魚のぶろぐ

2006/5/28~。現在復旧作業中です。ご容赦願います。 ぶろぐの写真はオリジナルです。無断転載はお断りします。

クラゲウオ

2021年07月08日 20時30分01秒 | 魚紹介

長崎からやってきた珍しい魚。

購入したのは「クラゲウオ」。スズキ目エボシダイ科スジハナビラウオ属の魚である。

クラゲウオは幼魚はクラゲの下にいて、大きくなると深場を遊泳する。成魚はほかの種と混同されていたのか、従来の図鑑では「幼魚しかしられていない」とあったが、近年は底曳網漁業などで成魚が漁獲されている。この個体は長崎県産だが、鹿児島や台湾など、東シナ海では最近定期的に水揚げがあるような気がする。エチゼンクラゲなどクラゲ類が多いのだろうか。なお、写真の個体は成魚である。といっても体長161mmと大きい魚ではないのだが。この仲間は鱗がはがれやすく、鰭もぼろぼろになりやすいようである。展鰭には苦労させられる仲間だ。

本種の特徴は眼の後方に長くのびる無鱗域である。これによりスジハナビラウオなどと見分けられるようだ。同じような無鱗域を持つ種にはシマハナビラウオというのもいるが、この種はクラゲウオとはことなり、吻が細長いのが特徴。

クラゲウオの肉質はかなりやわらかい。今回は刺身で食べたが美味しかった。ほかに焼き物などにして食べても美味しいであろう。

今回のクラゲウオは長崎 印束商店 石田拓治さんより。いつもありがとうございます。

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スルガネズミダラ

2021年07月07日 21時34分28秒 | 魚紹介

ぶろぐを3月末に抹消されましたので、4~5月のできごとも更新していきます。今日は非常に珍しい深海魚をご紹介。

ソコダラ科の非常に珍しい種。スルガネズミダラという。

スルガネズミダラはその名の通り駿河湾で採集されたものをもとに新種記載された。駿河湾だけでなく、土佐湾や沖縄トラフにも分布し、台湾からも知られる。属の学名はLionurusとされたが、のちにネズミダラ属となっていたが、近年、新しく設立されたスルガネズミダラ属Kuronezumiaに移された。

本種の学名Kuronezumia daraは属も種小名も日本語に由来するようである。Kuroは「黒」、nezumiaはネズミダラ属の学名であるがその由来も「ネズミ」からきている。daraは「~ダラ」のことのようである。スルガネズミダラ属の特徴は眼窩下隆起の縁の鱗が肥大しないことにより見分けられる。この部分にネズミダラなどであれば大きな変形鱗があるが、スルガネズミダラではこれがないようである。写真ではわかりにくいかもしれない。なおネズミダラ属の写真は持っていない。ごめん。

なお、日本産のスルガネズミダラ属は本種と、2020年に新種記載されたクロネズミダラの2種からなる。属の学名は「Kuronezumia」というが、「クロネズミダラ属」ではない点に注意が必要である。なお世界では7種が知られているよう。

腹鰭の鰭条数は10-12で、これはクロネズミダラと見分けるポイントの一つになる。ただしこの個体の場合、体の左右で腹鰭鰭条数が異なっていた。左側が9軟条、右側は12軟条であった(写真は右側)。どうもたまに体の左右で軟条が異なる個体がある程度いるらしく、ニュージーランド産のフクレネズミダラ(太平洋・大西洋に分布)についても腹鰭の鰭条数は体側の左側より右側のほうが1本多かったという報告がある。

臀鰭は前方が黒っぽく、その後方は白っぽい。胸鰭や腹鰭は一様に黒く、第1背鰭は下方が灰色っぽく、ほかは黒いという変わった色彩。

下顎枝は半分が鱗に覆われている。一方でクロネズミダラは後縁をのぞき鱗がない(無鱗域が広いといえる)。クロネズミダラでは頭部腹面に感覚孔が開くが、スルガネズミダラはそうならないため、区別できるようである。

スルガネズミダラはめったに漁獲されない。そのため食の情報は少ない。しかしそれでも唐揚げが美味しかったことだけはお伝えしたい。ソコダラは小さいのは唐揚げが一番食べやすいかもしれない。

今回は「ヘンテコ深海魚便」の青山沙織さんから、直接購入。ありがとうございます。

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シマハタ

2021年07月06日 18時02分36秒 | 魚紹介

今日は長崎(と書いていたが鹿児島の間違いでした、藤田くん、ごめん)から届いたカラフルなハタをご紹介。

ユカタハタ属のシマハタという種類である。

この種は体高が高く、黄色い横帯が体側に何本も入っているからだ。これにより、赤くて見分けるのがときどき難しく思えるユカタハタ属としては比較的同定しやすい魚ということがいえる。また幼魚のときは背鰭基底に黒色斑があるが、これは成長すると消えるてしまう。色はカラフルではあるが、本種の生息するやや深い岩礁域(水深100~200m)では薄暗くて赤い色は吸収され、わかりにくくなってしまうため、不都合はないようだ。

