容赦願います。 ぶろぐの写真はオリジナルです。無断転載はお断りします。

ミナミホタテウミヘビ

2021年07月18日 23時24分00秒 | 魚紹介

最近我が家に新しい魚がやってきました。ウミヘビ科・ミナミホタテウミヘビ属のミナミホタテウミヘビです。

本種はホウライウミヘビという魚に似ている。獲れたばかりの写真を見ていると、ホウライウミヘビの特徴である鞍状斑が見えたのでホウライウミヘビかと思われたのだが、到着した時にはもうすでにこの斑紋がなくなっていた。

この種は背鰭前方が黒いところなど、ホタテウミヘビによく似ているところがある。しかしいくつか異なる点がある。

ミナミホタテウミヘビの頭部

まず頭部の感覚孔。ホタテウミヘビは黒く縁どられるのに対し、本種はわずかに周囲が黒っぽいだけ。

ミナミホタテウミヘビ上顎

ミナミホタテウミヘビ下顎

最も重要なのが顎歯の形状。ホタテウミヘビは歯が鋭いのに対し、このミナミホタテウミヘビでは粒状の歯が歯帯を形成している。おそらく甲殻類などを食べるのに都合がいいのだろう。これにより本種はミナミホタテウミヘビ属に入れられている。本種はもともとホタテウミヘビ属とされていたが、ホタテウミヘビがウミヘビ属に移されたため、本種が含まれる属はミナミホタテウミヘビ属となった。この属は日本産は2種類で、本種とゴマホタテウミヘビが含まれる。ゴマホタテウミヘビは本種に似るが背鰭の位置が異なる。フチナシウミヘビという種も本属に含まれたが、歯の形状からウミヘビ属に移されている。

食についてはあまりいい評価は聞かれない。ウミヘビ科・ウミヘビ属の一種に「マルアナゴ」という魚がいるが、このマルアナゴは食用とされている。南米西岸沖の東太平洋に生息していて、多量に漁獲される。これが「あなごのかば焼き」として販売されるのだ。ペルー産のかば焼きは本種。しかしミナミホタテウミヘビのかば焼きは骨が多く、どうやっても骨が口にあたってしまう。結局のところ、食すことは困難であった。

今回のミナミホタテウミヘビは長崎 印束商店の石田拓治さんより。いつも、ありがとうございます。

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最近見ない魚たち

2021年07月15日 22時33分57秒 | 魚紹介

魚をやっていると新たな出会いはたくさんあるが、その一方で10年以上出会えていないという魚もいる。今回はそんな魚たちをご紹介したい。

オグロテンジクダイ

 

2006年に高知県で採集(というより死亡していて港で浮いていたのを掬った)。高知の磯や防波堤には何度も繰り出しているし、夜間の防波堤釣りも楽しんでいるのだが、このオグロテンジクダイについては後にも先にも1回しか出会えていないのである。しかしそもそも私はなぜか、赤いテンジクダイには縁がない。採集についてはリュウキュウイシモチに1回遭遇しただけ。あとはハナイシモチを譲ってもらったのみである。

 

 

ホソヒラアジ

2007年に沖縄・泡瀬で購入したもの。先日もテルメアジを紹介した際に名前だけ出したが、実物を見たのは後にも先にもこの1回だけである。三重県や相模湾、九州の沿岸でも漁獲されているようだが、本種は九州以北では希少な種である。あまり群れずまとまって獲れることはないのがその理由だろう。奄美諸島以南ではたまに漁獲される。なおこの個体はメアジといっしょにパッキングされていたもの。

 

リボンスズメダイ

スズメダイの一種で、河口域や内湾で時として大きな群れをつくる。以前奄美大島へ遠征した時には、河川の影響を受けるような場所で大群で見られた。しかしそれっきりその姿を拝むことはできていない。同様にクロリボンスズメダイも同じくらいご無沙汰である。一方スミゾメスズメダイは石垣島などで採集している。琉球列島の河川汽水域で見られるスズメダイといえばだいたいがこの3種類である。

 

