新・ほろ酔い気分

酔っているような気分のまま、
愚にもつかない身辺雑記や俳句で遊んでおります。
お目に留めて下されば嬉しいです。

マラソンの練習奇譚

2008年11月28日 07時38分02秒 | コラム・エッセー

 私の中学校時代、3年生にはマラソン大会があった。

 もちろんフルマラソンではない。10キロほども走ったろうか。

 それでも競走と銘打つので、遅れをとるわけにはいかない。

 密かに練習をすることになった。60年も前のことなので、どの程度の練習だったのか、今は覚えていない。

 同じ地域に住む同級生が、暗くなってから集まった。H,T,K,Sと私の5人。明るい時間帯は練習がしにくかった。子供なりに、メンツがあったのだ。

 星が綺麗だった。満天の星。天の川も流れていた。寒かったところを考えると、12月に入っていたのかも知れない。

 練習コースは単純だ。小川の脇の道を上流まで走り、橋を渡って対岸を戻ってくるコースだった。街灯はないので、星明かりが頼りだ。

 一斉に走り始めた。私だけがドンドン遅れた。友人たちは先へ行ってしまった。

 馴れた道筋なので、迷うことはなかった。恐怖心もなかった。とは言え、一人ぼっちはやるせなかった。焦りもあった。

 小川の傍らを上流へ向かって走り、橋を渡って対岸を戻ってくるだけの話なのだ。

 つい、悪知恵がよぎった。小川のこちらの岸から向こう岸へ、ポンと跳び移れば、走行距離がかなり短縮できる。私を追い越して行った連中の前に跳び出せる。魔法使いみたいなことになるではないか。川幅は1メートル程度なので、頑張れば跳び越せる。

 この誘惑には勝てなかった。この季節、蛇がいる恐れもなかった。

 しかし満天の星とは言え、向こう岸の状態はよく見えなかった。

「おっ、ここがいいぞ!」 土手がこちらへせり出している状況の対岸だった。わずかに白っぽく見えた。

 若干の助走をしてから、「えいっ!」と跳んだ。

 ボチャーン!!

 土手と思ったのは、竹の笹であった。私はずぶ濡れになった。

 ややあってから、同級生たちが走ってきた。

 ずぶ濡れの私を見て、彼らはすべてを知ったようだ。やはり「急がば廻れ」は至言なのだ。

 マラソン大会の結果は、当然のことながら私が最下位だった。

 いや、正しくは最下位が2名。H君が私と肩を並べてゴールをしてくれたのだ。へんな友情だった。

 そのH君は、2年前、肝臓癌で他界した。T君も昨年、糖尿病の合併症で亡くなった。

 K君は腹部動脈瘤の手術をしたが、現在も地元企業の社長で活躍している。S君とは年賀状だけの付き合いだ。

 60年の歳月は長い。

 それにしても、私は昔からドジだったようだ。

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コメント (14)
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