体高がやや高めであり、ユカタハタ属の中では同じように体高高めのクロハタやアザハタに近いかと思いきや、分子分類によればタテスジハタやミナミハタといった体高低めの種類と近い関係にあるらしい(Craig and Hastings, 2007※)。確かにこの3種はカラフルで、横帯、もしくは縦帯がある点が共通しているが、近縁種であるとは思われなかったであろう。シマハタはユカタハタ属以外の属に置かれたことはないが、タテスジハタとミナミハタ属はGracila属という別属のものとされたことがある。よくFishbaseなどの図鑑サイトではタテスジハタだけGracila属とされることもあるが、それならばミナミハタもこの属に含めなければいけないであろう。

シマハタは決して珍しくはないものの、私にとっては購入というのは今回が初めてである。ハタの仲間はどうしてもお値段が高くついてしまう。そのため、購入は見送ってきたのだが、最近よく魚を購入している鹿児島の田中水産 田中積社長がこの魚をFacebookでアップしており、今回ついに待望のご対面。

シマハタの頭部。眼の後方が強く盛り上がっているため、そのシルエットを見れば、アザハタやハナハタのように見える。先ほどの分類体系でいえば本種はミナミハタやタテスジハタと近いらしいため、意外なところではある。

横から見るとなかなか格好いいものの、背中から見るとちょっととぼけたような顔。

ハタ科の魚はどれも美味しいもの揃い。このシマハタも美味な種類とされる。まずはお刺身。やはりハタの仲間らしい身で、かなり美味しい。

頭や骨あどは「あら煮」にした。あら煮の「あら」はコトバンクによれば「粗」であり、𩺊ではないが、アラと同様ハタ科の魚である本種のあら煮は絶品であった。ただし、頭部は鱗をなぜかうまく落とすことができなかったので、少し鱗が気になった。

今回のシマハタは鹿児島県のトカラ列島産。田中水産の田中積さん、ありがとうございました。

※ Craig, M.T. and P.A. Hastings, 2007. A molecular phylogeny of the groupers of the subfamily Epinephelinae (Serranidae) with a revised classification of the epinephelini. Ichthyol. Res. 54:1-17.

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リュウキュウヤライイシモチ

2021年07月05日 22時03分58秒 | 魚紹介

3月下旬にぶろぐを消されたため、それによる復旧作業を行っているところである。2006年5月からウェブログをやっているから、15年近くだ。莫大な量の文字データがあるし、さらにいえば画像データの量もすさまじいものがある。

中には写真データが消失してしまったものもある。写真のリュウキュウヤライイシモチは高知県で2006年10月に釣れたもので、私にとっては初めて釣れたヤライイシモチ属の魚である。残念ながらこの2006年の8~10月のデータはノートPCのトラブルなどにより失われてしまったものも多い。この写真も何とかブログのデータ内には残ってはいたのだが、オリジナルのものはもう失われてしまったと考えるべきであろう。

リュウキュウヤライイシモチは写真のように非常に大きな牙をもち、餌の小魚にかぶりついて捕食する。夜間に海釣りをすると小型のテンジクダイ類であるオオスジイシモチ、クロホシイシモチ、キンセンイシモチ、ヨコスジイシモチなどが釣れるのだが、このリュウキュウヤライイシモチは大型になり、オキアミというよりはキビナゴなどで釣れてくることが多い。引き味も強く、最初はハタの仲間が釣れたかと勘違いした。なお、生きているときは体がメタリックに輝き、意外と美しい。

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エソダマシ

2021年07月04日 20時35分11秒 | 魚紹介

最近長らくほしかったものの、手に入っていなかった魚が3種も我が家にやってきてくれた。

これがそのうちの1種、エソダマシという魚である。エソダマシは「エソ」という名前がついてはいるのだが、エソ科の魚ではなく、ヒメ目ヒメ科の魚である。ヒメ科としては大きくなる魚であり、全長30cmにまで育つ。

従来はAulopus damasiという学名であったが、2013年にGomonらにより新しい属Leptaulopus属が設立され、本種はその中に入れられた。またヒメなどもAulopusから、復活したHime属に入れられた。学名が大きく変わっているため注意が必要である。なお、エソダマシが含まれるLeptaulopus属は2種からなり、もう1種はオーストラリア近海のLeptaulopus erythrozonatusという種類である。

なお属の標準和名がついているかどうかは不明。エソダマシは神奈川県三崎や土佐湾、鹿児島近海、琉球列島に見られ、海外では台湾とオーストラリアに分布している。つまりオーストラリアはこの属の2種が知られているようである。

従来私はヒメ科の魚はヒメしか見たことがなかった。ヒメを食べたときのことについては「ヒメを使った料理」で紹介していたと思う。今回はエソダマシも食べてみた。

エソダマシのタタキ。ようは味噌を使わないなめろうである。これが非常に美味しいのである。かなり脂っこく、魚本来の味が生きている。

今回のエソダマシは前回のイサキ同様鹿児島の田中水産 田中積さんより。ありがとうございます。

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