フエダイ

種の標準和名で「~フエダイ」とつかない、ノーマルな「フエダイ」である。そういうノーマルな魚だと個体数は多いように思われるが、私にとっては残念ながら2008年を最後にお目に罹れていない種類。通称「ホシ」「シブダイ」ともよばれ、体側の白い点が特徴。もともと熱帯に多いナミフエダイという種類と同じ種とされたが、のちに新種記載された。大きいものは「コガネフエダイ」という和名がついたこともあるなど黄色い体がきれい。ただし本種については宮崎などでは本種の釣り文化があるし、お金を出せばまだ手に入りそうな種類ではある。

 

スダレヤライイシモチ

2007~2008年に採集しただけの種類。幼魚も稚魚も数多く安定して見られたし決して絶滅したのではないだろうが、その後高知県では頻繁に夜釣りをしているがヤライイシモチ属はリュウキュウヤライイシモチしか釣れていない。種のいれかわりが起こってしまったのかもしれない。成魚は生時、メタリックカラーが美しいのは本種とリュウキュウヤライイシモチで共通している。幼魚(上)はそれほどではないが成魚(下)は運搬に弱いため飼育が難しい。

 

サビクダリボウズギスモドキ

この種についてもここ10年以上出会えていない。というより私が入手したというものではなく、知人から譲り受けたものである。この種はハゼの仲間のようにも見えるが、実はテンジクダイ科の魚である。普通のテンジクダイとは異なる、異様な色、メタリックブラウンのカラーは衝撃的なものであった。全長10cm弱という小魚であり、食用になるなんていうこともまずないので、手に入れることは困難な種類。

 

ムスメウシノシタ

この種は宇和海で採集されていて、宇和島のきさいや広場の中にある「みなみくん」でマダイやらカイワリやらと一緒のパックの中に入っていたものを購入したものである。しかしその出会いが今のところ最初で最後。その時は残念ながら食用にすることができなかったので、次回入手したらぜひとも食べてみたいものである。ダイバーによりよく撮影されているので、決して少ないなんていうことはないのだろうけれど。

 

メナダ

ボラ科の一種であり、「シュクチ」「アカメ」という地方名がある。日本の広い範囲に生息する(北海道~有明海)。とくに有明海では数が多く食用魚とされているが、最近は見ていない。もっとも本種が多い地域にはなかなか行くことができていないというのも本種になかなか出会えない理由といえそうではあるが。残念ながら写真はない。血を抜いたあとがあり、耳石を採取することさえできなかった。

 

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ニセモチノウオとヤノリボンスズメダイ

2021年07月14日 22時59分06秒 | 魚介類飼育(海水)

しばらくぶろぐ更新をお休みしていました。

海水魚水槽に先月、新しい仲間が加わりました。ニセモチノウオです。これは四国遠征に行っていた知人に送っていただいたもの。ぷりぷりした体系をしていて、丈夫で餌もよく食う、そしてきれいとアクアリウムで人気になる要素が多く、実際アクアリウムショップではよく見られるもの。ただし性格がやや強めなので混泳は注意。スズメダイやら小型ヤッコとの飼育は問題なし。ただ混泳は90cm以上の水槽を推奨。

餌は我が家にやってきた当日から食う素晴らしいコンディション。当日は隔離ケースに入れておいたが、フェアリーラスに威嚇されまくりでサンゴ水槽に入れられないと判断。

ということで魚水槽に。縞模様が取り上げられやすいのですが、頭部にある白くて細かい斑点が美しく、またよくのびる臀鰭棘も格好いいものです。強めな性格も、90cm混泳水槽のスズメダイ相手では、あまり問題になりません。

一方残念ながらニセモチノウオを水槽に入れた後、ヤノリボンスズメダイが先日亡くなってしまいました。健康そうではありましたが、なぜかわからず死んでしまいました。ほかの魚からとくにしつこく追われていたという感じはありませんでした。水かえの直後だったのですが、もしかしたらpHショックだったのか...。悲しいです。

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謎のアカエイ属

2021年07月10日 21時43分02秒 | 魚紹介

我が家にアカエイと思われるエイがやってきた。最近食べてきたエイはみなガンギエイ科のエイであった。そのため当ぶろぐでもアカエイの紹介は久しぶりである。というか、紹介していたとは思ったが記録はなかったようだ。ごく普通にみられるエイであったが、おそらく初登場になるものであろう。

