東電旧経営陣 試算数値「小さく」 東電が打診と証言(毎日)
「津波想定小さくできないか」 強制起訴公判、東電が子会社依頼(福島民友)
詳報 東電刑事裁判 原発事故の真相は~第4回公判(NHK)
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(以下、福島民友の記事より転載)
東京電力福島第1原発事故を巡り、業務上過失致死傷罪で強制起訴された勝俣恒久元会長(77)ら旧経営陣3人の第4回公判は28日、東京地裁(永渕健一裁判長)で開かれ、福島第1原発に最大15.7メートルの津波が来る可能性があると事故前に計算した東電子会社の男性社員が証人として出廷した。男性は、東電が計算結果を受け「解析方法の変更で(津波高の)数値を小さくできないか」などと再計算を依頼していたことを明らかにした。
男性は原子力施設の設計・調査などを行う子会社「東電設計」で、第1原発に関する津波試算の責任者を務めた。東電側は初公判で「計算結果はあくまで試算にすぎなかった」と主張したが、男性は2008(平成20)年3月に結果を東電側に報告した際、「(東電とのやりとりで)何らかの対策は必要との話題は出た」と証言した。
検察官役の指定弁護士はこの計算結果が、東電が大津波を予測できた証拠の柱とみており、同社の計算結果の取り扱い方が注目されそうだ。
男性によると、東電は07年7月の新潟県中越沖地震を受け、本県沖の津波の高さについて東電設計に計算を委託。同社が、津波地震に関する政府見解(長期評価)で採用された明治三陸沖地震(1896年)をモデルに計算すると、最大15.7メートルの津波が第1原発に来るとの結果が出た。
結果を報告した男性は08年5月に東電から〈1〉数値が小さくなるよう摩擦係数などの条件を変更〈2〉沖合に防波堤を設置―した場合での再計算を依頼された。男性は「係数の変更は計算の前提が崩れる」として、明治三陸沖地震とは違う大地震をモデルに再計算。その結果も第1原発1~4号機の敷地高(海抜10メートル)を超す大津波になったという。
護岸を防潮壁で囲う想定では、被告の一人の武藤栄元副社長(67)が出席した08年6月の社内会議の資料と同じく、敷地への浸水を防ぐには10メートルの壁が必要との結果が出たとした。男性は「自分は津波の高さや広がりを計算したが、壁の厚さや実際に建設できるかどうかを考慮したものではなかった」と述べた。
次回は4月10日午前10時から証人尋問を行う。
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勝俣恒久・東電元会長ら3役員の強制起訴を受けた刑事訴訟は、2月28日、東京地裁で第4回公判が開かれた。今回は、東電のコンサル子会社であり、東電の依頼で福島第1原発事故の3年前(2008年)に津波予測をまとめた東電設計の社員、久保氏に対する証人尋問が行われたが、そこで東電3役員の「有罪」を勝ち取る上で決定的な証言が飛び出した。東電設計がまとめた津波予測(高さ15.7メートル)を「従来の計算方法を変えてでも小さくするよう、東電から再検討の依頼を受けた」というのだ。
東電が、資金のかかる津波対策をしなくてすむよう、津波予測の数値を操作しようとしていたことが暴露されたことは、今後の訴訟の行方に計り知れない影響を与えるだろう。
結果的に東電はその後、この試算を採用せず、土木学会(実際には電力会社、JRなどの企業で構成された業界の親睦団体)に改めて津波試算を依頼することで時間稼ぎをしようとしていたことがすでに判明している。久保氏がなぜ、親会社でもある東電にとって不利になるような証言をしたのか。久保氏の心中を察する術は当ブログにはないが、東電設計で津波予測をまとめた技術者たちは、自分たちの試算に絶対の自信を持っていたはずだ。それにもかかわらず、親会社に自分たちの試算を否定されたことに対して、内心、忸怩たる思いを抱えていたとしても不思議ではない。また、自分たちは親会社に不利となるような試算であっても確実に報告したと証言することで、東電設計に「火の粉」が飛ばないようにしておきたいとの思いもあるかもしれない。
いずれにしても、この証言が出たことで訴訟は検察官役の指定弁護士側にとって有利な展開になったと思う。3月は公判は開かれず、次回、第5回公判は4月10日となる。
なお、科学ジャーナリスト添田孝史さんの傍聴記が発表された場合には、改めて掲載したい。
