ここまでうら淋しくなっているのに、これでもか!とばかり、毎日抜け毛。
朝は枕に必ず幾本かが落ちている。長い毛髪は、すでに僅か。しかし、今もってこの仕打ちだ。
世の中はなかなか平等にはいかない。そうは思うが、ここまで踏みつけにしなくてもいいではないか!
誰かとか誰かは、顔の作りがいい上に、髪の毛もしっかりと頑張っている。
それに反して、私のこの実態は何としたことか。
平静を装ってはいるが、内心の憤りは凄まじい。
私は頻繁に床屋へ行く。
淋しい髪の毛なので、行かなくてもいいのだが、カミさんが喧しい。
「年寄りなんですから、頭くらいはチャンとしなければ……」
考えるまでもなく、これは妙な論理。淋しくなった頭は、すでにチャンとなっている。飾りようがない。
しかし、従順な私のこと、セッセと床屋通い。もちろん、床屋の若奥さんが美人であることも理由の一つ。これは内緒のこと。
しかしこの美人、髪の毛の分け方が、私の意に添わない。
もっと内側に分け目を入れてほしいのだが、どうしても少し外側に分け目を入れたがる。
髪の生え方から言えば、外側の方が整えやすい。毎朝の作業が簡単なのだ。
見習いの若いお兄ちゃんが、時々私を練習台に使う。占めたとばかり、分け目を内側に入れてもらう。
「よし、これでいい!」
ところが、若奥さんは直ちに修正する。
「もっと内側にしてよ」 私は控え目に抗議する。
しかし、一向に聞いてくれない。
「いいえ、隠せるところは隠したいですから。フフフ・・・」
なんと愛情溢れたセリフではないか。もはや抵抗はできない。
やはり世の中は不公平。格差があり過ぎる。
今や憂鬱を超越した毎日である。
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