ただこの個体をアカエイとするのには疑問点がある。まず体盤腹面縁辺の色である。アカエイは黄色みが強いのだが本種はそのようになっていない。アリアケアカエイの可能性もあったが、アリアケアカエイでは鰓孔の下の溝の様子が違う(本個体ではしわのよう)。また体盤縁辺の色彩も違うようだ。一方シロエイというのはこのような体盤腹面の色彩をしているようだ。しかし、本個体は噴水孔の周辺が黄色い。これはシロエイと違うところである。

皮褶の色彩は黒い。これはアリアケアカエイとはことなり、アカエイとシロエイの特徴である。もっとも、このサイズの個体では特徴がでていない可能性もある。結局、種類は残念ながらよくわからない。アリアケアカエイもアカエイも長崎ではよく見られ、シロエイは有明海のほか五島列島近海にすむが、おそらくは朝鮮や中国のほうに多い種類であろう。

アカエイ属は「日本産魚類検索」第三版では10種ほどが掲載されているが、現在は日本産アカエイ属魚類はアカエイ、イズヒメエイ、アリアケアカエイ、オナガエイ、シロエイの5種のみで、ほかは別属に移された。さらにアカエイ属の属学名もDasyatisから、Hemitrygon属に変更になっている(Dasyatisは東太平洋-大西洋産のものとされた)。

アカエイの仲間の尾には大きな棘がある。これには毒があるため、刺されると激しく痛む。大型の個体だと、刺さりどころが悪いと命を落とすこともある。実際に「シーシェパード」のシンパの、著名なダイバーが2006年にオーストラリア近海でアカエイの仲間(種は不明)に刺されて死亡したケースがある。そのため市場に出ているときにはこの棘が切り落とされていることが多い。そのためこの仲間はよい写真が撮影できていなかった。しかしようやく棘付きのよい個体を今回入手できた。

今回のアカエイ属は唐揚げにして食べた。同定に難儀した個体ではあったが、調理については悩むことはない。きわめて美味しい。

 

今回の謎のアカエイ属は長崎 印束商店の石田拓治さんより。いつもありがとうございます。

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ヨゴレアオダイ

2021年07月09日 21時04分29秒 | 魚紹介

最近、長らく入手したかった魚を何種か購入することができた。この魚もそのうちの一種。ヨゴレアオダイという。

 

見た目はアオダイに似ているが、体色がやや黒っぽいのが特徴だ。分布域は広く、わが国では主に鹿児島県以南、琉球列島、小笠原諸島に分布。海外では紅海・東アフリカからマルケサス諸島、ピトケアンまで見られるという。なお本種のタイプ産地は沖縄島のもので、1962年に阿部宗明博士らにより新種記載された。記載論文の終わりにはカラー写真が掲載されているが、当時のカラー写真の雰囲気が好きである。

島嶼域のやや深い岩礁域で見られる種であり、釣りなどによって漁獲される。今回の個体は吐噶喇列島産、そんな場所があるのだろう。オオヒメやアオダイなどと一緒に漁獲される魚である。

ヨゴレアオダイとアオダイは鰭の色彩でも見分けることができる。ヨゴレアオダイの鰭は赤みを帯びている。尾鰭のほか、背鰭、臀鰭、胸鰭、腹鰭の各鰭が赤い。

こちらはアオダイ。この属は日本には5種生息する。アオダイはヨゴレアオダイに似ているが、鰭の色が明るく、体のブルーが非常に美しい種類である。味も非常に美味しい種類であり、けっこう高価な魚でもある。シマアオダイやヤンバルシマアオダイも食べていて写真も撮影しているが、唯一ウメイロはまだきれいな写真が撮れていない。青い色があせやすいようなのだ。

なおヨゴレアオダイに近いものにParacaesio brevidentataというのがいる。インドネシア産とのことでなかなかお目に罹れないが、上顎骨の鱗の有無や頬の鱗などにちがいがあるようだ。

ヨゴレアオダイもアオダイ同様食用魚として扱われる。脂がよくのり、身も美しく、味もかなり美味しい。

今回の個体も鹿児島の田中水産 田中積さんより。いつもありがとうございます。

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