「津波想定小さくできないか」 強制起訴公判、東電が子会社依頼(福島民友)
詳報 東電刑事裁判 原発事故の真相は~第4回公判(NHK)
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(以下、福島民友の記事より転載)
東京電力福島第1原発事故を巡り、業務上過失致死傷罪で強制起訴された勝俣恒久元会長(77)ら旧経営陣3人の第4回公判は28日、東京地裁(永渕健一裁判長)で開かれ、福島第1原発に最大15.7メートルの津波が来る可能性があると事故前に計算した東電子会社の男性社員が証人として出廷した。男性は、東電が計算結果を受け「解析方法の変更で(津波高の)数値を小さくできないか」などと再計算を依頼していたことを明らかにした。
男性は原子力施設の設計・調査などを行う子会社「東電設計」で、第1原発に関する津波試算の責任者を務めた。東電側は初公判で「計算結果はあくまで試算にすぎなかった」と主張したが、男性は2008(平成20)年3月に結果を東電側に報告した際、「(東電とのやりとりで)何らかの対策は必要との話題は出た」と証言した。
検察官役の指定弁護士はこの計算結果が、東電が大津波を予測できた証拠の柱とみており、同社の計算結果の取り扱い方が注目されそうだ。
男性によると、東電は07年7月の新潟県中越沖地震を受け、本県沖の津波の高さについて東電設計に計算を委託。同社が、津波地震に関する政府見解(長期評価)で採用された明治三陸沖地震(1896年)をモデルに計算すると、最大15.7メートルの津波が第1原発に来るとの結果が出た。
結果を報告した男性は08年5月に東電から〈1〉数値が小さくなるよう摩擦係数などの条件を変更〈2〉沖合に防波堤を設置―した場合での再計算を依頼された。男性は「係数の変更は計算の前提が崩れる」として、明治三陸沖地震とは違う大地震をモデルに再計算。その結果も第1原発1~4号機の敷地高(海抜10メートル)を超す大津波になったという。
護岸を防潮壁で囲う想定では、被告の一人の武藤栄元副社長(67)が出席した08年6月の社内会議の資料と同じく、敷地への浸水を防ぐには10メートルの壁が必要との結果が出たとした。男性は「自分は津波の高さや広がりを計算したが、壁の厚さや実際に建設できるかどうかを考慮したものではなかった」と述べた。
次回は4月10日午前10時から証人尋問を行う。
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勝俣恒久・東電元会長ら3役員の強制起訴を受けた刑事訴訟は、2月28日、東京地裁で第4回公判が開かれた。今回は、東電のコンサル子会社であり、東電の依頼で福島第1原発事故の3年前(2008年)に津波予測をまとめた東電設計の社員、久保氏に対する証人尋問が行われたが、そこで東電3役員の「有罪」を勝ち取る上で決定的な証言が飛び出した。東電設計がまとめた津波予測(高さ15.7メートル)を「従来の計算方法を変えてでも小さくするよう、東電から再検討の依頼を受けた」というのだ。
東電が、資金のかかる津波対策をしなくてすむよう、津波予測の数値を操作しようとしていたことが暴露されたことは、今後の訴訟の行方に計り知れない影響を与えるだろう。
結果的に東電はその後、この試算を採用せず、土木学会(実際には電力会社、JRなどの企業で構成された業界の親睦団体)に改めて津波試算を依頼することで時間稼ぎをしようとしていたことがすでに判明している。久保氏がなぜ、親会社でもある東電にとって不利になるような証言をしたのか。久保氏の心中を察する術は当ブログにはないが、東電設計で津波予測をまとめた技術者たちは、自分たちの試算に絶対の自信を持っていたはずだ。それにもかかわらず、親会社に自分たちの試算を否定されたことに対して、内心、忸怩たる思いを抱えていたとしても不思議ではない。また、自分たちは親会社に不利となるような試算であっても確実に報告したと証言することで、東電設計に「火の粉」が飛ばないようにしておきたいとの思いもあるかもしれない。
いずれにしても、この証言が出たことで訴訟は検察官役の指定弁護士側にとって有利な展開になったと思う。3月は公判は開かれず、次回、第5回公判は4月10日となる。
なお、科学ジャーナリスト添田孝史さんの傍聴記が発表された場合には、改めて掲載したい。